2018年12月16日日曜日

第29回学習会 オウム処刑と死刑制度を考える

第29回学習会 オウム処刑と死刑制度を考える



2018年7月6日、オウム真理教教祖・麻原彰晃(松元智津夫)と幹部6人に死刑が執行され、26日には、残る6人の刑も執行されました。「あれほどの事件を起こしたのだから、死刑は当たり前だ」という町の声も多く聞かれますが、本当にそれでいいのでしょうか。
 
 死刑執行を「平成」のうちに、と言うスケジュール優先の論理が先行し、十分に審議は尽くされたのか、後世に残すべき教訓は得られたのか、など、もっと裁判で明らかにしなければならないことがあったのではないでしょうか。

 国家が人を殺す「死刑」は、EUではその制度を残しているだけで、加盟が許可されない問題なのに、日本では8割の人々が死刑制度に賛成していると言われます。そして、そのことが、日本の人権問題に対して海外からの批判を浴びてもいます。
 
 今回は、オウム事件に関わり、オウム真理教の信者について深い洞察を基に著書や映像などを通して、世論に考える契機を与えてこられた森達也さんをお招きして、お話をお聞きし、この事件の問題点と死刑制度について、皆さんと一緒に考えたいと思います。ご参加をお待ちしています。

*チラシのダウンロードはこちらからどうぞ!
 
◆講師:森達也さん

[プロフィール]
1956年広島生まれ。テレビディレクターとして多数のテレビドキュメンタリー制作後、1998年オウム真理教の信者を主人公とした映画『A』を公開。続けて『A2』を公開し高い評価を受ける。2011年『A3』(上下巻)を出版し講談社ノンフィクション賞受賞するなど、映像・活字双方で活躍。『死刑』『ニュースの深き欲望』『虐殺のスイッチ』など著書多数。15年ぶりの映画『FAKE』が2016年に公開。

◆日時:2019年2月23日(土) 18:30~20:30 (受付は18:15~)

◆会場:連合会館 2F 204会議室(千代田区神田駿河台3-2-11)
https://rengokaikan.jp/access/

千代田線・新御茶ノ水駅 B3出口(徒歩0分)
丸ノ内線・淡路町駅 B3出口(B3出口まで徒歩5分)
都営新宿線・小川町駅 B3出口(B3出口まで徒歩3分)
JR中央線/総武線・御茶ノ水駅聖橋口(徒歩5分)

*会場は「平和フォーラム」で借りています。

◆参加費:500円

*申し込み不要ですので、当日は直接会場にお越しください。

◆主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

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2018年12月15日土曜日

12・15 私たちの声を国連へ ~国際基準から見た日本の人権状況~ 新倉修さん講演録より抜粋

「国際法から見た日本の刑法・人権状況」(講演録より抜粋)

新倉修(青山学院大学名誉教授/日本国際法律協会理事)

  安倍政権は、「国連勧告に従う義務はない」ということを閣議決定しました。これはとんでもないことです。今年は、世界人権宣言70周年にあたる年で、世界中で、70周年を記念する催しが行われています。お隣りの韓国では、文在寅大統領が70周年を祝うスピーチをしました。安倍首相はそれを拒んでいます。小学校の道徳の教科書には、世界人権宣言が谷川俊太郎さんの分かりやすい翻訳で紹介されているものがあります。しかし、文科省の検定に合格した8社の小学校の道徳の教科書の中で、世界人権宣言を取り上げているのは光村図書1社のみ。しかも、世界人権宣言を教えることが学習指導要領にないので、単元ではなく、コラムとして取り上げています。世界人権宣言はバイブルよりたくさんの言語に翻訳されているほど普遍的なものです。これを子どもたちに教えないのは、人権を求めて闘い、獲得してきた国際社会の潮流に反します。マグナカルタ(イングランド王国)、権利の章典(イングランド王国)、人および市民の権利宣言(フランス王国)、世界人権宣言、人権および基本的自由の保護に関する条約(ヨーロッパ人権条約)、ウィーン宣言、人権理事会の設置など国際社会の長年に渡る人権確立の取り組みを現在の日本政府は軽んじています。国連憲章の第9章第55条C項には、人種、性、言語または宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守することが定められてます。さらに、第56条には、すべての加盟国は、第55条に掲げる目的を達成するために、この機構と協力して、共同及び個別の行動をとることを誓約することとなっています。つまり、日本政府の「国連勧告に従う義務はない」という閣議決定は、国連憲章のこの条項に反するわけです。日本は国連設立時の原加盟国(51カ国)ではありません。日独伊を敵国とする敵国条項(第107条)もまだ改正されていません。日本は国際社会と歩調を合わせていくと約束したので国連加盟を認められたのに、今は金持ちになったんだから何をしてもいいというような態度をとっています。しかも、安全保障理事会の常任理事国になりたいと言っています。ウィーン駐在の元日本大使は国連越境組織犯罪条約の締約国会議に参加したとき、立法を早く通して条約を批准しないと日本は国際社会で非常に肩身の狭い思いをすると発言しました。日本は9つの国際人権条約履行確保委員会に7人の委員を派遣しています。人権機関への拠出金もトップクラスです。それにも関わらず、数々の人権勧告を履行せず言い訳ばかりしています。肩身の狭い思い……というのなら、まず、こうした状況を恥ずかしいと思って欲しいものです。
 
 2013年、国連拷問禁止委員会で、モーリシャスの委員が「日本は自白に頼りすぎではないか。これは『中世』の名残である」と言って、日本の刑事司法制度を批判したことがありました。これに対し、日本代表である外務省人権人道担当大使・上田秀明氏は「日本は『中世』ではない。我々は、この分野(人権問題)において最も進んだ国家である」と発言しました。これには、会場の一部から笑いが起きました。これに対し、上田氏がさらに、「なぜ笑うのか! シャラップ! シャラップ!」と、「シャラップ」を連呼しました。この状況が今の日本政府の人権感覚の欠如を象徴しています。2018年には13人の死刑執行が行われ、世界を驚愕させました。死刑のことを批判されると、世論が支持しているとか、日本の文化だと言い分けします。ところが、英国は死刑を支持する世論があっても、50年前に死刑を廃止しました。やろうという政治意思があればできます。日産のゴーン会長を東京拘置所に長期間勾留しているのもおかしい。カナダで、中国の国際通信機器大手、ファーウェイの副会長の孟晩舟氏が逮捕されましたが、すぐに保釈されました。あれが世界標準です。日本の刑事司法制度が中世のままだと批判されても当然なのです。
 
 2017年、国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタチ氏が、日本の共謀罪法案に対して、「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」と懸念を表明したことがありました。これについて菅官房長官は「個人として述べたもので、国連の勧告ではない」と述べました。さらに外務省は、G7で、安倍首相が国連のグテーレス事務総長と会談した際に、グテーレス事務総長が「特別報告者は国連とは別人格であり、その報告は必ずしも国連の総意を反映するものではない」と述べたと説明しました。これは明らかに外務省のミスリードです。国連の総意とは何でしょう。総意とは総会で決議したものを指します。特別報告者のジョセフ・ケナタチ氏は単なる個人ではなく、人権理事会の委嘱を受けて調査し、報告しているわけです。その報告は国連総会でも報告され、承認されます。承認されたことは国連の総意です。決して無視できるようなものではありません。マスコミが政府の見解を無批判に報道しているのも問題だと思います。 

 最後に、国連の「人権のために立ち上がろう!」というポスターをご覧ください。まさにこの通りだと思います。人権のために立ち上がりましょう!
 

