2019年6月23日日曜日

第30回学習会の報告

第30回学習会の報告


 「国連人権勧告の実現を!」実行委員会主催の第30回学習会は、表題のタイトルで角南和子弁護士(東京弁護士会「子どもの権利と少年法に関する特別委員会」委員)を講師に迎え、6月10日、午後6時30分から連合会館で行われた。激しい雨風の中、このテーマに深い関心を寄せる27名が参加した。

 <「子どもの権利条約」と最新の総括所見>

 子どもの権利保障のための世界共通基準が「子どもの権利条約」である。1989年の国連総会で採択され、日本は1994年に世界で158番目に批准した。批准後1998年に第1回目の審査、2004年に2回目、2010年に3回目、2019年が4回目の審査で、2月7日に「国連こども委員会」から総括所見が出た。

 総括所見には、前回から進展した政策への評価もある。例えば、民法改正により結婚年齢が以前女性は16歳以上だったのが、男女とも18歳以上となったこと。刑法改正により、強制性交罪(以前の強姦罪)で親など監護者の強制性交罪が出来たこと。以前の児童福祉法では、被虐待児童の一時保護は18歳までだったが、法改正により保護時が18歳前の場合は、それを過ぎても保護が継続出来るようになったこと、などである。
 
 今回の総括所見で、緊急措置をとらなければならないこととされたのは「差別の禁止」「子どもの意見の尊重」「体罰」「家庭環境を奪われた子ども」「リプロダクティブヘルス及び精神保護」「少年司法」の6つの分野である。

 日本の現状を「子どもの権利条約」から見てみよう。
 
<「子どもの意見表明権」の大切さ>

 家庭では、特に都市部などの小学生では、親が決めた「お受験」など、どこまで子どもの意見が尊重されているのだろうか。

 両親が離婚した時「親が決めたことだから仕方ないが、子どもの自分には何も聞かれず、長い間苦しんだ」と大人になってから話した人もいる。家事事件手続法で両親の離婚の際、子どもの手続き代理人制度が出来た。弁護士として考えると、現実的には6歳の子どもの代理人になるのは難しいが、12歳、13歳からは可能で、その意義はあると思う。

 児童福祉法での一時保護は、子どもに選択権はなく隔離される。保護は大切だが、子どもへの虐待は犯罪で、本来、隔離されるべきはどちらだろうと、保護されている子どもは考えてしまうだろう。

 学校でのいじめの多発により、2013年「いじめ防止対策推進法」が成立した。法ができたことで、子どもを被害者と加害者に分けて対応しなければならない状況が生まれている。こども同士はトラブルを通して学びながら成長していく面もあり、双方の言い分を聞くことが必要。法には立法事実が大切で、いじめ防止法の作成にあたり、子どもたちに意見をちゃんと聞いたのだろうか。

 校則については最近「茶髪禁止」などが注目されるが、校則を守らせることが目的になり、もともと茶髪の子の髪を黒く染め続けさせたとの例もあるようだ。子どもの意見を聞かないで作られた校則により、子どもの心身を傷つけたりしている。

少年法のよい点は、子どもが意見表明をする機会が与えられていること。少年事件の場合、子どもの更生が目的で、子どもの成長発達を支えるための法である。家庭裁判所で行われる少年審判の時間は、子どもの言うことを聞く場であり、子どもが語る場である。それは審判でその後の処分を決めるのでちゃんと子どもの話を聞かなければならないし、子どもにとっては処分を受ける前に、きちんと話すことができる制度である。

 まず、子どもたちは意見を述べても良いことを知らされる必要がある。

<子どもも大人と同じ尊厳を持つ>

 体罰は、教育の場や家庭の場では「しつけ」と言われることがある。たたかれれば子どもは自分が悪いと思うが、たたかれる必要がないことを子どもは知らされるべきだ。条約では虐待や、子どもをけなし、品位を傷つけることも体罰である。

 奄美中学1年生の男児が自殺した事件が、指導死といわれる。いじめの主たる加害者でも被害者でもなかったが、しっかりした聞き取りもなく、担任教師から指導され、家庭訪問をうけ、思い悩み、その直後に自ら命を絶った。指導する前にまず何があったのか、話しを聞くことが大切だ。

 子どもも、大人と同じく尊厳を持つことを知らされる必要がある。

 千葉県野田市で父親の脅しに屈し、児童相談所が保護していた10歳の女子を親元に返し、10歳の女児が虐待死した事件があった。モンスターペアレントに児相の職員1人で対応するのはとても厳しく、複数、チームで当たらなければならない。

 里親に育てられる子どもたちもいる。子どもへの真実の告知は早い方がよいと言われるが、里親が相談したくても児相にはそのゆとりがないのが現実。

 法律が改正されたり、新しい法律が「子どもの権利条約」にのっとり成立していくのは、現場の解釈の指針になるのでとてもよい。同時にそれに合わせた、人員や予算の手当てが必要である。

<私たちはどうすればよいか>

 まず自分は。子どもとの出会いが一瞬でもあれば、尊厳をもった人間として扱い、礼を尽くしたい。

 周りの人たちとは。同じ考え、思いを持つ人たちと一緒に発言していきたい。

 政府や自治体に対しては。学校、保育園、児相や独立した監視制度、オンブズマンの設置など、子どもにお金をかけようと働きかけたい。

 角南弁護士の熱い思いのこもったお話は、2時間近くに及んだ。会場参加者の多様な立場から、意見や質問も続いた。子どもに関わるのは児相、里親、自治体など、もっと多くの機関が連携をとっていくことが必要である。朝鮮学校の高校授業料無償化からの排除では、「公」が最も「児童権利条約」に反する差別をしている。「子どもの権利条約」を、「公」から守らせよう、などと皆で確認して学習会を終えた。

(報告 高木澄子)