2025年10月28日火曜日

 自民党総裁になった高市氏は、97年の法務委員会で民主党案について「高齢化、少子

化、犯罪の低年齢化、こういった問題に悩む今の時代こそ、家族の絆が大切」「我が国の

家族と社会に取り返しのつかない影響と混乱をもたらす」「通称使用をオーソライズする、

これで事足りる」と改正に反対しました。28年も前のことです。夫婦同姓を強制して、少子

化や高齢化、教育の充実ができたでしょうか。世の中の問題が、選択的夫婦別姓を認め

ないことで全て解決するかのような詭弁を弄してきたのが高市氏です。高市氏は、選択的

夫婦別姓が実現しそうになると、別姓反対のツールとして「通称使用」論を持ち出していま

す。

さて、選択的夫婦別姓を求める請願が初めて提出されたのは、50年も前の1975年です

。国民の請願権は、憲法で保障された基本的人権の一つです。過去の請願は十分な審

査もされず、国会会期末に不採択にされてきました。国連の各人権委員会からも繰り返し

是正勧告されています。

国会では、「人権政策」は重視されていません。人権に関する法整備は多くの場合、強

い使命感を持つ議員が、党内調整や官庁との折衝に汗をかき、実現させてきました。しか

し、選択的夫婦別姓は長い間、使命感とは関係のない「政局」という力学の中で、政治的

な駆け引きの手段にされてきたという不幸な歴史があります。人権の問題は政局にせず

、党派を越えて最優先で解決するべきです。

選択的夫婦別姓は当事者だけの問題ではありません。国家観や歴史観に深く関わっ

ています。保守派には、国家の最小単位は家族だという価値観が存在します。国家が「

元首」を頂点としたヒエラルキーによって支えられるように、家族も「家父長」の姓で統一さ

れた三角形で構成されるべきだという考えが、根強く残っています。こうした価値観は、妻

という一個人に、姓を変える不便さや、不利益という「犠牲」を押し付け、それを家族の絆

、といった言葉で美化しているにほかなりません。

ある学生から「選択的夫婦別姓は大きな問題ではないと思う」と言われたことがありま

す。選択的夫婦別姓は、たとえ誰かが別姓を選択したとしても、他の人に害は及びませ

ん。ですから「あなたにとって大きな問題ではないかもしれないけれど、実害がないのだ

から困っている人に協力してくれないか」と話すと「目からうろこが落ちました」と賛成してく

れました。

漠然と「同姓がいい」と考える男性の多くは、「自分の姓は変わらない」ことを無意識の

うちに前提としています。しかし「妻が姓を変えたくないなら自分が変える」という覚悟のな

い人が、別姓に反対するのは傲慢ではないでしょうか。

選択的夫婦別姓は人権の問題です。結婚を機に膨大な名義変更作業に追われ、結婚

や離婚で姓が変わることに悩む女性はたくさんいます。人権問題を「遠い話」と考える人

も多いです。困っている人を法的に救済するには多数派のコミットが不可欠です。

今、衆議院で継続となっている民法改正案は、高市内閣なら廃案の可能性が高いです


。選択的夫婦別姓の実現は、多様な社会や少数者の意見が尊重されるかどうかの試金

石です。多くの人に賛同いただき、民法改正を実現させるために手を携えて頑張りましょ

う。