2025年7月3日木曜日

第40回学習会の報告

 「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会主催 第40回学習会

包括的反差別法をつくろう!~差別禁止法とヘイトクライム~


2025年6月10日 午後6時~7時半                                衆議院第2議員会館第8会議室 



講師の寺中誠さんは、正面に映されたパワポの資料に添い、これまでに蓄積された研究や実践からの思い・知識・情報が溢れるように、 今日は、まず国際人権法は何を求めているのか、次に国内人権機関の可能性について話したい、と講演は始まった。


<国際的な人権に、日本はどう応えられるのか>

 人権条約として初めての「人種差別撤廃条約」は、国連で1965年に採択、1969年に発効し、 日本は1993年に加入した。しかし日本政府は、条約4条のa号とb号の2点について、留保  (守るつもりはない)している。

 a号は、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、いわゆる「ヘイトクライム・ヘイトスピーチの禁止」で、留保の理由を日本政府は「表現の自由」との衝突をあげる。

 b号は「人種差別の扇動」で、「扇動と顕示行為の禁止」は、「実行行為に至らない行為への処罰の躊躇」を留保の理由に掲げる。

国連からは、留保の撤回を何度も勧告されている。

 日本の刑法には名誉棄損罪(230条)、侮辱罪(231条)がある。2023年度で、その検挙件数は940件あるが、最終的な処罰には至っていない。民法上の不法行為の裁判、判決はあるが、刑法上では処罰が行なわれていないのが現状である。


<国連及び諸外国の動き>

一方で、国連人権委員会では、「表現の自由」の観点から、「名誉棄損罪」は、各国の刑罰法規から削除し、民事上の処分に限定すべきだと指摘されてきた。なぜなら、政治的、社会的な有力者こそが「名誉」を有しており、その強者の名誉を棄損したマイノリティを処罰する契機として利用される「抑圧の技法」であり、名誉棄損罪は、しばしばSLAPP訴訟に利用されてきたからである。

EUや北欧諸国では、反SLAPP法が次々成立している。

アメリカには、「ブランデーバーグ・テスト」という「急迫かつ現在の危険の法理」が用いられている。「現在の危険に触れない限り、表現の自由を最大限認める」というものであり、ヘイト表現の  規制は、合憲とされにくい。

名誉棄損罪や侮辱罪は、外部的名誉の侵害が問題とされ、内部的名誉(尊厳)や名誉感情を被害法益と規定することには困難がある。


<ヘイト犯罪の立法形式・刑事的規制>

現在は名誉棄損の規制を避け、ヘイトクライム自体を犯罪化する手法が主流である。ヘイトの動機による犯罪の実行化を重罰化するのは、イギリス、アメリカ、欧州などで、主観的犯罪要素として、ヘイト動機を明示的に位置づける立法形式である。

ヘイトスピーチは、ヘイト動機+顕示行為を伴うため、顕示行為が表現の自由と衝突する。

ヘイトクライムは、動機に基づく行為そのものを犯罪とし、ヘイト動機を処罰対象とするが、内心の処罰ではなく、行為主義を必要とする。

ヘイト行為やヘイトスピーチの予防のために、犯罪として規定することには重要性があり、危険性の抑止‣減少を効果が期待されている。しかし処罰という手段は、効果を上げづらい。「国内人権機関」は、処罰の効果より、取り締まりの効果、統制の必要性に正面から取り組むものである。



<世界の国内人権機関>

国内人権機関は、1947年国連経済社会理事会決議に基づく機関である。世界120ケ国以上に設置され、無い国は、アメリカ、中国、ロシア、日本など少数である。未設置の国にも、アメリカの「EEOC」やロシアの「人権全権」など、代替する機関がある。しかしロシアの機関は、プーチンの意を受けたオンブズパーソンが、ICC(国際刑事裁判所)から指名手配を受けている。またミャンマーのように、政府からの独立機関が不可能で、なくなった国もある。

韓国の国内人権機関は2001年に設立された。現在、そのメンバーは保守と革新が真っ二つに分かれている。国内人権機関は、決して平和な組織ではなく、人権のために「闘える場所」をつくろう! 闘う場所・舞台をいろいろな人が参加して、それを国の責任でつくろう! というもの。それが国内人権機関である。


<日本の国内人権機関の可能性>

日本国憲法下での、理想的構造はどうあるべきか。

日本国憲法98条2項は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とある。この規定に応じて、「国内人権機関」を通じ「国際人権基準」を国内法制に実務的に反映させていく、憲法上の機関とするべきだろう。

