2024年6月14日金曜日

第38回学習会の報告

国連・人権勧告の実現を! 2024.4.24.第38回学習会

差別されない権利差別が禁止される社会づくりに向けて

 

1.はじめに

 主催団体の「国連・人権差別の実現を!実行委員会」は、2013年に発足しました。取り組んでも国内で改善されない差別・人権問題について、市民は国連に働きかけ、訴えをしてきました。当時の安倍政権は、国連から日本政府に出された改善を求める「勧告に対し、「法的拘束はない」と閣議決定をしたのです。それに対して怒り、危機感を持った団体個人が集まって共に活動を展開するため「実行委員会」をつくりました

2023.12.7.集会


発足以来毎年12月の「世界人権デー」前後には、集会やパレードを行い、随時、多様な人権のテーマで学習会重ねてきました。昨年12月、発足10年目となる集会では、「包括的差別禁止法をつくろう!」というテーマで行いました。

主催者挨拶・講師紹介

その中で、被差別部落の地名を暴露する書籍出版の差し止め訴訟で、日本の裁判史上初めて「差別されない権利」が認められたこと、それは弁護団・原告の努力の結果であることが報告されました

今回の第38回の学習会ではその裁判の弁護団メンバーとして、  控訴審で素晴らしい判決を引き出した河村健夫弁護士を講師に迎え、2024年4月24日東京ボランティアセンターで差別されない権利-差別が禁止される社会づくりに向けてと題し、学習会を行いました。

 

講師:河村健夫弁護士

2.『全国部落調査』などの出版差し止めを提訴

部落差別(同和問題)は、日本社会の歴史的過程で作られた身分に由来する不合理な偏見、基本的人権侵害の重大な人権問題です。 「同和対策事業特別措置法」等により、住居、道路、下水道など 生活環境、実体的差別はかなり改善されました。しかし、偏見により結婚させない、就職させないなど、心理的差別は、根深く残っています。各自治体で5年に1度、アンケート調査を行っていますが、出身地、身元調査による、結婚差別については、現在20%残っています。

差別に利用される復刻版 全国部落調査』と『部落解放同盟関係人物一覧』の2つを対象に、出版の禁止(差し止め)、インターネット上での情報バラマキの禁止(差し止め)、第2次利用(出版や映像化)の禁止を求め、2016年に240余名が原告となり提訴しました


パワーポイントでわかりやすく説明

復刻版ではの『部落地名総覧』手書きだった住所をデジタル化して加え、検索容易に出来るようにし、今の住所で部落名がるようになっていまし

 

 

3.東京地方裁判所の判決

 差し止め及び二次利用の禁止は認められました

 原告が求めた権利の内容は、①プライバシ権の侵害、②名誉権の侵害、③差別されない権利の侵害です。地裁が認めたのは、①と②のみでした

地裁が想定するプライバシ-権はきわめて狭いものです現在、「プライバシ-権は、「誤情報を訂正する権利」や「自己の情報コントロールする権利」を含む考えられています

地裁は、「カミングアウト」と「アウティング」の違いにも、鈍感です。「カミングアウト」は、自分の秘密を、打ち明けたい相手に自ら話すことで、自己の情報コントロール権です。「アウティング」は、当事者の秘密を本人の同意なく暴露(晒す)ことです。地裁判決は、被差別部落に住所本籍を置いていることを広く知られている原告には、プライバシー権の侵害がないと判断したのです。その情報を載せることを承諾した原告は、一人もいないにも関わらず。

 また、差し止めの範囲は、地名が掲載された41都府県のうち、25都府県に限定されました

 損害賠償も一人110万円を求めていましたが、5500円~4万4000円でした人生を左右されている被害であるにもかかわらず、それは、クレジットカードの顧客情報の漏洩のケースの標準額でした

 

4.控訴審で力を入れた点

・改めて、「部落差別」の実状、特に身元調査について、裁判所に理解させること。

・差し止めが認められなかった都府県での、「被害」の立証をすること

・「差別されない権利」の重要性について再確認すること

・情報コントロール権について「法解釈の常識」であること強調する。                      

「最高裁での完全勝利を!」

などです。

 

5.東京高等裁判所の判決

1)判決の論理構成の流れ

  控訴審の判決は、第一審提訴から7年を経て、2023年6月28日に出され、原告の主張を大幅に認める画期的なものでした。

 判決の構成の流れは、以下のようです。

・部落差別の実状について、同和3法、部落差別解消推進法の制定過程や意識調査を分析して地裁判決に大幅に加筆しました

・部落差別の甚大な被害について、制度上はなくりましたが、心理的差別の根深さ、影響の甚大さの被害を明快に認めました。

・インターネットの普及により、インターネットの識別情報の適示を中心とする部落差別の事案は増加傾向にあります。実際に不当な扱いを受けるに至らなくても、不安を抱き怯えるなど平穏な生活を侵害されること指摘。その意義は大きです