2018年12月4日火曜日

12・15 私たちの声を国連へ ~国際基準から見た日本の人権状況~ 賛同者の一覧

賛同団体・個人 一覧

(アイウエオ順・2018年12月3日現在)

【 団体 】
ATTAC Japan(首都圏)/JFOR日本友和会(IFOR日本支部)/特定非営利活動法人アジア女性資料センター/アクティブ・ミュージアム女たちの戦争と平和資料館(wam)/アイヌ・ラマット実行委員会/アオサ・プロモーション/関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会/外国人学校・民族学校の制度的保障を実現する埼玉ネットワーク/精神障害者権利主張センター・絆/強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク/草の根工房/国際人権活動日本委員会/個人保護条例を活かす会神奈川/子どもと女性の人権を考える東京の会/国連に障がい児の権利を訴える会/「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会/「子どもの権利条約」を読む会/差別・排外主義に反対する連絡会/スペース21/全ての学校に高校授業料無償化を!練馬の会/戦時性暴力問題連絡協議会/全石油昭和シェル労働組合/朝鮮・韓国の女性と連帯する埼玉の会/朝鮮学校生徒を守るリボンの会/朝鮮学校に教育補償を!オッケトンムの会/「朝鮮学校のある風景」編集部/チマ・チョゴリ友の会/地球的課題の実験村・杉並/東京・教育の自由裁判をすすめる会/東京都公立学校教職員組合/東京都高等学校教職員組合/なくそう戸籍と婚外子差別・交流会/日朝国交正常化をすすめる神奈川県民の会/練馬人権センター/「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会/「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会/ビデオプレス/ピースボート/府中緊急派遣村/フォーラム平和・人権・環境/部落解放同盟東京都連合会/部落解放同盟練馬支部/ポラムの会/「良心・表現の自由を!」声を上げる市民の会 (以上 44団体)

【 個人 】
相田堯夫/青木茂雄/新井史子/池上明/池田幹子/市来とも子/石井紀子/石井恒司/石下直子/石川美紀子/伊藤文美/岩木俊一/上野香/植木純子/榎本みつ枝/太田哲二/大塚康高/大野和興/尾澤邦子/小幡詩子/笠優子/金森史明/神屋康冶/亀永能布子/賀谷恵美子/軽部哲雄/川崎壽江/川野孝章/川浪寿見子/菊池政義/金栄煕/金容星/木村結/木村葉子/京極紀子/栗山公博/黒田恵/小林信次/小山高澄/近藤徹/最首悟/坂本繁夫/佐藤周之/佐藤多香子/島田和彦/清水孝一/下山保/申嘉美/申静子/関口健太郎/高瀬道男/高木澄子/安田信子/田中宏/田中聡史/田中茂/徳永恭子/戸田光子/富沢由子/冨田杏二/外山喜久男/中島まり英/中島良和/中野宣子/永井よし子/長尾由美子/西村直子/丹羽雅代/濃沼誠/野副達司 /萩谷守彦/長谷川和男/花輪紅一郎/林昭男/林知子/林明雄/平野昌男/福島みどり/藤川博正/ほそのかよこ/堀純/本多都南夫/前田孝幸/松井英介/松井和子/松野哲二/宮村博/宮本成美/武者小路公秀/村田尚子/毛利勇二/森達也/森本孝子/八木真菜/八坂玄功/矢野恭子/矢野秀喜/山口義人/山城由紀江/山本あけみ/柚木康子/横間洋海/與芝豊/梁東準/渡辺吉男/渡辺厚子/渡辺保雄/和田周 (以上 108名)

2018年10月24日水曜日

12・15 私たちの声を国連へ ~国際基準から見た日本の人権状況~

12・15
私たちの声を国連へ
~国際基準から見た日本の人権状況~




 今年8月、国連の人種差別撤廃委員会の4年ぶりの日本審査が行われ、個人通報制度、国内人権機関、ヘイトスピーチ、アイヌの人々の権利、琉球・沖縄の基地問題、朝鮮学校差別、日本軍「慰安婦」問題、移住者、技能実習制度、難民についてなど、日本の人権状況が進展していないことを表す多岐にわたる問題への勧告が出されました。

 本年7月1日には、オウム真理教元代表を含む元幹部7人の死刑が執行されました。さらに、残る8人の確定囚も7月26日に死刑執行され、国連から死刑廃止の勧告が出ているにも関わらず、1カ月のあいだに2度、13人もの死刑執行が行われました。また、治安維持法下の予防拘禁を彷彿させるような不当な逮捕、拘束も行われています。

 基調講演に新倉修さん(青山学院大学名誉教授)を迎え、こうした日本の刑法・人権をめぐる状況を国際基準に照らしてお話していただきます。2020年にはオリンピックの開催が予定されています。それにともない、治安対策という名目の下、どのような事態が想定されるでしょうか。

 特別報告では、朝鮮学校差別、女性差別の問題、精神医療の強制入院に関しての個人通報について取り上げます。

 みなさま、ぜひご参集ください。

■ とき:  2018年12月15日(土)
                   13:00 開場
                   13:15 朝鮮学校生によるパフォーマンス
                   13:30 開会
15:00 閉会

*集会終了後、15:30より デモ(表参道付近)

■ 場所:  青山学院大学 17号館3階 311教室
https://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html#anchor_01

■ 基調講演: 新倉 修さん(青山学院大学名誉教授/日本国際法律協会理事)

国際法から見た日本の刑法・人権状況~2020年 東京オリンピックを間近に控えて~

(プロフィール)

弁護士・青山学院大学名誉教授。日弁連の死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部j副本部長、日本国際法律家協会理事、国際民主法律家協会(IADL)執行委員、アジア太平洋法律家協会(COLAP)執行委員など。著作に「外国軍事基地の国際法と人権」『法と政治の諸相』(2017)、「江藤价泰先生と法律家の国連連帯活動」『日本の司法ーー現在と未来』(日本評論社、2018)など多数。

