2026年1月17日土曜日

包括的反差別法をつくろう!第13回 世界人権デー集会 の報告

 包括的反差別法をつくろう!                  

13回 世界人権デー・院内集会の報告

 「国連・人権勧告の実現を!実行委員会」は2013年に発足し、それ以来、国連から勧告を受けている各テーマで、院内集会やリレートーク、デモ行進を繰り返し、人権の確立を求めてきました。10年以上取り組み続けてきましたが、果たしてどれだけ前進したのでしょうか。




安保法制が多くの国民の反対にもかかわらず、強硬採決された2015年。それ以降、軍事費は増大し続け軍拡化は進み、新たな戦前とさえ言われています。そんな状況の中で、賃金は上がらず物価高は進み、貧富の格差は広がり、人々の貧困化は進行しています。

その国民の不安と不満は、5月に発表された政府の「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」や、「日本人ファースト」を掲げる政党の躍進などにより、排外主義は進み、外国人や弱者への、差別・人権侵害は進んでいます。

実行委員会では、この2年ほど、「包括的反差別法をつくろう!」のテーマに的をしぼり、活動をしています。

2025年の第13回・世界人権デー集会は、1210日、衆議院第二議員会館で開きました。今回は、長い間、反差別の問題に取り組んでこられた小森恵さんを講師に迎えて基調講演を、さらに3人から具体的に進む問題について特別報告をして頂きました。


 基調講演  小森恵さん(反差別国際運動(IMADR)事務局長代行) 

 




「包括的反差別法」 私たちは求めます。

1948年の今日1210日は、国連で『世界人権宣言』が採択された記念すべき日です。二度にわたる世界大戦の反省として、「差別は戦争につながる」という教訓を確認したにもかかわらず、戦後もアパルトヘイトはなくならず、さらにナチズムが台頭するなど、差別を生み出す状況は続きました。世界人権宣言に法的拘束力をもたせる必要性を確認した国連は、196512月に国連最初の条約として「人種差別撤廃条約」を採択しました。それから60年が経ちました。そして日本がこの条約を批准したのは199512月であり、今年は加入30年にあたります。

2022年の世界人権デーに、国連高等弁務官事務所(OHCHR)は、それまでの経験と英知をもとに、3年以上をかけて作成した『包括的反差別法制定のための実践ガイド』を発行しました。IMADRは、この法律は日本でも必要だと考え、1年かけてそれを日本語に翻訳し、300頁にわたる『日本語版実践ガイド』を2023年に出版しました。


1.包括的反差別法は、どのような内容からなるのか

(1)「包括的反差別法」を構成する要素

 平等と無差別の保障は、国の義務です。国際人権基準はそれを求めています。

 包括的反差別法の基本要素は、差別の禁止差別の対処において包括性があることで 

 す。

  1. 差別の禁止事項の包括性

*差別の理由を限定しない。国連がこれまで各国の人権審査などを通して、差別の理由

 として確認してきた理由をすべて含みます。

*差別の多様な形態に対応する。直接差別、間接差別、そして、最近問題として確認され始めたみなし差別、関係者差別、複合差別があります。

*差別の範囲を問わないこと。国や公的機関による差別、民間における差別、私人間の差別

  などすべて含みます。また生活のあらゆる場面で起きる差別を含みます。

  1. 差別に対する措置の包括性

*ポジティブアクション/アファーマティブアクション。これは構造的な差別により生じたギャップを埋めるための措置です。同じレベルでの参加を保障するために必要とされます。

平等義務 次の4つの義務があります。

・アクセスビリティの確保。設備やサービスを平等に使えるようにする義務で、不遵守は

 差別行為です(障がい者権利委員会)。

・予防的義務。差別が発生しないよう仕組みを整える義務です。

・制度的義務。参加の平等を確保するために制度を見直し、改善する義務です。

・主流化義務。平等は当たり前という考えを、計画や政策に取り入れていく義務です。

救済の種類

・制裁-民事的制裁、刑事罰など。

・賠償-被害に対する損害賠償など。

・差別の認定-差別の認定自体が、差別被害者の救済になります。

・制度的救済-差別的な法や慣行の廃止につなげます。

・社会的救済-教育や啓発プログラムを通して差別をなくしていきます。

*救済のための仕組み

・誰でも司法にアクセスできるようにします。

・被害者個人に代わって、団体が裁判に訴えることができるようにします。

・立証責任の転換-今は、原告側が差別や権利侵害を証明しなければならず、非常にハードルが高く、そのため被告が、差別をしていないことを立証する「立証責任の転換」が必要です。

