5、日本軍慰安婦問題
木瀬慶子さん(戦時性暴力問題連絡協議会)
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の木瀬です。
首都圏では、「慰安婦」問題解決のために活動しているグループが集まって、戦時性暴力問題連
絡協議会というネットワークを作っています。この連絡協議会では、韓国での毎週の水曜行動に
連帯して、毎月第3水曜日に、新宿南口ひろばでのアピール行動を行っています。
「慰安婦」問題では、国連人権機関からの日本政府に対する勧告が今日まで何度も行われていま
す。女性差別撤廃委員会は1994年以来あわせて5回、ILO専門家委員会は16回、その他にも国
連人権委員会、拷問禁止委員会、人種差別撤廃委員会、等々30年間にわたり日本政府に勧告が
出されてきました。
特に昨年12月の女性差別撤廃委員会総括所見では、国際法では「戦争犯罪と人道に対する犯罪
には期限がないという原則」を日本政府に突き付け、被害者に謝罪と賠償を行うよう強い内容で
勧告しました。
そして今年の7月17日、国連人権理事会が任命した「女性に対する暴力特別報告官」8名が、韓国
、フィリピン、中国など被害国6カ国と、日本政府に、公式書簡を送付しました。
その日本政府への書簡では、〝80年以上が経過した今もなお、(日本政府は)日本軍「慰安婦」被
害者に誠実に向き合う態度が欠如していること、被害事実を公式に認定すること、真相解明、法
的賠償、被害者の裁判権保障〟などを求めています。韓国、中国、オランダ、インドネシアなど
生存している被害者の訴えを直接聞いて、これまでの経緯や国連での審査状況を検討したとのこ
とです。
しかしこれに対して日本政府の回答は、許しがたい内容でした。1965年の日韓請求権協定や2015
年の日韓「合意」などで全ての問題が解決されていると繰り返し、世界各国に建立されている「
平和の少女像」などについて「日本の立場と相いれない」とあからさまに像の建設を妨害する姿
勢を改めて表明する態度を繰り返しました。2020年9月にドイツのミッテ区に建てられた「平和
の少女像」は、地域に根ざした女性への性暴力をも克服するための像として「アリ」という愛称
で公共地域に建てられました。ミッテ区の「アリ」は、今も日本政府からの圧力によって撤去・
移転の強要を受けており、地域の方々は今、必死になって仮処分申請で闘っています。
こうした日本政府の態度は、「強制連行はなかった」「(「慰安婦」は)性奴隷ではない」とい
う第2次安倍政権のときに「外交青書」で定式化され、政府自らが歴史否定を公然と行うことに根
拠があります。
今年の6月にも日韓の市民団体で日本政府の態度を問いただし、被害者の手紙も渡しましたが、全
く聞く耳を持たず、「外交青書の〇〇ページを読め」という横柄な返答だけが帰ってきました。
許されません。
しかも今度の自民党総裁になった高市早苗は、1997年から教科書への「慰安婦」問題への記載を
否定してきた人物であり、絶対に許せません。
日本軍「慰安婦」被害者は存命の方は少なくなってしましたが、しかし今もって加害者から謝罪
もないという被害者たちの屈辱と苦痛は胸に積み重なっています。日本軍「慰安婦」問題は終わ
っていません。一日も早い解決を願って私たちは日々活動しています。
加害の歴史に向き合わない日本政府による歴史否定は、差別・排外主義に結びつき、官制ヘイト
となります。いまも韓国の「平和の少女像」の前で汚い言葉でののしっているコンクリート右翼
・レイシストは、日本政府の態度を借りて自己を正当化しています。絶対に許すことはできませ
ん。
日本にはヘイトスピーチ解消法はあっても、反差別の明確な規範もなく、実効性もないため、差
別・排外主義が横行しています。
私の住む川崎では、今月10月26日に市長選挙があり、今日が告示日ですが、そこでも差別・排外
主義の候補者がでて、選挙の名のもとで公然と差別をふりまくという状況になっています。差別
を許さず人権のある社会とするために、私たちは、個別課題の解決とともに、みんなが連帯して
闘うことが必要だと思います。