■ 報告

1 人種差別撤廃委員会の勧告―朝鮮学校差別問題― 報告者 朴金優綺さん
2 メディアから見た女性差別 報告者 松元千枝さん
3 強制入院の国連への個人通報活動 報告者 藤田大智さん

■ 資料代: 500円




■主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会
    青山学院大学人権研究会

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2018年10月1日月曜日

第28回学習会の報告

第28回学習会報告

 2018年10月19日に連合会館で、「日本の難民問題・入管問題」というテーマで学習会を行った。講師は、SYI(収容者友人有志一同)の柏崎正憲さんと織田朝日さんのお二人。SYIは日本の排外的な入国管理政策、特に入管収容に反対する団体で、2009年から活動し、主に収容者との面会や、非正規滞在の外国人の支援、デモ、集会などの活動をしているということだった。大変深刻な人権問題であるためか、会場いっぱいの参加者で、準備した資料が不足するほどの盛況だった。

 まず、柏崎さんから入管施設で、退去命令が出された外国人が無期限に収容されている問題、人権侵害の温床であるという問題が話された。医療へのアクセスも保障されずに、病人が放置されたり、死亡に至ったりする外国人もいるなどの悲惨な例が話された。2007年以降入管施設で合計13人が死亡したそうだ。収容理由や経緯も基準が明確でなく、難民審査が終わっていなくても収容したり、空港で難民申請をしたのに即時に収容されたり、犯していない罪を認めろという国選弁護士の勧めに従ったら実刑がついてビザがなくなり収容された人もいる。無期限の収容に耐えかねて、多くの収容者が自費で出国を余儀なくされている。2016年で強制退去を命じられた7,014人のうち6,575人(93.7%)の人が自費送還されている。2016年ごろから仮放免者の再収容の増加、収容の長期化が進んでいるそうだが、それが「もうすぐオリンピックだから」という理由に、愕然とした(2016年4月7日法務省入国管理局長通知を参照)。

 他方で、日本の難民認定基準も大変厳格で、許可が取れずに結果的に「不法残留」の状態に追い込まれるそうだ。2017年の難民申請者が19,629人いたが、そのうち難民認定が20人、人道配慮による在留許可が45人だった。合計してもわずか全体の0.6%という少なさに、日本の人権尊重主義の欠如、狭量さや、排外性を感じた。技能実習生や留学生が、多額の借金をして日本に来て、労働条件の劣悪さ、賃金の低さの中で、搾取労働の温床になり、そのような劣悪な境遇から逃れようとする人が入管取締のターゲットになっているという状況も話された。

 織田さんからは、東京入管での収容者への面会の実情が話された。いつ収容所から出られるかわからない状況、食事がひどい、時には腐ったものも出されることもある劣悪な状況、持病の薬も日本製でないという理由で差し入れを禁止されるほどの管理体制の厳しさ、医療ネグレクトの実情、トイレしかない部屋で24時間のカメラ監視の下に置かれる「隔離」(事実上の懲罰)措置などの、非人間的な処遇が話された。職員のいじめや馬鹿にする態度、人としての尊重が全くない状態に、収容された人が屈辱を耐えている状態も報告された。仮放免申請を出しても許可が下りずに、何年も収容が続き失望感を持つそうだ。

 質問もたくさん出て、さらに内容が掘り下げられた。また会場からの意見で補充された面もたくさんあった。

 最後に柏崎さんが、日本の入管はなぜ、こんなにも排外的で非人間的なのかという点を補足された。戦前から、植民地の朝鮮から「内地」への渡航者を警察が厳しく取り締まり、戦後は日本にいた朝鮮人を排除するために渡航取り締まりを強化した。在日朝鮮人を全員強制送還すべきだという吉田茂のマッカサーへの具申などもあったが、朝鮮戦争の勃発を受け、米国に後押しされつつ、1950年に入国管理局(当初は入国管理庁)ができた。当初は、「取り締まり」対象は韓国人だったが、バブル景気を経験した1980年代なかば以降には、収容対象者の出身国も多様化していった。そういう歴史を考えると排外主義が幅を利かせている状況が理解でき、改めて人権の問題として社会的に訴えていく必要性を感じた。

2018年9月19日水曜日

第28回学習会 日本の難民問題と入管問題

第28回学習会 日本の難民問題と入管問題



 「難民申請者の99%以上を受け入れず「難民鎖国」と呼ばれる日本。
 帰国できない事情をもつ外国人を、無期限に収容し、精神的な拷問にかける日本の入国管理局。

 日頃、市民に「人権」を啓発する法務省のもとで生じている実態です。

 何が起きているのか。どうしてそうなるのか。
 入管収容者との面会や抗議活動の経験をもとに報告します。

【参考】日本の難民条約加入
 ベトナム戦争によるインドシナ難民大量流出 を契機に1981年に「難民条約」1982年に「難民議定書」に加入。同年1月1日から同条約・議定書ともに発効。導入から2017年までの難民申請数は60674件、うち、難民と認定されたものは708件、難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものは2588件となっている。(外務省HPより)
8月30日の人種差別撤廃委員会による勧告をはじめ、国連の各委員会から懸念と改善が求められている。

*チラシのダウンロードはこちらから!

◆講師:SYI(収容者友人有志一同) 織田朝日さん/柏崎正憲さん

◆日時:2018年10月19日(金) 18:30~20:30

◆会場:連合会館 5F 501会議室(千代田区神田駿河台3-2-11)
https://rengokaikan.jp/access/

千代田線・新御茶ノ水駅 B3出口(徒歩0分)
丸ノ内線・淡路町駅 B3出口(B3出口まで徒歩5分)
都営新宿線・小川町駅 B3出口(B3出口まで徒歩3分)
JR中央線/総武線・御茶ノ水駅聖橋口(徒歩5分)

◆参加費:500円

◆主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

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2018年9月1日土曜日

第27回学習会の報告

第27回学習会の報告

第27回学習会 「国内人権機関・個人通報制度」は、日本でなぜできないのか?
講師 寺中誠さん(東京経済大学現代法学部教員)

 参加者は32名でしたが、熱のこもったお話びっしりの中身で2時間じっくりお話くださいました。人権条約体からの勧告および普遍的定期的審査において繰り返し日本に求められている国内人権機関および個人通報制度を中心にした選択議定書批准であるが、未だ日本はこれに対応していない。国際的人権基準を国内で実施するためには国内人権機関と個人通報制度がいかに重要であるのか、そこにお話の中心がありました。