・判決の効果が、同じ差別体験をしている人たちに及ぶこと。これも大切です。

 

(2)国内人権機関/平等機関の設置の必要性

国内人権機関は、包括的反差別法に、必要な要素です。差別の被害を明らかにして救済するために、裁判も一つの手段ですが、それには弁護士への依頼も含み時間や費用がかかるなど個人に大きな負担がかかります。

一方、国内人権機関は、法律の専門家に頼ることなく、個人が差別の申立てをできます。国内人権機関は、①差別の調査や調停をして人権救済を行います。それ以外にも、②差別撤廃や人権政策の提言を政府に行います。 ③国レベルでの反差別・人権教育を計画して実施します。等の重要な役目を果たします。

裁判に訴えなくても、速やかに調査し調停や救済が行われること。それを行うために、独立した国内人権機関は不可欠です。


2.日本の現状について

 IMADRは、包括的反差別法の実践ガイドに基づいて、部落差別、在日韓国朝鮮人差別、女性差別、障害女性と複合差別、アイヌ民族差別、LGBTへの差別など7つのテーマで、ワークショップを行い、これらの差別と闘っている人たちの報告を通して、包括的に差別を撤廃するために、日本では何が欠けているのか議論をし、次のような課題があることを確認しました。そして様々な問題がわかってきました。日本には、

・平等と無差別の原則がない。←差別を定義した法律がない。

・実効的な人権教育が不在。国際人権に基づいた人権教育が必要。

・実態調査は差別対処のためには必須で、国連は繰り返し勧告してきたが実行されていない。

・ジェンダー平等の価値観の不在、著しいジェンダーギャップの存在。

・みなし差別/関係者差別を、差別一形態としての確認がない。

・複合差別の幅広い調査と法的な定義がない。

・先住性、エスニックマイノリティ概念の不在。FPIC(自由意志による、事前の十分は情報に基づく同意)が遵守されていない。

・カミングアウトを必要としない合理的配慮の必要性。

・アウティングという差別行為の理解の欠如。

  など、多様な課題について話し合われました。





3.包括的反差別法だからできること

差別の複合性、交差性に対処します。個別法では対処できない空白をうめることができます。差別はこれまでにない表れ方をします。時代の変化と共に新しい差別の理由も出てきます。そうしたことに包括的反差別法は対応します。

また包括的反差別法を制定するうえで、差別の歴史を社会全体で記憶し続ける義務をどう法律に組み込むかを考える必要があります。

差別連鎖の明確化、被差別集団内や集団間での格差や差異の解消、社会全体に影響を及ぼす差別問題への対処などです。これは重要な課題です。


4.最後に

日本は、女性差別撤廃、人種差別撤廃、障害者権利条約等、主要な国際人権条約を批准しています。しかし、これら条約を国が違反しても、個人が条約機関に通報できる個人通報は認めていません。個人通報制度を認める「選択議提書」を批准をしていません。(人種差別撤廃条約の場合は、受諾宣言)

世界には46ケ国以上に「包括的反差別法」があります。そして差別の調査や救済に欠かせない「国内人権機関」は、世界118ケ所にあります。

「包括的反差別法」を制定する取り組みに、是非『国連実践ガイド』を利用して頂きたいと思います。と話しを締めくくられた。


お話の後、短い質問時間に、「差別をする側の分析も必要ではないか」との意見が会場から出ました。小森さんは「差別を正当化する優越思想、差別を支える社会の仕組み、差別を煽る情報、これらと取り組むことが大切です。個人が差別をするというのは、それを許している社会の問題だと考えます」と応じられた。