差別されない権利は、憲法13条「すべて国民は個人として尊重され…」、憲法14条「すべて国民は法の下に平等…」に基づく権利であると、はっきり認めました

・プライバシー権・名誉権の侵害も、人格権の侵害と重複するものであると認めました。

・差し止めについては、地名が掲載されている41都府県を求めましたが、地裁判決より  6都府県が追加され、31都府県となりました。しかし、原告のいなかった10都府県では認められませんでした。

これは損害賠償を求める民事訴訟の限界です。河村弁護士は、このからも、「包括的差別禁止法」の必要が痛感される強調されました

・損害賠償額も、わずかに増額となりました。

 

2)控訴審判決の特徴

差別されない権利正面から認めました。憲法13条、14条に由来する権利であること明言されました

インターネット上での、差別情報の氾濫を踏まえた判断われました

*差別の恐れは差別者の主観によって生ずるもので、被差別部落出身でなくても、そうみなされる差別があります。「現在の住所本籍過去の住所本籍親族の現在・過去の住所本籍が、被差別部落にある原告まで拡大し、「系譜を有する」ことによる差別も認定しました。

 

6.裁判が浮き彫りにしたこと。


*「人格権(人格的利益)」について日本の民法では、被害への損害賠償は金銭賠償が原則です。例外的に認められきたのが、「原状回復措置」で、その理由が人格権侵害です   人格権としての「差別されない権利」侵害が認められたら、「差し止め」を求めることが出来ることになります

*差別と戦い続けることの重要性

*他の「被差別」当事者との連帯の大切

などです

 

7.最高裁で完全勝利を

原告、被告の双方が最高裁に上告しました。裁判の日程などは未定です。

高裁が良い判決の時は、最高裁の揺り戻しがあると言われたりします。

しかし、「差別されない権利」を高裁が認めたインパクトはあります。今後権利内容の深化をさらに追及していく予定です。

 

以上のような、河村弁護士の講演は、他のいろいろな差別裁判にも通じるものがあり、  とても充実した内容でした。会場から質問や意見が次々続き、講師から多様な経験をしている人と意見交換できるのが参考になり楽しいとの発言がありました。集会参加者は40名弱でしたが、活発なやりとりが行われました。


主催者:閉会の言葉

 

実行委員会では、「包括的差別禁止法をつろう!」に今年のテーマを絞って、パレード集会をっていく予定です。

 

(まとめ・文責 高木澄子   写真 金朴優綺)

2024年2月27日火曜日

第38回学習会 差別されない権利 ~差別が禁止される社会づくりに向けて~

第38回学習会 差別されない権

~差別が禁止される社会づくりに向けて




昨年12月、毎年世界人権デーにちなんで行ってきた私たちの集会は「包括的差別禁止法を作ろう」というテーマでした。


メイン講演をいただいた前田朗さんは、講演の中で、

「 2023年6月、被差別部落の出身者たちが全国の被差別部落の地名を暴露する書籍の出版や  ネット公開の差し止めを求めた訴訟で、東京高裁は初めて「差別されない人格的利益」を認めた 」

ことを紹介してくれました。


 この判決は、差別禁止法がないために差別を受けても声を上げづらい日本社会において、差別を禁止する社会づくりに向けた重要な意義を有します。


今回の学習会ではこの裁判の弁護団として活躍された河村健夫弁護士から、「差別されない権利」について詳しくお話していただきます。差別のない社会の実現に向けて、ともに学びましょう。


*チラシはこちらからご覧ください。


♦ 日時: 2024426 18:3020:30 (開場18:10)


♦ 会場 飯田橋 東京ボランティア・市民活動センターA.B会議室


JR総武線・飯田橋駅に隣接する 「飯田橋セントラルプラザ」 

https://www.tvac.or.jp/tvac/access.html


講演 河村 健夫 弁護士    


かわむら たけお べんごし

 弁護士経験22年。むさん社会福祉法律事務所。 鉄建公団訴訟(JR採用差別事件)といった大型勝訴案件から個人の解雇案件まで労働事件を広く手がける。社会福祉士と共同で事務所を運営し 「カウンセリングできる法律事務所」を目指す。大正大学講師(福祉法学)。


◆ 資料代 500円 学生無料


♦ 申込不要です。当日は直接会場にお越しください。




主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

連絡先:長谷川和男 090・9804・4196

   [Eメール] jinkenkankokujitsugen@gmail.com   

   [ブログ] https://jinkenkankokujitsugen.blogspot.com/


2024年2月14日水曜日

【お知らせ】映画「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映支援について

【お知らせ】映画「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映支援について

国連・人権勧告の実現を!実行委員会よりお知らせです。 


「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映支援活動は終了しました。


皆様のご協力により、10団体に支援金をお届けすることができました。10団体になりましたので、これで終了とさせていただきます。


なお、改悪された入管法が間もなく施行されてしまいます。最後まで反対の意思を伝えていきましょう。