 人権について国際法と国内法は2つの体制、並列しているものであり、個々人の人権保障の義務を負うのは各国政府であり、国際法は個々人の人権保障に直接関与しない。国連人権条約は自動執行性がないので直接国内の人権課題解決に適用されるわけではない。国際法と国内法を接続していくには何が必要か。

 ここに国内人権機関の必要性がある。憲法により条約を誠実に遵守することが義務付けられてはいるが、行政は国内法なしに、国際法の人権水準をそのまま適用して主体的に実施することはできない。

 パリ原則に基づく国内人権機関の任務は、政策提言(監視)機能、国際協力機能、調査・研究・広報機能、そして補完的に個別救済機能がある。国際人権水準をものさしに国内人権水準をチェックし、国連からの勧告等を実施するため、政策提言や政策の監視をしていくことが最も重要となる。そのための調査・研究・広報であり国際協力である。個別救済機能も上記の政策提言や監視の一つの材料としてもまた生かしていくためのものと言っていいだろう。個別救済機能のない国内人権機関もまた存在する。

 人権擁護法案は法務省であれ内閣府であれ、その外局であれ、独立性がなく国内人権機関の制定法案とは言えないことは明らか。

 個人通報制度は国際法と国内法の二元論の例外として、直接個別の人権問題を国連人権条約体が取り扱うものであるが、最高裁まで争って国内手続きを尽くしていることとその人権条約の違反が明白である場合に制限されている。確定判決を覆す効力はなく、あくまで「勧告」にとどまる。しかし個人の救済に直接つながらなくとも、国内の制度改革に繋がり国際的にも大きな影響を与える場合もある。

 そもそも日本政府が国内人権機関および個人通報制度を拒否し続ける理由はなにか。国際法と国内法の二元主義を否定しひたすら国内法一元主義に執着し続けるのはなぜか。ここが当日のお話のハイライトだった。

 日本は、英米法や国際的な基準である「法の支配」をではなく「法治国家」に執着し、法は国家が制定するものであり、それを超える価値に強く反発し、法を論じる際に、「価値」や「目的」を論じず、手続きに拘泥し価値に基づく批判は法に反するものとして却下しようとする。

 これは、山城博治さんの逮捕拘禁や、精神病院への拘禁に関しての国連からの批判に対し、常に日本政府が法律の手続きによっていて正当と反論することを思い出させる。実体を問わない反論しか政府はしない。もちろん死刑執行についても同様であり、政府は死刑制度そのものへの批判には一切答えようとはしない。

 国際法との接続は「法の支配」を復活させるものであり、価値の議論を法のレベルでしっかり行うことである。「法治国家」への執着は、ナショナリズムそのものであり、「国際法」概念はこのナショナルな価値を超えるところに価値を見出しそれが現在の世界を形成している。寺中さんのこの指摘こそ今私たちが根源的に日本の法体制のあり方を問う視点であり国連人権勧告実現への最大の障害克服の道であろう。

 寺中さんの最後の指摘、多くの法専門家が、ナショナルかつ男性中心的な価値を基本としてこれまでの社会の仕組みを築いてきたことと無縁ではないという点は重要。

 21世紀最初の人権条約である障害者権利条約は障害者も人間であり、他のものと平等な人権保障をという意味で人間の概念を拡大し、分離隔離された別立ての処遇から、他のものと平等なインクルーシブな法体系、社会を求めていると言える。しかしながら精神障害者の人権保障を求める法律家、精神保健専門職、精神障害者運動も含む市民運動の中には未だ精神障害者を分離隔離した人権保障を求め、精神保健福祉法改正ないし、精神障害者への特別の法体制を求める流れもある。こうした、精神病院への拘禁について法手続きの厳密化を求め実体を問わない主張は、この政府の「法治国家」への執着の忠実な追随とも言えよう。

 安倍内閣の国連人権勧告に従う義務なしという閣議決定に対して、私たちは国連人権勧告実現実行委員会を結成して取り組んできたが、人権勧告実現を阻むものは一人安倍内閣の姿勢のみならず、より構造的な日本政府のあり方、および日本の市民運動、法専門家の取り組みの問題点にあるといえるのではなかろうか。

 おりしも42年間にわたる中央官庁の障害者雇用枠の水増し問題が暴露され、それは行政のみならず、司法、立法に及んでいることが明らかにされた。あまりに強固な障害者排除の姿勢であり、長年の骨絡みの体質である。この三権のあり方を見ただけでも、独立した国内人権機関と個人通報制度の必要性は明らかとなったと言えよう。

2018年8月24日金曜日

第27回学習会 「国内人権機関・個人通報制度」は、日本でなぜできないのか?


第27回学習会 
「国内人権機関・個人通報制度」は、日本でなぜできないのか?



 国連の様々な人権機関から日本政府に対し、設置と導入を強く求められているものが2つあります。それは「国内人権機関」と「個人通報制度」です。

 この2つは、人権に関する世界基準として、各国の人権を保障するために欠かすことのできないものです。「国内人権機関」は、人権侵害の救済と人権保障を推進する、政府から独立した機関です。「個人通報制度」は、個人が裁判などでも人権侵害の救済がされない場合に、各条約の人権機関へ通報して勧告が出される制度です。

 日本政府は、これまで何度も勧告で指摘されているにも関わらず、長年「検討中」と繰り返すのみです。2013年に安倍政権は「国連の人権勧告に従う義務なし」と閣議決定し、強い抗議の声が上がりました。2020年の東京オリンピックを前に小池都知事は、「いかなる種類の差別も禁止」したオリンピック憲章に基づく条例を検討中ですが、現状は形だけで中身の伴わない条例案に留まっています。

 私たち「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会は、これまで多くの人権団体と協力し、多方面に渡る学習会を開催してきました。どの学習会でも、いまの日本の人権状況を改善するためには、「国内人権機関」の設置と「個人通報制度」を導入する必要性が確認されています。

 今回の学習会では、国際人権法の専門家であり本テーマを長年にわたり研究してこられた寺中誠さんに、詳しくお話を伺います。みなさま、ぜひ奮ってご参加ください。

*チラシのダウンロードはこちらから

◆講師:寺中誠さん(東京経済大学現代法学部教員)

◆日時:2018年9月7日(金) 19:00~21:00

◆会場:阿佐谷地域区民センター 2F 第6集会室

阿佐ヶ谷駅南口より徒歩2分(杉並区阿佐谷南1-47-17)
http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/katsudo/center/1006943.html