 特別報告

1.「朝鮮学校差別問題」  宋恵淑(ソン・ヘスク)さん  在日本朝鮮人人権協会





 2010年施行の「高校無償化」は、画期的なものでした。各種学校認可を受けた外国人学校も適用対象になったからです。しかし、拉致問題などの政治的・外交的問題を理由に、朝鮮高等学校への適用は見送られました。それ以降国連の各種の人権機関からは、何度も朝鮮学校を高校無償化に適用するよう「勧告」が出されていますが、差別は続けられています。

 今年、高校無償化制度に動きがありました。自民・公明・維新の3党で高校実質無償化にむけて、25年度、26年度にかけて支援を拡大する合意が2月になされたのです。「日本人ファースト」が叫ばれた6月の参院選を経て、10月に大枠が判明した26年度からの高校無償化拡大の内容について3党の「高校無償化」に関わる実務者協議に参加していた柴山元文科大臣は、「今回の就学支援新制度の拡充は非常に手厚いため、やはり自国民を優先して、まずは行っていく必要があるのでは」、「指定する制度をいったんやめる。ただ、法律に基づかない恩恵的な措置として、これまで支援していた額相当は支援する制度に」などと発言をしており、各種学校に通う外国人は、法律ではなく恩恵的になんらかの支援が維持されるとも、あります。

 高校無償化は、子どもたちの人権問題であり、恩恵などではありません。とりわけ朝鮮学校は、日本の植民地主義のもとで奪われた、人間としての誇りや、言葉を取り戻す大切な学びの場です。

 日本の敗戦から80年で、日本政府はいったいいつまで、どれだけ深く朝鮮学校の子どものたちの心を傷つければいいのでしょうか。包括的反差別法が成立すれば、このような政府主導のヘイトは許されないはずです。

今年になって国会内で希望のもてる動きもありました。「朝鮮学校に対する公的助成の実現を目指す国会議員の会」が発足したのです。議員の会の皆さんと力を合わせて活動を拡げ、実質的な成果を得られるようにしていきたいです。

なお、高校無償化から除外された当事者たちが文科省前ではじめた朝鮮学校への高校無償化の適用を求める金曜行動が、1212日に600回を刻みます。これ以上この差別を引き継がせない、もうこの行動を最後にしたいとの思いをこめて、19日金曜日に朝鮮高校の生徒たちや朝鮮大学校の学生たちが集まって差別是正の声をとどろかせます。連帯をして下さい。


2.「入管法改悪の現状」 瀬戸大作さん(一般社団法人 反貧困ネットワーク 事務局長)





  「差別を生み出す政策にNo! 外国人の強制送還にNo!」と、活動をしています。高市政権になってから、貧困格差の問題には一切ふれていません。最近は女性、障害者そして全世代的に、貧困による困難者たちは、増えています。反貧困ネットでは、誰一人取り残さないと、取り組んでいます。昨日、今日と8人の外国人たちから、住むところを追い出され、食べる物もないという相談がきました。

5月に「国民の安全・安心のための 不法滞在者ゼロプラン」を入管が公表しました。不法と言われるルールを守らない外国人の「ルール」とは、3層あります。①刑法違反。これは日本人を含めた刑法犯のうち、わずか025%です。②一番多いのが、入管法違反です。これは、日本にきて難民申請する人たちに、特別在留許可を与えればよい問題です。③コミュニティルールやマナー違反で、住民やインバウンドの観光客による、ゴミ出しのルールや無断撮影などは、きちんと伝えればいいことです。

②が大きな問題で、反貧困ネットでは、この間続いて2回の政府交渉・院内集会を開きました。「強制送還ではなく、在留資格で子どもの権利を守って下さい!」と、国会内で、外務省、法務省、文科省の各担当者らに、子どもたち自らが直接訴えたのです。仮放免中の子どもたちは、幼少期に来日し、あるいは日本で生まれ、育ち、学んでいて、日本語しか話せません。「子どもの権利条約」を批准している日本は、どこの国の子どもであろうと、子どもの権利を守る必要があります。