政府から独立した機関であり、予算などは国が責任をもつ国家行政組織法の外に位置づけられる組織が望ましい。現在の人事院、会計検査院のような機関であるべきだ。同じように「内閣に  設置」(内閣府ではない)という形が望ましい。と、講演は終わった。



会場からは、次々と質問や意見が続いた。

国会は会期末も近づき、参議院選挙などを控え、市民、議員など忙しく参加者は30名ほどであったが、とても有意義な学習会だった。

 さまざまな差別を受けている人たち、差別に取り組んでいる人たちが、「人権の国際基準」を目指し闘う「国内人権機関」。とても重要で大切な場所である。改めて、欲しい、必要だ、と強く思った。「国連・人権勧告の実現を!実行委員会」今後いっそう取り組みを強めて行きたい。


( まとめ 高木澄子 、 写真 石川美紀子、金朴優綺 )

2025年5月12日月曜日

第40回学習会 差別禁止と制裁の国際基準について 

第40回 学習会    差別禁止と制裁の国際基準について


「包括的反差別法をつくろう!」をテーマに、この間は取り組んでいます。今回は「差別 禁止と制裁の国際基準について」寺中誠さんを講師にお招きし、学習会を行います。寺中さんは「国内 人権機関と選択的議定書のための人権共同行動」の活動もなさっています。

人権侵害救済のための「国内人権機関」は、世界120ケ国にあり、日本も国連から何度も 設置を求める勧告が出ています。人員構成、予算、活動のすべてが、政府から独立した機関で、その活動は、広報・啓発、人権教育、人権侵害の受理・調査・救済、司法施設への査察、政府や国会への提言や勧告などと広範です。我が国の人権を国際基準にしていくために必要な、「国内人権機関」設置の動きについても、お話をして頂きます。


日時 2025年 6月10日 (火) 

          18時~19時30分 通行証配布17時半~


会場 衆議院第二議員会館 第8会議室


資料代 500円


*事前申し込みは不要です。当日は直接会場にお越しください。


講師 寺中誠さん


東京経済大学、都留文科大学、立教大学社会デザイン研究科の教員。主な研究分野は、刑事政策論、国際人権法。国際的な人権基準を  実現させるため、国内人権機関やグローバリゼーションが人権に及ぼす問題等について、理論的研究と実践的人権活動の両面に取り組む。  前職はアムネスティ・インターナショナル日本事務局長。共著書、論文に『Qヘイトスピーチ解消法』(現代人文社)、「国際的孤立に進む日本の人権政策」(「世界」201310月号)、他多数。


主催: 国連・人権勧告の実現を!実行委員会 

連絡先長谷川和男 ℡090・9804・4196

 Eメール ] jinkenkankokujitsugen@gmail.com                           

 ブログ ] https://jinkenkankokujitsugen.blogspot.com

2025年1月15日水曜日

第39回学習会 軍事要塞化に歯止めをかける! ~沖縄を再びイクサ場にしない~

第39回学習会 軍事要塞化に歯止めをかける!

~沖縄を再びイクサ場にしない~ 



 今、沖縄では急速に軍事要塞化が進められています。与那国島・石垣島・宮古島・沖縄島・馬毛島  など自衛隊のミサイル基地が建設され、民間空港・港湾・公道も使用して中国敵視の日米による実戦訓練が行われています。

 国連は沖縄への米軍基地集中は民族差別であり、沖縄の人々への事件・事故・性被害についても  日本政府へ改善するようにと勧告を出しています。しかし、国連の勧告に対する日本政府の対応は 「国連の勧告に従う義務なし」と一貫しており、私たちはこのことに異議を申し立て「国連勧告の実現」を日本政府に求めています。

 2月26日の院内集会では普天間基地の近くに住み「基地のない平和な沖縄」を座右の銘にして  いる伊波洋一参議院議員を迎えて、沖縄の軍事要塞化の現状や課題を話して頂きます。多くの方の ご参加をお願いします。


日時: 2025年2月26日 (水)

   18時~19時半  開場17時30分(通行証配布17時半~)


会場: 衆議院第一議員会館 第6会議室 


講師: 伊波 洋一 参議院議員  

1952年沖縄県宜野湾市出身。琉球大学理工学部卒業後、1974年宜野湾市役所入職。1996年から県議2期7年、2003年から宜野湾市長2期7年半務める。     2016年の参議院選挙にて「オール沖縄」の立場で初当選。現在、 外交防衛委員会、行政監視委員会、沖縄北方特別委員会所属。 


◆参加費 無料 

★事前申込みは必要ありません。   当日、会場にお越しください。


主催: 国連・人権勧告の実現を!実行委員会              
連絡先: 長谷川和男 
℡090・9804・4196


2024年12月26日木曜日

包括的反差別法をつくろう! 12・10世界人権デー 院内集会の報告

【開催報告】

 包括的反差別法をつくろう!