◆資料代:500円

◆主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

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2018年6月7日木曜日

第26回学習会の報告


「国連・人権勧告の実現を!」第26回学習会

2018年5月31日


 「婚外子差別を国連に訴えて」というテーマで、「なくそう戸籍と婚外子差別・交流会」の田中須美子さんに講演をしていただいた。以前から、男尊女卑、家制度に疑問を持っていた田中さんは、1973年にパートナーと非婚で共同生活を始めた。生まれた子どもが、「摘出でない子」として住民票や戸籍の続柄で差別記載されたため、1988年に住民票続柄裁判をはじめに、1999年には戸籍続柄裁判も起した。地道に根気よく、裁判闘争をしながら国連に訴えるという国際的な運動としてこの運動を続けられた。30年に及ぶ運動を1時間半でお話しいただいた。内容が豊富で広範囲で時間が足りなかったと思う。
以下講演内容を簡単にまとめる。

 まず住民票続柄差別記載の撤廃を求めて裁判を起こした。一方の姓の放棄、嫁扱い、性別役割の強制などに疑問を持ち、婚姻届を出さなかった。子どもが生まれると「子どもが可哀そう」という周囲の非難と共に、出生届、住民票の続柄差別記載、戸籍の続柄差別記載で子どもが法律で差別された。「嫡出子」「嫡出でない子」と分けて、婚外子を法律で差別していることは、憲法第14条の法の下の平等違反であり、憲法13条24項の個人の尊重・個人の尊厳保障への違反である。これは人権侵害だ。そういう主張から裁判を起こした。

 1995年に住民票続柄差別の撤廃。1998年には父認知による児童扶養手当打ち切り撤廃。2009年に国籍上の差別撤廃。2013年に民法相続差別規定の撤廃と改善が行われてきた。
しかし、今なお、出生届で「嫡出子」かどうかチェックされ、戸籍の続柄で婚外子と一目でわかる差別記載がされたままなど戸籍法、民法上、所得税法などで11項目にわたる差別は残っている。

 国内で裁判を行うと同時に、国連への働きかけも行った。1989年に国連自由権規約委員会から「婚内子・婚外子の差別」の問題でゼネラルコメントが出た。1990年には、子どもの権利条約作成の中心人物であるアダム・ロパトカさんから「婚外子差別」問題でメッセージが出された。1991年の裁判判決で「婚外子記載には合理性がある。国連人権規約に反しない」との総括所見が出された。

 そこで1992年から国連自由権規約に訴える行動を起こした。1993年に、国連人権規約委員会は、「婚外子に対する日本の法律を改正し、差別的条項を削除するよう勧告する」と出した。この結果、1994年に住民票の続柄差別記載が撤廃され、世帯主との続柄はすべて「子」と統一された。1995年に高裁で婚外子問題について「プライバシー侵害」「法の下での平等違反」という判決が出た。

 1998年5月には、子ども権利委員会日本審査で委員全員が婚外子差別問題と条約の整合性なしと指摘し、日本に改善を求めた。1998年10月には、自由権規約委員会からも婚外子差別で「社会的偏見」を生むなどの指摘があった。

 2003年には女性差別撤廃委員会に「婚外子差別は同時に非婚で子どもを産む女性への差別である」と訴えると、過半数以上の委員が「母子双方への差別である」と日本に撤廃を求めた。2013年に最高裁法廷で民法相続差別規定は憲法違反であると裁判官11人全員一致で決定した。これは10回にも及ぶ勧告の効果でもある。婚外子差別法制度の最大の根拠だった相続差別規定はなくなったが、その他の法的差別は残っていることから、2014年に自由権規約委員会、2016年に女性差別撤廃委員会へ改めて訴えた。 
 
 国連勧告の効果としては、裁判で勧告を活用し判決に反映してきたこと、地方議会に対し婚外子差別に関する陳情に効果があったことである。すでに10の地方議会で意見書や要望者などが国に出されている。これまで国連からの勧告は11度にわたっている。今後も差別撤廃の訴えを続けるつもりである。差別をなくすために家族登録簿である戸籍制度を廃止し、個人登録制度に変えていった方がよい。

 以上質問に答える形でお話になった分も一緒にまとめたが、30年にわたる持続力と信念の確固さに敬服した学習会だった。

2018年3月25日日曜日

第26回学習会 婚外子差別を国連に訴えて

第26回学習会 婚外子差別を国連に訴えて


 2013年9月4日最高裁大法廷は、「婚外子の相続分は婚内子の2分の1」とした民法の規定を憲法違反と決定しました。1993年以来、国連の人権条約の各委員会から計10回にもわたって条約違反の指摘と法改正の勧告がなされ、婚外子の相続差別を残す国は、インド・フィリピンなどごくわずかという有様でした。

 勧告されたのは、相続の問題だけではありません。出生届の差別記載(嫡出子か否か)や「嫡出でない子」という差別的用語と概念の廃止、婚外子とその母を社会的差別から保護することなども求められていますが、無視されたままです。相続差別規定の廃止は、婚外子差別撤廃の入口であって出口ではないのです。

 田中須美子さんは、住民票や戸籍の続柄差別裁判を闘うなど、婚外子差別撤廃の活動を中心的に担い自由権規約委員会や女性差別撤廃委員会へのロビー活動なども行ってきました。婚外子差別の国際的現状、国内におけるこの間の成果と残された課題について伺います。ご参加お待ちしています。

*チラシのダウンロードはこちらから!

◆講師:田中須美子さん(なくそう戸籍と婚外子差別・交流会)

◆日時:2018年5月31日(木) 18:30~20:30

◆会場:スマイルなかの 4階 多目的室
中野駅北口より徒歩7分(中野区中野5-68-7)

◆資料代:500円

◆主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

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2018年3月24日土曜日

第25回学習会の報告

「戦後日本で暮らした宋神道(ソン・シンド)さんの人生と「日韓合意」」
講師  梁澄子さん

 2つの大きなテーマを90分で語っていただくのはかなりの無理な要求だが、梁さんは早口ながら、説得力ある語り口でこなしてくれた。全体を大きな8項目で整理したので、その項目に従って、概略を報告する。

1.宋神道さんとの出会い

 韓国では1988年にキーセン観光に反対するセミナーで尹貞玉さんが初めて「慰安婦」について講演。1990年に挺対協が発足。1991年に金学順(キム・ハクスン)さんが慰安婦であったことを名乗り、同年金さん含めた訴訟が開始。92年に4団体で「慰安婦110番」が設立され、宋さんの情報が届けられた。すぐに川田文子さんが宋さんを訪問。少し遅れて梁さんも面会。

 そのときの強烈な印象が忘れられない。「お前は朝鮮人か。俺は朝鮮人は嫌いだ。~~」の毒舌の中に自分を試していた宋さんの本心が見え、この人は人の本質を見抜く力を持った人だと思い、のちに95歳の生涯を看取るまでの付き合いが始まった。

