2025年7月3日木曜日

第40回学習会の報告

 「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会主催 第40回学習会

包括的反差別法をつくろう!~差別禁止法とヘイトクライム~


2025年6月10日 午後6時~7時半                                衆議院第2議員会館第8会議室 



講師の寺中誠さんは、正面に映されたパワポの資料に添い、これまでに蓄積された研究や実践からの思い・知識・情報が溢れるように、 今日は、まず国際人権法は何を求めているのか、次に国内人権機関の可能性について話したい、と講演は始まった。


<国際的な人権に、日本はどう応えられるのか>

 人権条約として初めての「人種差別撤廃条約」は、国連で1965年に採択、1969年に発効し、 日本は1993年に加入した。しかし日本政府は、条約4条のa号とb号の2点について、留保  (守るつもりはない)している。

 a号は、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、いわゆる「ヘイトクライム・ヘイトスピーチの禁止」で、留保の理由を日本政府は「表現の自由」との衝突をあげる。

 b号は「人種差別の扇動」で、「扇動と顕示行為の禁止」は、「実行行為に至らない行為への処罰の躊躇」を留保の理由に掲げる。

国連からは、留保の撤回を何度も勧告されている。

 日本の刑法には名誉棄損罪(230条)、侮辱罪(231条)がある。2023年度で、その検挙件数は940件あるが、最終的な処罰には至っていない。民法上の不法行為の裁判、判決はあるが、刑法上では処罰が行なわれていないのが現状である。


<国連及び諸外国の動き>

一方で、国連人権委員会では、「表現の自由」の観点から、「名誉棄損罪」は、各国の刑罰法規から削除し、民事上の処分に限定すべきだと指摘されてきた。なぜなら、政治的、社会的な有力者こそが「名誉」を有しており、その強者の名誉を棄損したマイノリティを処罰する契機として利用される「抑圧の技法」であり、名誉棄損罪は、しばしばSLAPP訴訟に利用されてきたからである。

EUや北欧諸国では、反SLAPP法が次々成立している。

アメリカには、「ブランデーバーグ・テスト」という「急迫かつ現在の危険の法理」が用いられている。「現在の危険に触れない限り、表現の自由を最大限認める」というものであり、ヘイト表現の  規制は、合憲とされにくい。

名誉棄損罪や侮辱罪は、外部的名誉の侵害が問題とされ、内部的名誉(尊厳)や名誉感情を被害法益と規定することには困難がある。


<ヘイト犯罪の立法形式・刑事的規制>

現在は名誉棄損の規制を避け、ヘイトクライム自体を犯罪化する手法が主流である。ヘイトの動機による犯罪の実行化を重罰化するのは、イギリス、アメリカ、欧州などで、主観的犯罪要素として、ヘイト動機を明示的に位置づける立法形式である。

ヘイトスピーチは、ヘイト動機+顕示行為を伴うため、顕示行為が表現の自由と衝突する。

ヘイトクライムは、動機に基づく行為そのものを犯罪とし、ヘイト動機を処罰対象とするが、内心の処罰ではなく、行為主義を必要とする。

ヘイト行為やヘイトスピーチの予防のために、犯罪として規定することには重要性があり、危険性の抑止‣減少を効果が期待されている。しかし処罰という手段は、効果を上げづらい。「国内人権機関」は、処罰の効果より、取り締まりの効果、統制の必要性に正面から取り組むものである。



<世界の国内人権機関>

国内人権機関は、1947年国連経済社会理事会決議に基づく機関である。世界120ケ国以上に設置され、無い国は、アメリカ、中国、ロシア、日本など少数である。未設置の国にも、アメリカの「EEOC」やロシアの「人権全権」など、代替する機関がある。しかしロシアの機関は、プーチンの意を受けたオンブズパーソンが、ICC(国際刑事裁判所)から指名手配を受けている。またミャンマーのように、政府からの独立機関が不可能で、なくなった国もある。

韓国の国内人権機関は2001年に設立された。現在、そのメンバーは保守と革新が真っ二つに分かれている。国内人権機関は、決して平和な組織ではなく、人権のために「闘える場所」をつくろう! 闘う場所・舞台をいろいろな人が参加して、それを国の責任でつくろう! というもの。それが国内人権機関である。


<日本の国内人権機関の可能性>

日本国憲法下での、理想的構造はどうあるべきか。

日本国憲法98条2項は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とある。この規定に応じて、「国内人権機関」を通じ「国際人権基準」を国内法制に実務的に反映させていく、憲法上の機関とするべきだろう。