難民申請中の親が入管からの出頭命令で入管に行くと、そのまま拘束され、同時に公園で遊んでいた子どもを入管職員が迎えに行き、家族で強制送還された例や、親だけ強制送還された例などあります。68月の間に119名が強制送還され、昨年の2倍になります。私たちが支援していた、50名弱が強制送還されました。ずっと共に活動してきた仲間も、いまその危機にあります。日本の難民認定率は2、2%(昨年)で、諸外国と比べすごく低いのが、大きな問題です。

入管は、クルドやアフリカの人たちが、なぜ難民として日本に滞在しているのか、きちんと調査などしていません。今後、これにきちんと反論していく運動を、やっていきます。そして、強制送還を、止めなければいけません。

もう一つ大きな問題は、働くための「技術・人文・国際業務」「経営・管理」等の在留資格があるにもかかわらず、失業すると何の社会保障もなく、非常に困難になる状況もあります。

私たちは「国籍に関わらず! 在留資格に関わらず! 日本人でもナニ人でも、ここ(日本)に生きる人として、貧困状態に置かないことを目指す」を、スローガンに取り組んでいます。  

今日これから午後7:30に、20代の女性が、事務所に相談に来ので、これで退席しますと、報告を終え、慌ただしく会場を後にされた。


.「婚外子差別の現状」 田中須美子さん(なくそう戸籍と婚外子差別交流会)





  婚外子に対する民法の相続差別規定が、20139月に最高裁大法廷で全員一致で憲法違反とされ、その年の12月に廃止されました。これによって婚外子差別法制度は廃止されていくだろうと期待しました。しかし一方ではこれによって、婚外子差別の問題は解決したかのようにとらえられてきました。

欧米諸国を始め多くの国では、婚外子差別法制度が廃止され、子どもは区別なく、「子」と規定されています。しかし日本ではそうはならず、未だに出生届での差別記載の強要や、推定200~250万人の婚外子の戸籍では、一目で婚外子とわかる差別記載がされています。更には子連れ再婚の場合、養子縁組で実母が、実子との養子縁組を強制されています。これらによって、婚外子とその母親を一段下に見、蔑んでも良いのだという差別意識を助長しています。

この結果、婚外子とその母親は、いじめられ差別され日々苦しんでいます。

私たちの許には婚外子やその母親から「いじめられてきて辛かった。自分のことを半人前と思い委縮してきた」「職場に戸籍謄本を出したところ、『ここには隠し子の母親がいる』と言いふらされ、職場をやめざるをえなかった」などの声が寄せられています。

国連人権条約各委員会から、14回にわたる婚外子差別撤廃の勧告が出され続けています。直近の2024年には「婚外子の地位に関するすべての差別的規定を廃止し、婚外子とその母親を社会における偏見と差別から保護すること」との勧告が出ました。

それに対し日本政府は、「戸籍法が、嫡出子と嫡出でない子を区別しているのは、適正に戸籍事務を行うためであり、合理的なもの。戸籍法の該当部分の改正は予定していない」という姿勢をとっています。

婚外子とその母親への差別は、戦前の家父長制度を引き次ぐものです。21世紀を生きる私たちは、もうこの家父長制のくびきから脱却し、結婚するもしないも女性の選択の問題であり、母親が非婚だからと子どもを差別する法制度は、一刻も早く廃止していかなければなりません。

 

集会には5人の国会議員が参加し、力強い連帯のアピールを頂きました。ラサール石井議員は、「差別をなくす三種の神器は、包括的反差別法、国内人権機関、個人通報制度と聞きました。任期の6年のうちに、是非国内人権機関はつくりたい!」という力強い言葉には、参加者から拍手が湧きました。議員秘書の方たち、参加者を含め、会場には100名ほどが集まりました。会場は、近藤昭一議員がとって下さいました。





 最後に参加者全員でアピール文を採択し、「包括的反差別法をつくろう!」の思いを新たにして、集会を終えました。




                            

 (まとめ:高木澄子  写真:石川美紀子)