12・10世界人権デー 院内集会の報告


Ⅰ、基調講演   浅倉むつ子さん(早稲田大学名誉教授)

 

 講演は、「労働法、ジェンダー法が専門で、今は、女性差別撤廃条約実現共同アクションの共同代表などをしています」という、浅倉さんの自己紹介から、始まりました。お話は、分かり易く、今こそ日本社会には、包括的反差別法が必要だという認識が広がりました。

・「包括的反差別法の意義」 


雇用差別の法規制が、包括的でないことの問題。

日本には雇用差別を規制する法制度がいくつかあるし、雇用以外の分野の差別規制法も存在している。しかしそれらが包括的な法規制ではないために、いくつかの重大な問題がおきている。

・性差別をめぐって

1985年の均等法は勤労婦人福祉法の改正として成立し、努力義務の規定だった。1997年、2006年の改正を経たが、いくつも問題を残している。

例えば、今年5月のAGCグリーンテック事件で、東京地裁は、はじめて間接性差別の成立を認めた。社宅制度(福利厚生措置)を総合職(多くが男性)のみに認めて、一般職(多くが女性)に認めないことは間接的な女性差別、とされた。これは間接差別を規制する均等法が福利厚生を対象とする法律だったからだ。しかしもしこれが、賃金である「住宅手当」が争点だったら、間接差別を禁止していない労基法4条の対象事項となるため、間接差別だという判決がでたかどうか、疑問である。

また、セクシュアル・ハラスメント防止に関する均等法の規定は、同法2章1節(性差別の禁止)ではなく、2章2節(事業主の講ずべき措置)におかれている。では、セクハラは「性差別」ではないのだろうか。また、セクハラとは「性的な言動」とされているが、性的(セクシャル)な言動ではない「ジェンダー・ハラスメント」(「女性はお茶くみが向いている」というような嫌がらせ)は、その対象とされていない。おかしくないか。

・差別の是正をめぐる条文の差異

 差別の是正については、均等法も障害者雇用促進法も、厚生労働大臣が事業主に「助言、指導、勧告」をすることになっている。しかし均等法には、勧告に従わない事業主の「公表規定」があるが、障害者雇用促進法にはこの条文がない。なぜだろうか。

・ハラスメント法制について

セクシュアル・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、ケア(育児・介護等)ハラスメント、パワー・ハラスメントという4種類のハラスメントの防止が、別々の法律で事業主の措置義務とされている。しかしそれぞれの条文にハラスメントの明確な定義はなく、措置義務規定からその内容を把握するしかない。

 以上のように、日本の法制上の大きな問題は、各法律がデコボコで統一性がなく、差別の救済がとても困難だというところにある。すべての人たちが利用しやすいようにすべきである。


2)包括的反差別法の参考例

① イギリスの2010年平等法

イギリスでは、9分野に分かれていた差別禁止の個別法を2010年平等法として統合した。これにより、複雑化した適用状況が統一され、複数あった人権機関は「平等人権委員会」(EHRC)に統合された。「平等のヒエラルキー」を解消するためにも、統合化が必要だったといわれる。

 同法の適用対象分野は、サービスの提供、不動産、労働、教育、団体が関わる差別。

 禁止される差別事由は、年齢、障害、性別変更、婚姻・民事パートナーシップ、妊娠・出産、人種、宗教・信条、性別、性的指向。

 禁止される差別行為としては、直接差別、間接差別、障害に起因する差別と合理的調整義務の不履行、ハラスメント、報復である。

「直接差別」には、「関係者差別」と「認識上の差別(みなし差別)」も含まれる。たとえば、障害者の家族であることを理由とする差別は、障害の「関係者差別」として禁止される。「認識上の差別」とは、その特性をもつ者と誤って認識された場合の差別であり、たとえば外国人だと間違われて差別された場合でも、それは直接差別に該当する。

