2017年3月10日金曜日

第19回学習会の報告

第19回学習会 報告

●テーマ:現代の治安維持法「共謀罪」=共謀罪法を成立させずに、国連組織犯罪条約は批准出来る=
●講師:海渡雄一弁護士
●日時:2017年3月7日(火)

 3月7日、国会会期中だった。メディアや国会で問題になっている森友学園問題は、日本会議の卑劣さと安倍内閣の隠ぺい体質、そして政府や政治家のおごりと金権体質を明らかにしていた。そういう政治状況の中で共謀罪の学習会は行われた。会場に椅子が足りなくなるほどの盛況さであった。皆さんの共謀罪についての関心の深さがよくわかる学習会になった。

 90枚ほど作成されたパワーポイントを見せながらの海渡弁護士の80分間にわたる説明に、参加者は理解を深めるとともに、危機感を更に募らせた。

 海渡さんのレジュメとパワーポイントに従って要約する。

 共謀罪の立法化はなぜ提案されたか?

  政府はテロ対策と説明しているが、理由そのものに大きな混乱がある。批准しなければならないと説明している国際組織犯罪防止条約は、そもそもテロ防止目的の条約ではない。これまでの日本の法律で対応できるので、広範な共謀罪を制定する必要は全然ない。政府の説明には重大な問題が隠されている。

「社会の安全のためには、いったん悪いことを考えた人を処罰する必要がある」?

 共謀の段階から人を処罰すると言うのは、「人は悪いことを思い立ち、他人と合意すれば、それは必ず実行するものとして処罰する必要がある。実際には実行されない犯罪だとしても社会の安全のためには、いったん悪いことを考えた人を処罰する必要がある」という恐ろしい人間観に立っている。

 共謀罪は、犯罪の未然予防のために徹底した管理社会を作り上げ、社会を敵と味方に分け、市民社会自体を終わりなき戦争状態に置くことになりかねない。国家が市民社会に介入する際の境界線を大きく引き下げるもので、盗聴捜査の大幅な拡大を招く危険性をはらんでいる。監視社会の中で、市民は萎縮し、自由に発言できなくなり、国家の内実を知ることができなくなる。沈黙を強いられる社会になってしまう。

政府の説明は恐ろしい内容を想定させる

 先日法務省が説明したことによると、例えば「座り込みをしよう」と話し合った市民団体は、それだけで組織的威力業務妨害を目的とする組織的犯罪集団とみなされる可能性がある。相談しただけで、申し合わせをしただけで犯罪になるという恐ろしい法案を政府は予定している。

変節し、理解できない政府の説明

 元々共謀罪の新設は、日本の法制度の基本原則からみて、不可能であると日本政府は考えていた。

 2006年には法務省は日本に使う必要性のない法律だと説明していた。国内法で立法事実もないのに急に提案に至った裏に、アメリカの圧力があると考えられる。今やテロ対策に必要であると意図的に説明を変えてきた。

密告が奨励される法律である

 組織的犯罪集団の活動として、実行するための組織であること、合意に基づく準備行為であることなどが内容に盛り込まれている。その中で、犯罪の実行着手前に、自首した時はその刑は減免されるという内容は、密告すれば減免されるという密告奨励になりかねない。悪用すれば、犯罪を持ちかけ、会話を録音し、相手の同意を得て警察に届けると、持ちかけたものは処罰されずに、同意したものだけが処罰されるということになりかねない。市民団体にスパイを送りこんで、犯罪を持ちかけ多くの関係者を罪に陥れることもあり得ないことではない。

===

 質問も共謀罪の時効の問題、二重起訴の問題、オリンピックとの関係、組織犯罪集団の指定、アメリカの市民運動との比較、最近の国会情勢についてと鋭い質問が相次いだ。それについても時間ぎりぎりまで丁寧な説明が続いた。

 戦前の治安維持法が左翼政治集団だけでなく、キリスト教団体、宗教団体、その中に創価学会も弾圧されていた歴史的事件を知り、さらに危機感を募らせた。「ものを考えて、口に出した。それを聞いてしまった。そして頷いた。その場に一緒にいた。」それだけで犯罪になる。言葉・コミュニケーションが犯罪になる社会が来てはならないと強く思った。

===

 膨大で歴史的な講演内容をまとめることはとても困難である。さらに詳しいことを知りたい人は「新共謀罪の恐怖」(平岡秀雄・海渡雄一共著 緑風出版)をお読みください。

 また、エドワード・スノーデンの実話を映画化した「スノーデン」(オリバー・ストーン監督)の紹介があった。この映画でアメリカ政府による世界の通信網に対する包括的な傍受の実態を暴露しているそうだ。

 特定秘密保護法、安全保障法制、盗聴を拡大し司法取引を導入する刑事訴訟法の改定など、日本のこの法制改定の動きは、アメリカ同様の強力な監視社会が目前に来ている危険性を強く感じた。と同時に、共謀罪が追加されると、何時でも戦争できるという社会が迫っていることを社会に知らせる早急で幅広い運動が必要だと強く感じた。
 
===

 なお、当日の動画はこちらから。(UPLAN三輪祐児様、humansystem様、撮影をいただきありがとうございました!)

20170307 UPLAN 海渡雄一「~すべての人に尊厳と人権を~現代の治安維持法「共謀罪」―共謀罪法案を成立させずに、国連組織犯罪条約は批准できる―」
https://www.youtube.com/watch?v=UI4k_TvHq9U

'17.03.07 「第19回学習会 『現代の治安維持法「共謀罪」 - 共謀罪法案を成立させずに、国連組織犯罪条約は批准できる -』」 at 連合会館 501会議室
http://twitcasting.tv/humansystem/movie/353426196