 やがて、東京で宋さんを囲む会が持たれ、「在日の慰安婦裁判を支える会」が結成される。残念ながら裁判には負けてしまったが、宋さんは裁判を通して信じられる支援者と出会い、幸せだと語る。「裁判には負けたが俺の心は負けてない。」は有名な言葉で映画のタイトルにもなった。そして宋さんはいつも「戦争は絶対にやっちゃいけない。」と言っていた。

 支援者たちとの交流が進むも、2011年の東北大震災の時に女川にいた宋さんは行方不明になってしまい、支援者たちは必至で探し、避難している宋さんと再会できた。その後、東京に転居し、見守られながら最後は施設で95歳の生涯を閉じた。

 2、活動を通して被害回復をした日本軍「慰安婦」サバイバーたち

 今、話題になっている「少女像」は「平和の碑」として2011年に水曜デモ1000回記念として建立。少女像・おばあさんの影・椅子・碑文の4点合わせて「平和の碑」と言う。

 碑文には「~その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する。」とある。

 また、2012年に設立された「ナビ基金」は日本政府から賠償金が出たら、今も戦時下で被害にあっている女性たちに全部あげたい。」という金福童(キン・ボクトン)さんと吉元玉(キル・ウォノク)さんの思いが作らせたもので、コンゴの性暴力被害者やベトなム戦争時に韓国兵によって性暴力を受けた女性と子どもたちへの支援などに生かされている。そして、「米軍慰安婦」との交流や訴訟支援も開始された。

3、「日韓合意」直後の韓国の被害者と市民の反応

 2015年12月28日突然行われた日韓合意に対して、被害者たちは、「ハルモニたちのためにと言う考えがないようだ。日本は真に罪を認定し、法的な賠償と公式な謝罪をすべきだ。私たちの名誉と人権を誰が踏みにじったのか。ハルモノたちに一言の相談もせずに妥結など納得いかない。」と厳しい発言が続いた。

 合意発表直後、挺対協は失望感で放心状態だったが、発表直後の水曜デモでは市民の怒りが爆発し、「少女像を守る大学生行動」が提起され今も日本大使館の前で座り込みが続いている。そして各大学からの抗議声明も続き、32自治体の首長たちが「平和の碑」建立を支持する全国連帯結成、日韓日本軍「慰安婦」合意無効と正義の解決のための全国行動(全国行動団体500参加)ハルモニたちの国連各人権委員会への合意の問題点を知らせる嘆願書提出、全国行動主催の2000人集会など、市民たちは怒りの行動を続けた。

 そして、2016年、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶財団」が発足し、翌2017年に「希望のたね基金」が日本で設立された。この希望のたねツァーでは若者の参加を支援、参加者は本当のことを知らなかった、と感想を述べ、5月に報告会を開催予定。

4、日韓合意の何が問題なのか

○合意の内容

 ①日本政府は「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」「責任を痛感」し、安倍首相は内閣総理大臣として「心からお詫びと反省の気持ち」表明。

 ②韓国政府設立財団に日本政府予算で10億円支出し、元「慰安婦」すべての「名誉と尊厳の回復、心の癒しのための事業」を行う。

 ③両政府は②の措置が着実に実施されることを前提に「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」し、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに批判することを控える。

 ④韓国政府は、在韓日本大使館前の「平和の碑」に関して、「適切に解決されるよう努力する。」

○合意の問題点

 ①被害者不在の合意。

 ②8か国の被害者・支援者の総意で作成提出した「日本政府への提言」(2014年)は全く反映されず。

 ③金福童さん「日韓合意が一番悪いのは、歴史を売ったこと。」

 ④代読謝罪であり、賠償ではない。

 ⑤真相究明、再発防止措置に触れず。

 ⑥重大人権侵害問題に「最終的・不可逆的解決」はありえない。

 ⑦韓国以外の被害者に考慮なし。

5、日韓合意後の日本政府の言動

 2016年1月の国会答弁から2017年の2月外務省統一見解まで、日本政府は次のような見解を述べている。

 ・請求権は1965年に解決済み。

 ・強制連行を示す記述は見当たらないという立場は不変。

 ・慰安婦強制連行の見方は、吉田清治氏の虚偽発表を朝日新聞が大きく報道。

 ・10億円は賠償と受け取られないよう、医療・介護・葬儀関係費・親族の奨学金などを想定して現金支給。これで、日本側の責務は完了。

・「慰安婦」被害者への総理のお詫びは毛頭考えていない。

・安倍総理が「日本は義務を実施、10億円拠出しているのだから、次は韓国が誠意を示すべき。(平和の碑関連)

・「平和の碑」は外務省が「慰安婦像」で統一する方針。

・安倍総理の「まるで振り込め詐欺」発言で韓国側猛反発。10億返そう。

6、韓国政府による合意検証と新方針

 2017年文政権発足。外相直属の「韓・日 日本軍慰安婦被害者問題合意検討タスクフォース(TF)発足。

  TFは検討の結果、非公開部分で日本政府が挺対協の説得や海外に慰霊碑等の建立不支持、性奴隷と言うことを使わない、日本側が「最終的」の他に「不可逆的」を要求。「被害者中心アプローチ」を重視、被害者の受け入れがない限り、問題は再燃する、などを発表した。韓国の運動体はすでに支援金を受け取った人も等しく被害者として、これまで同様の支援を続けている。

 国連人権専門家たちの認識として、CEDAWが「日韓合意は被害者中心のアプローチを採用していない。サバイバーの見解を考慮し、彼女たちの真実・正義・被害回復に対する権利を保障すべきと勧告。ほかに、ザイド・フセイン国連人権高等弁務官や国連人権専門家共同声明でも同様の見解が出されている。

2018年康京和外相が韓国政府の新方針を発表。 

  ・日本政府が拠出した10億円は韓国政府の予算で充当。

  ・再交渉は求めない。

  ・日本が自発的に、国際的な普遍基準に則って、真実を認め被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒しに向けた努力を続けることを期待。

 ○金福童さん「日韓合意が解体と理解。韓国が返すお金を受け取れないならきちんと謝罪して、そのお金を賠償金だと言えばいい。」

7、韓国政府の新方針に対する日本の反応

 ○日本政府

 ・1ミリたりとも合意を動かす考えはない。(菅官房長官)

 ・意味がわからない。韓国大使館の公使を呼び厳重抗議(外務省)

 ・国と国との約束を守ることは国際的かつ普遍的な原則。韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることはできない。(安倍総理)