 「間接差別」とは、ある要件や基準自体は中立的でも、それを適用したときに一方の性別に著しい不利益をもたらすような場合をさす。たとえば「身長175cm以上の人」という募集要件は性中立的だが、男性が多く採用される結果となるので、仕事上必要な要件だという合理的な理由が示されないかぎりは間接的性差別とみなされる、という例である。

 複合差別は、イギリスでは、二つの事由が重なる「結合差別」として禁止されている。他の国では、交差差別とも言われる。

② 国連の「包括的差別禁止法実践ガイドブック」

 2022年に、国連人権高等弁務官事務所が公表したもので、IMDARが翻訳している。

イギリスの平等法を作成したグループもこのガイドブック作成に関与し、以下のような特色があるといわれている。「生活のすべての分野において、国際人権法にそったあらゆる差別が禁止される」、「差別には、直接差別・間接差別、ハラスメント、合理的配慮の不提供、報復、扇動、差別の指示などを含む」、「ポジティブアクション(暫定的措置)を明文で規定する」、「国と民間の双方に対して、平等取り扱い義務を課す」、「被害の賠償、原状回復を含む効果的な救済を定める」、「立証責任を転換する」、「独立した平等機関を作り、差別を受けた人を支援し、調査し、国に助言する」、「国は行動計画を作る」、などである。

・ILOの190号条約

 ILOは、2019年、設立100周年を記念する総会で、「労働の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する190号条約」を策定した。「対象となる行為は、単発的か反復的かを問わず、身体的、精神的、性的、経済的な害悪を与えることを目的、または結果を招く可能性のある行為や脅威」。「人的対象は、労働者、労働世界のすべての人(インターン、ボランティア、求職者、応募者、使用者個人)」、「包摂的・統合的でジェンダーに対応したアプローチ」を採用している。また、「適切で効果的な救済。安全で構成で効果的な通報と紛争解決メカニズム」を作るとする。

以上のような3つの参考例と比べると、日本の場合は、明確な差別禁止規定や救済規定がなく、改めて、包括的反差別法の必要性が痛感される。


3)平等とは、何を実現するのか。

 イギリスの労働法学者、サンドラ・フレッドマンは、平等という概念の中でも「実質的平等」という考え方を提起するが、それは以下のような意味をもつ、と述べている。

 ・不利益の救済のため、資源や利益の再配分を求める。

 ・スティグマ、ステレオタイプ、偏見、暴力を排除して、承認を実現する。

 ・これまでの社会構造を、差異に配慮したものへと変革する。

 ・被差別者を社会に包摂して、政治的発言を強める。 

このことは、障害者権利委員会による「一般的意見第6号」が述べる、同条約の「平等概念」とほぼ同じものであって、障害者権利条約は「インクルーシブな平等」と述べている。




4)包括的反差別法の意義

最後に、包括的反差別法の意義をまとめておきたい。もちろん個別の反差別法を作ることは、とても重要なことだが、そのうえで、なぜそれらを「包括的なもの」にする必要があるかということである。

それは第一に、差別の解消、平等の実現をすべての人々にとって共通の課題として議論できるようにするから。第二に、権利の実現を求める人が法の谷間に落ち込まないよう、法にアクセスしやすくするから。第三に、平等のヒエラルキーをなくして、被差別者相互の対立を解消するから。そして第四に、複合的差別を救済しやすくするから、である。

 以上のような浅倉さんのお話は、とても説得力があるものだった。

 会場には、議員の方たちの参加も沢山あり、この時間に会場にいらした議員8名に前に並んで頂き、一人一人から力強い連帯の挨拶を頂いた。また時間の関係で、集会開会直後に挨拶をして退席した議員もいました。

短い質疑の時間に、在日の方から質問があった。「日本の外国人差別は、ひどい。憲法のいう国民を克服でき、在日差別を解消できるのか?」 国会議員の福島みずほさんからは、「差別禁止の対象と救済をしっかり法に盛り込めば、出来るはず」と回答した。

憲法前文には「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ…」と書かれている。国籍が焦点ではなく、地域に生きる「人民」ととらえた反差別法をつくっていきたい。


Ⅱ、特別報告

1、「朝鮮学校差別と歴史認識」 朴金優綺さん(在日本朝鮮人人権協会)

 朴金さんは欠席となり、司会者がレジュメを読み上げた。



 2010年以降文部科学省は、朝鮮学校を「高校無償化」制度から排除。それに伴い、自治体もそれまでの補助金を停止。2019年から始まった幼保無償化制度から、外国人学校の幼稚園を排除するという、公権力による差別が行われている。

