6、強制動員被害者の人権、尊厳の回復を!
矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動)
ILOの条約勧告適用専門家委員会が、日本が戦時中に行った朝鮮人・中国人の強制連行・強制労働
を、強制労働条約違反(ILO29号条約)と認定したのは1999年でした。専門家委員会は、「本委員会
はこのような悲惨な条件での、日本の民間企業のための大規模な労働者徴用は、この強制労働条約違反
であったと考える」と判断したのです。そして、「日本政府が自らの行為について責任を受け入れ、被
害者の期待に見合った措置を講ずるであろうことを確信する」と述べました。29号条約違反という重大
な人権侵害を行ったのだから、被害者に補償すべき、日本政府はそうするだろう、と言ったのです。
しかし、それから四半世紀以上が過ぎましたが、日本政府は何もしていません。「戦時中だったのだ
から…」「当時は日本人だったから…」と言って、無責任を決め込んでいます。
韓国の最高裁(大法院)は2018年、強制動員被害者の訴えを認め、日本企業に賠償を命じる判決を出
しました。韓国最高裁は、日本は朝鮮を植民地にしておいて、自分たちが勝手に始めた侵略戦争を遂行
するために韓国人を強制的に動員して働かせ、肉体的・精神的被害を与えるという反人道的不法行為=
人権侵害を行った、被害者には慰謝料を請求する権利がある、賠償を求めるのは当然である、と判断し
たのです。これに対して、日本政府、企業は事実を認め、謝罪することもなく、ただ「請求権協定で解
決した」と空疎な言葉を繰り返しているだけです。
本当にこれで良いのでしょうか?この国(政府、企業)が人びとに対して人権侵害を働いた例は枚挙
に暇がありません。原爆被爆者、空襲被害者、沖縄戦被害者等の切り捨て、水俣病等の公害、ハンセン
病患者への差別、優生保護法による強制不妊手術、……。どれひとつまともに被害者の人権回復は図ら
れていません。そして、植民地出身者に対しては更に不条理な仕打ちがなされています。
今この国の政権与党の党首は、「(先の大戦について)私自身は、当事者とは言えない世代ですから
、
反省なんかしておりません。求められるいわれもない」と言ってのける人です。この人は、総裁選の中
でも根拠のない言説に基づいて排外主義的発言を繰り返していました。それでも党首に押し上げられた
のです。これがこの国の政権与党の実態です。
でも負けるわけにはいきません。かつて外務次官を務め、ICJ(国際司法裁判所)所長の任にも就
いておられた小和田恒さんは、「韓国との関係は、慰安婦、歴史問題など今日に至るまで解決していな
い」と明言されています。こういう方もいるのです。
私たちはこれで良いのか、こうみんなに問いかけ、対話していく中で、過去の植民地支配下での強制
動員など人権侵害問題を解決していく道を開いていきたいと思います。ともに頑張りましょう。ファイ
ティン!