政府から独立した機関であり、予算などは国が責任をもつ国家行政組織法の外に位置づけられる組織が望ましい。現在の人事院、会計検査院のような機関であるべきだ。同じように「内閣に  設置」(内閣府ではない)という形が望ましい。と、講演は終わった。



会場からは、次々と質問や意見が続いた。

国会は会期末も近づき、参議院選挙などを控え、市民、議員など忙しく参加者は30名ほどであったが、とても有意義な学習会だった。

 さまざまな差別を受けている人たち、差別に取り組んでいる人たちが、「人権の国際基準」を目指し闘う「国内人権機関」。とても重要で大切な場所である。改めて、欲しい、必要だ、と強く思った。「国連・人権勧告の実現を!実行委員会」今後いっそう取り組みを強めて行きたい。


( まとめ 高木澄子 、 写真 石川美紀子、金朴優綺 )

2025年5月12日月曜日

第40回学習会 差別禁止と制裁の国際基準について 

第40回 学習会    差別禁止と制裁の国際基準について


「包括的反差別法をつくろう!」をテーマに、この間は取り組んでいます。今回は「差別 禁止と制裁の国際基準について」寺中誠さんを講師にお招きし、学習会を行います。寺中さんは「国内 人権機関と選択的議定書のための人権共同行動」の活動もなさっています。

人権侵害救済のための「国内人権機関」は、世界120ケ国にあり、日本も国連から何度も 設置を求める勧告が出ています。人員構成、予算、活動のすべてが、政府から独立した機関で、その活動は、広報・啓発、人権教育、人権侵害の受理・調査・救済、司法施設への査察、政府や国会への提言や勧告などと広範です。我が国の人権を国際基準にしていくために必要な、「国内人権機関」設置の動きについても、お話をして頂きます。


日時 2025年 6月10日 (火) 

          18時~19時30分 通行証配布17時半~


会場 衆議院第二議員会館 第8会議室


資料代 500円


*事前申し込みは不要です。当日は直接会場にお越しください。


講師 寺中誠さん


東京経済大学、都留文科大学、立教大学社会デザイン研究科の教員。主な研究分野は、刑事政策論、国際人権法。国際的な人権基準を  実現させるため、国内人権機関やグローバリゼーションが人権に及ぼす問題等について、理論的研究と実践的人権活動の両面に取り組む。  前職はアムネスティ・インターナショナル日本事務局長。共著書、論文に『Qヘイトスピーチ解消法』(現代人文社)、「国際的孤立に進む日本の人権政策」(「世界」201310月号)、他多数。


主催: 国連・人権勧告の実現を!実行委員会 

連絡先長谷川和男 ℡090・9804・4196

 Eメール ] jinkenkankokujitsugen@gmail.com                           

 ブログ ] https://jinkenkankokujitsugen.blogspot.com

2025年1月15日水曜日

第39回学習会 軍事要塞化に歯止めをかける! ~沖縄を再びイクサ場にしない~

第39回学習会 軍事要塞化に歯止めをかける!

~沖縄を再びイクサ場にしない~ 



 今、沖縄では急速に軍事要塞化が進められています。与那国島・石垣島・宮古島・沖縄島・馬毛島  など自衛隊のミサイル基地が建設され、民間空港・港湾・公道も使用して中国敵視の日米による実戦訓練が行われています。

 国連は沖縄への米軍基地集中は民族差別であり、沖縄の人々への事件・事故・性被害についても  日本政府へ改善するようにと勧告を出しています。しかし、国連の勧告に対する日本政府の対応は 「国連の勧告に従う義務なし」と一貫しており、私たちはこのことに異議を申し立て「国連勧告の実現」を日本政府に求めています。

 2月26日の院内集会では普天間基地の近くに住み「基地のない平和な沖縄」を座右の銘にして  いる伊波洋一参議院議員を迎えて、沖縄の軍事要塞化の現状や課題を話して頂きます。多くの方の ご参加をお願いします。


日時: 2025年2月26日 (水)

   18時~19時半  開場17時30分(通行証配布17時半~)


会場: 衆議院第一議員会館 第6会議室 


講師: 伊波 洋一 参議院議員  

1952年沖縄県宜野湾市出身。琉球大学理工学部卒業後、1974年宜野湾市役所入職。1996年から県議2期7年、2003年から宜野湾市長2期7年半務める。     2016年の参議院選挙にて「オール沖縄」の立場で初当選。現在、 外交防衛委員会、行政監視委員会、沖縄北方特別委員会所属。 


◆参加費 無料 

★事前申込みは必要ありません。   当日、会場にお越しください。


主催: 国連・人権勧告の実現を!実行委員会              
連絡先: 長谷川和男 
℡090・9804・4196