 これに対して、各条約人権機関・各国からは差別の是正を求める勧告が出されている。

 また「群馬の森」の朝鮮人強制労働者の追悼碑の撤去。「佐渡の金山」に動員された朝鮮人名簿の非公開。1923年に起きた関東大震災における朝鮮人虐殺の追悼集会に、2017年から小池知事は追悼文を不送付。100年目の昨年は虐殺に関する事実の公文書があるにもかかわらず、「記録が見当たらない」を繰り返した。これらは日本が朝鮮を植民地支配していた時に起きた「植民地犯罪」で、公権力による歴史否定への加担が行われている。国際人権基準に照らすと、植民地犯罪に対する調査や真相究明、公文書へのアクセス、植民地犯罪の影響を扱う記念措置の採用などが求められており、日本の公権力による歴史否定への加担は、これと逆行する動きとして許されないものである。

世界に目を向けてみると、旧植民地支配国がその責任に向き合うという流れが世界的なものとなっている。ベルギーやフランスでは、植民地時代の歴史を検証する委員会が設置されている。日本も、差別を是正し、歴史否定の加担を止め、植民地支配責任に、向き合うことが求められる。


2、「入管問題に取り組む立場から」 是恒香琳さん(Save Immigrants Osaka/#FREEUSHIKU)


 入管の収容施設内外で支援活動を行う2つの市民有志グループによる共同の報告。

2021年スリランカ人女性ウィシュマさんの名古屋入管での死亡、22年イタリア人男性ルカさんの東京入管での死亡。同じ人間としての配慮や医療が行われず起きた事件だ。

2023年、出入国管理及び難民認定法が「改正」された。・送還停止効の廃止、・監理措置制度の創設、・退去強制拒否罪の創設、・一年を超える実刑判決を受けた者に原則として在留特別許可を発布しないなどの問題点に、批判が続出した。

2024年、出入国管理及び難民認定法がさらに「改正」。技能実習制度に代わる育成就労制度を創設し、本人の意向で転籍が可能と謳うが、実際は非常に難しい要件。来日時の借金という足枷への具体的な対策もない。永住許可取消しを容易にする条文が加わった。

法案審議中、国は日本で生まれ育った未成年の非正規滞在者と家族に在留資格を与えると約束したが、現状は一部に認められたにすぎない。母子家庭なのに小学生の子どもだけ「留学」の在留資格が認められた事例。父親の在留資格が認められず母子家庭状態の事例。ひとり親家庭への公的支援から排除されて、子どもの権利すら守られない。

 管理措置制度も、一部の入管では申請をしても全く許可されない。ある入管では、監理人を見つけられず、ハンガーストライキで命がけの抵抗をし、やっと仮放免が認められた。

 先の見えない収容・仮放免の生活に絶望しながら生きている人たち、家族、支援する市民有志、みなに限界が訪れつつある。

 在日クルド人に対するヘイトスピーチが深刻化。社会全体の意識改革が必要。人権無視のガイドラインや入管法の本当の「改正」に繋がることを願って、「包括的反差別法」を求めたい。


3、「沖縄基地と性暴力」 青木初子さん(沖縄反戦地主会関東ブロック)



 昨年12月におきた米兵による少女誘拐暴行事件を、今年6月に新聞報道されるまで日米両政府は、沖縄県や県民に隠蔽した。その理由を「プライバシーの保護」というが、保護を図りながら事件を県民に知らせ、注意喚起をすれば、その後の2件の事件を予防できたはずだ。また県民が知らされなかった6ケ月の間に、県議会選挙があり、結果が代わっていたかもしれない。6.23慰霊の日があり、岸田・バイデン会議も行われ、エマニュエル駐日大使は、米軍機で与那国島へ行き、「沖縄は負担でなく、責任だ」と台湾有事をあおることまでした。このような沖縄差別の政治的隠蔽を、絶対許すことは出来ない。

 10月に、女性たちは国連に代表団を送り、米軍基地由来の性暴力や人権侵害の歴史と実状を訴えた。女性差別撤員会は、日本政府に対して「被害者の保護と救済、補償制度を確立し『不処罰の文最後化の終焉』に向けて具体的取組の実行を」もとめ、勧告をした。委員会が在沖米軍人らに言及するのは初めてで、米軍による性暴力を「ジェンダーにもとづく暴力」と明言し、地位協定の改定や、人権機関の設立の必要性も盛り込んだ。女性たちの闘いが国連を動かし、勧告を勝ち取った。