○ メディア

 ・理解に苦しむ。納得しがたい。合意の根本を傷つけた。外交常識に外れ、非礼。
 わかりにくい対応。 
  など、沖縄タイムズ・毎日・朝日・読売・産経などほとんど


8、最近の韓国政府の見解

 2018年2月国連人権理事会の定例記号での康外相の発言
 被害者中心のアプローチが欠如していた。被害者たちの傷を癒し、尊厳と名誉を回復するために、被害者や家族市民団体と協力して、過去の過ちが繰り返されないよう、現在と未来の世代が歴史の教訓を学ぶことが重要。

 2018年3月1日の文大統領演説
 加害者である日本政府が「終わった」と言うべきではない。不幸な歴史ほど、その歴史を記憶し、その歴史から学ぶことが真の解決。日本は人類普遍の良心を持って、歴史の真実と正義に向き合わなければならない。日本が苦痛を与えた隣国と真に和解し、平和共存と繁栄の道を共に歩むことを望む。

 日本政府はこうした韓国側に対して、日韓合意は国と国との約束。責任を持って実施すべき。性奴隷と言う言葉は事実に反するので使うべきではないと確認。慰安婦の強制連行と言う見方は虚偽の事実捏造を大手新聞社が事実のように報道したことから始まった、などの見解を出している。


最後に

 日韓合意のことは宋さんに伝えることができなかった。すでに高齢で認知症の症状が出ている宋さんを安らかに見送りたいと思った。2017年12月16日に95歳の生涯を閉じた宋さんを韓国の若者が空港で待っていてくれた。そして天安(チョナン)にある望郷の丘に埋葬し、宋さんはやっと故郷に帰れた。2018年の2月に行ったお別れの会には200人もの人が参列した。宋さんが亡くなって以来、「ごめんね。と言う言葉しかかけられないでいたが、お別れ会の最後に遺影に向かって出た言葉は「宋さん、良かったね。」だった。
  
  出会いから最後まで、深い付き合いのあった宋さんと支援者の皆さんの人間的な交流の重みと温かさを伝えていただく学習会だった。
 
 
 

2018年3月8日木曜日

第25回学習会 戦後日本で暮らした宋神道(ソン・シンド)さんの人生と『日韓合意』

第25回学習会 戦後日本で暮らした宋神道(ソン・シンド)さんの人生と『日韓合意』




 2017年12月19日、宋神道さんが95歳で逝去されました。宋神道さんは日本軍「慰安婦」にされた朝鮮人女性で、16歳から7年間、中国の慰安所で苦しくつらい日々を過ごし、戦後日本に来られました。

 1993年、日本政府に謝罪と損害賠償を求め提訴しましたが、2003年に最高裁で敗訴が確定し、やりきれない思いを抱えて宮城で生活されていました。2011年3月の東日本大震災ですべてを奪われ、東京へと移住します。

 宋さんと暖かい交流を続けてきた梁澄子(ヤン・チンジャ)さんが中心となり作られた映画『オレの心は負けてない』での宋さんの姿は、ユーモアと皮肉、深い思いに溢れ、多くの人々の気持ちを強く揺さぶりました。

 さて、2015年12月末、「慰安婦」問題をめぐる「日韓合意」が突如締結されましたが、それは被害者抜きの「解決」でした。日本政府が拠出した10億円も、賠償や謝罪としてのものではありません。国連の拷問委員会でも、韓国政府に合意の見直しが勧告されています。
 
 韓国では人々の力で朴政権が倒れ、「日韓合意」の検証を経て、文大統領は「(被害者の)意志に反する合意だった」と謝罪しています。韓国政府は、国際基準に則り真実を認め、名誉と尊厳の回復、傷心を癒やす努力、自発的な謝罪などを促す新方針を発表しましたが、日本政府は「全く受け入れられない」と開き直り、メディアの多くも追随しています。
 
 戦時性暴力の被害当事者不在の「合意」は、「合意」でも「解決」でもありません。
 
 いま改めて、宋神道さんの人生と「日韓合意」について、梁澄子さんにお話を伺いたいと思います。多くの方のご参加をお待ちしています。
 
*チラシのダウンロードはこちらからどうぞ!

◆講師:梁澄子(ヤン・チンジャ)さん
(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表/希望のたね基金代表理事)

◆日時:2018年3月23日(金) 18:30~20:30

◆会場:連合会館 5F 501会議室(千代田区神田駿河台3-2-11)
http://rengokaikan.jp/access/

千代田線・新御茶ノ水駅 B3出口(徒歩0分)
丸ノ内線・淡路町駅 B3出口(B3出口まで徒歩5分)
都営新宿線・小川町駅 B3出口(B3出口まで徒歩3分)
JR中央線/総武線・御茶ノ水駅聖橋口(徒歩5分)

◆参加費:500円

◆主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

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2018年3月4日日曜日

第24回学習会の報告

第24回学習会の報告

UPRの対日審査って何? 各国から日本への人権勧告
~国連人権理事会の普遍的・定期的審査~

日時 2018年1月29日(月)18:30~21:30
会場 スマイルなかの 4階 多目的室
講師 北村聡子 弁護士(日本弁護士連合会・国際人権問題委員会 副会長)

1、UPRとその意義

 国連のUPR(Universal Periodical Review=普遍的・定期的審査)は、国連の人権機構改革の一環として2008年からスタートした、国連の人権制度の中では比較的新しい制度である。

 その最大の特徴は、193の国連加盟国がお互いに被審査国・審査国になり相互審査を行うという点にある。人権条約機関による条約審査の場合、その分野の専門家による「絶対評価」である。一方UPRは相互審査のため、自国でやっていないことは、他国にも言えないという意味で、「相対評価」の部分がある。その結果UPRの勧告を見れば、被審査国が他国に比べて劣っている分野があぶり出されることになり、それがUPRの特徴と意義である。

 審査の過程は、①被審査国とNGOがOHCHR(人権高等弁務官事務所)に報告書を提出。②国連理事会のUPR作業部会での審査と結果文書採択。審査時間は1か国3時間30分で、被審査国と国連加盟国の対話で行われる。この審査ではNGOは発言出来ない。③最終的に次回の国連理事会で、被審査国は、勧告に対する態度表明を行う。4年半ですべての国が審査される。

 審査のための基礎資料は、①被審査国の政府報告書、②OHCHR作成の条約機関・特別手続等の国連文書要約、③OHCHR作成の国連のNGO等から提出された情報の要約である。

 審査基準は、国連憲章、世界人権宣言、人権条約、国際人道法などである。

2、これまでのUPR日本審査と政府回答

 第1回が2008年に行われ、26件の勧告が出た。

 第2回は、2012年に行われ174件の勧告が出た。第2回の日本への勧告は、その数の多い順から「未批准条約・議定書の批准」「死刑」「女性差別」「DV、人身取引」「差別」「刑事拘禁」などであった。