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 会場は当初予約していた広い会場が、衆議院解散、総選挙でご破算になり、やや狭い会場に変更になり、Youtubeでの同時配信を行った。会場は満員で熱気にあふれ、入りきれない人もいた。遅れての参加で挨拶が出来なかった議員、そして秘書の参加も多かった。


集会の最後に参加者一同でアピール文を採択し、「改めて包括的反差別法をつくろう!」の思いを新たにして、集会を終えた。会場参加者、視聴者ふくめ200名以上の参加者でした。




(まとめ:高木澄子  写真:石川美紀子)

2024年12月4日水曜日

報告「デモでアピール!!2024 包括的反差別法をつくろう」

報告「デモでアピール!!2024包括的反差別法をつくろう」

(2024年9月28日開催)

 

ここ数年恒例となっている、「デモでアピール」を今年も実施しました。


室内集会では、一般市民の方たちに私たちの活動が伝わらないという思いから、人が集まる場所で、ミニ集会を行った後、デモをする企画です。今年も、新宿アルタ前でミニ集会を行いました。


今回は実行委員会の段階から、関連団体に参加していただき、予定では10団体、実施は9団体の方に短時間でしたが、アピールをお願いしました。 



  1. 1,  朝鮮学校差別問題・・・在日本朝鮮人人権協会から、こども基本法や条例ができ、子どもは平等であると謳われているのに、朝鮮学校への酷い差別が横行している。差別を許さない取り組みをともに進めいこう。 


2,日の丸・君が代強制問題・・・君が代裁判を闘う原告から、10・23の都教委通達の不当性を国連でも勧告している。裁判闘争への支援を。 


3,アイヌ民族の人権回復・・・アイヌ民族の衣装を着たアイヌ料理店{ハルコロ}を営む店主からアイヌ民族を先住民族と認めたが、実質的な人権回復はなされていない。アイヌ差別を許さない闘いに協力してほしい。 


4,琉球・沖縄の軍事植民地化問題・・一坪反戦地主会から、145年前に日本の軍隊によって琉球国が侵略され、沖縄県が設置。以来、沖縄は日本政府によって軍事基地化された。基地の集中は現代版の人種差別であり、国連勧告で政府は沖縄の人々と話し合うよう勧告されているが、実現していない。 


5,日本軍「慰安婦」問題・・・全国行動の代表から、現在の状況が報告され、政府はいまだに「慰安婦問題」を認めず、それどころか、ドイツに設置された「少女像」さえ、撤去させるなどの許しがたい対応をしていることに怒りを共有 してほしい。 


6,改悪入管法・・・FREE USHIKUのメンバーから自分の過去にあった学校での教師から受けた暴行についてなかったことにされた経験の話から、子どもはブラックボックスの中にいることに注目しよう、名古屋収容所で殺されたウシュマさんについて誰も責任を取っていないことに怒りを、さらに今回はよりひどい入管法になっ ている。 


7,朝鮮人強制動員問題・・・日本製鉄元徴用工裁判を支援する会から、韓国大法院では、日本製鉄に補償するよう判決が出されたが、1965年の日韓請求権協定で解決済みとして、日本製鉄は損害賠償せず。徴用工裁判に支援を。 


8,原発問題・・・被ばく労働を考えるネットワークより、原発事故後デブリ取り出しが行われているが下請けのそのまた下請けの労働者は何の社会保障もない状態で危険な仕事をさせられている。放射能汚染で白血病になっても補償どころか東電は切り捨てている。危険な作業を中止させ人権と命を守るよう訴える。 


9,部落差別問題・・・部落解放同盟から、袴田事件の次は石川さんの再審。61年訴え続けている石川さんの無罪を勝ち取ろう、そして鳥取グループからのネット上での差別拡散を止めていこう。 


最後に、主催者の朴金さんから、国連が何度も日本政府に勧告している国内人権機関の設置・個人通報制度・差別禁止法の制定を実現を目指し、12月10日には議員会館で国会議員も共に考える集会を行う予告がありました。 


ミニ集会の後は、新宿界隈のデモを行いました。日本語・英語・朝鮮語の3か国語による、マイクアピールとシュプレヒコールは、道行く人を振り向かせ、効果的だったと思います。 

 

この報告には一坪反戦地主会の機関紙の投稿された青木初子さんの記事を引用させていただきました。ありがとうございました。                 


( 文責 森本孝子  )