 それに対する政府の回答は、「フォローアップすることに同意する」118件(68%)。「部分的にフォローアップすることに同意する」7件(4%)。フォローアップすることに同意するという回答は、単にフォローアップするというだけで、勧告を実現するという意見表明ではなく、「留意する」に近い。他国でこのような回答をする国は、調べた限りなく、日本政府独特の回答である。さらに「受け入れない」26件(15%)。「その他」23件(13%)で、その他は事実上受け入れないことである。こうしてみると、日本政府の態度は、ほとんどの勧告に対して実現しようとする姿勢が見られない。

 他の国と比較してみる、例えば韓国は、70件の勧告に対して「完全に受け入れる」が42件(60%)である。フィンランドは77%、インドは49%、イギリス69%、南アフリカは90%が、勧告を「受け入れる」と政府が回答している。

3、第3回UPR日本審査勧告の特徴

 第3回は、2017年3月にNGOが報告書を提出。審査を前にした10月、日本から多くのNGOがジュネーブに行き、プレセッションや各国のジュネーブ代表部へのロビーイングを行った。日弁連、グリーンピースジャパン、IMDAR(反差別国際運動)、沖縄国際人権法研究会、全国精神病者集団の5つのNGO は、UPR主宰のプレセッションでステートメントを読むことが許された。ロビーイングのポイントは、具体的な勧告案を示すこと、根拠となる正確で具体的な情報を提供することである。

 11月、人権委員会のUPR作業部会で審査が行われ、結果文書が採択され、246件(一つの勧告に複数国がかかっている場合それぞれカウント)の勧告が出た。前回に比べ数が増え、しかも具体的な内容の勧告が増えたのが特徴である。NGOの積極的な働きかけの結果と思われる。

 勧告の内容は(人によって分類方法に違いがあるため数は絶対ではないが)、差別関係66件、条約・選択議定書の批准31件、国内人権機関31件、死刑29件と続く。差別の内容は、女性、人種、LGBT等に関するものである。人種差別に関する勧告には、差別禁止法の制定を求める勧告が増え、ヘイトスピーチに言及した勧告、朝鮮学校高校無償化に関する勧告が新たに加わった。また福島、障がい者に関する勧告も増えた。さらに新たなものとして、ビジネスと人権、メディアの独立性、核兵器・被爆者に関する勧告がある。
UPRの相互審査であぶりだされた、日本が国際水準に比べ遅れている分野は、国内人権機関(120ケ国以上に存在)、個人通報制度(自由権規約について116ケ国が批准)、死刑制度(多くの国が廃止もしくは執行停止)、女性差別(ジェンダーギャップ指数は144ケ国中114位)、人種差別(38ケ国中37位、2015年Migration Integration Policy )である。また日本独自の問題が生じている分野として、メディアの独立、原発、被爆者等についての勧告も出た。

 これらの勧告に対し、今年3月に日本政府は態度表明をしなければならない。

4、UPRの課題と、私たちがしすべきこと

 UPRの勧告を日本国内で実現させていくことは、大きな課題である。政府はUPRにあまり重きを置いていないように思える。UPRの勧告は、出ただけで満足してはならず、政府・立法府へ働きかけの「きっかけ」として活用しなければならない。またメディアに働きかけ、まだマイナーなUPRを知ってもらい、世論を動かし、政府の意識改革を迫っていく必要がある。

 UPRの勧告は立法府に向けられているものも多く、行政府だけではなく、個々の国会議員へ丁寧な説明を行い、立法府に働きかけていく必要もある。実際、UPR審査に国会議員を連れていく国も増えている。国会も野党だけではダメで与党への働きかけも必要であり、日弁連ではいま、与党にも働きかけている。

 日本は国連から言われることにすごく反発する。以前は、国際連合を脱退して第2次世界大戦に突入した。安倍政権下、政府主導で進むいまの政治は、そこに戻っていくようで恐ろしい。ナチス政権の時、他の国は何も言えなかった。それに対し他の国も言えるようにというのが、UPRの制度でもある。

 北村弁護士の講演を聞いて、参加者は改めてこの会そのものが、「国連の勧告は実施する必要がない」という安倍政権の閣議決定に怒って発足した原点を確認。UPR勧告の実現にむけて、今後いっそう、国会・国会議員や、内閣府、外務省など各行政省庁に積極的に働きかけて行かなければとの思いを強くした。
 

2018年1月29日月曜日

第24回学習会 UPRの対日審査ってなに?各国から日本への人権勧告  ~国連人権理事会の普遍的・定期的審査~

UPRの対日審査ってなに?各国から日本への人権勧告
~国連人権理事会の普遍的・定期的審査~



 2017年11月、国連人権理事会で日本に対する第3回目の普遍的・定期的審査(UPR)が行われました。前回(2012年)の審査では、世界79の国・地域から日本に対し174の人権勧告がありました。第3回目となる今回は、前回を上回る106の国や地域から218にのぼる勧告が出され、その後の作業部会で報告書案として採択されています。

 主な勧告だけでも、日本軍「慰安婦」への謝罪と補償、朝鮮学校の「高校無償化」、障害者権利条約の履行、包括的な差別禁止法や国内人権機関の設立、アイヌ民族及び琉球・沖縄の人々の社会・経済・文化権等の権利の保障、移住労働者権利条約の批准、外国人技能実習制度の改善、特定秘密保護法や報道の自由への懸念、死刑制度廃止、原発事故避難者への支援継続、個人通報制度の批准、刑事手続きや被拘禁者の処遇改善など、とても多岐にわたります。そして日本は、前回・前々回の勧告をほとんど実施していないという指摘もされています

 日本政府は、2018年3月に開かれる人権理事会までに、各国から出された勧告を受け入れるかどうか、その可否を表明する予定です。私たちは日本政府に対し、これらの人権勧告を受け入れ、この日本における人権侵害状況を速やかに改善するように強く求めます。
 
 今回の学習会では、この国連人権委員会の普遍的・定期的審査(UPR)について、日本弁護士連合会の国際人権問題委員会副委員長として尽力されている、北村聡子弁護士を講師に迎えお話をしていただきます。
 
 このような形でUPRについての話を伺える事はあまりなく、今回は貴重な機会ですので、ぜひ皆さま奮ってご参加ください。

◆講師:北村聡子さん(弁護士/日本弁護士連合会・国際人権問題委員会副委員長)

◆日時:2018年1月29日(月) 18:30~20:30

◆会場:スマイルなかの 4階 多目的室
中野駅北口より徒歩7分(中野区中野5-68-7)

◆資料代:500円

◆チラシのダウンロードはこちらからどうぞ!

◆主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会