2024年2月27日火曜日

第38回学習会 差別されない権利 ~差別が禁止される社会づくりに向けて~

第38回学習会 差別されない権

~差別が禁止される社会づくりに向けて




昨年12月、毎年世界人権デーにちなんで行ってきた私たちの集会は「包括的差別禁止法を作ろう」というテーマでした。


メイン講演をいただいた前田朗さんは、講演の中で、

「 2023年6月、被差別部落の出身者たちが全国の被差別部落の地名を暴露する書籍の出版や  ネット公開の差し止めを求めた訴訟で、東京高裁は初めて「差別されない人格的利益」を認めた 」

ことを紹介してくれました。


 この判決は、差別禁止法がないために差別を受けても声を上げづらい日本社会において、差別を禁止する社会づくりに向けた重要な意義を有します。


今回の学習会ではこの裁判の弁護団として活躍された河村健夫弁護士から、「差別されない権利」について詳しくお話していただきます。差別のない社会の実現に向けて、ともに学びましょう。


*チラシはこちらからご覧ください。


♦ 日時: 2024426 18:3020:30 (開場18:10)


♦ 会場 飯田橋 東京ボランティア・市民活動センターA.B会議室


JR総武線・飯田橋駅に隣接する 「飯田橋セントラルプラザ」 

https://www.tvac.or.jp/tvac/access.html


講演 河村 健夫 弁護士    


かわむら たけお べんごし

 弁護士経験22年。むさん社会福祉法律事務所。 鉄建公団訴訟(JR採用差別事件)といった大型勝訴案件から個人の解雇案件まで労働事件を広く手がける。社会福祉士と共同で事務所を運営し 「カウンセリングできる法律事務所」を目指す。大正大学講師(福祉法学)。


◆ 資料代 500円 学生無料


♦ 申込不要です。当日は直接会場にお越しください。




主催:「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会

連絡先:長谷川和男 090・9804・4196

   [Eメール] jinkenkankokujitsugen@gmail.com   

   [ブログ] https://jinkenkankokujitsugen.blogspot.com/


2024年2月14日水曜日

【お知らせ】映画「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映支援について

【お知らせ】映画「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映支援について

国連・人権勧告の実現を!実行委員会よりお知らせです。 


「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映支援活動は終了しました。


皆様のご協力により、10団体に支援金をお届けすることができました。10団体になりましたので、これで終了とさせていただきます。


なお、改悪された入管法が間もなく施行されてしまいます。最後まで反対の意思を伝えていきましょう。


2023年12月28日木曜日

【開催報告】国連・人権勧告の実現を! 〜すべての人に尊厳と人権を〜 第11回 包括的差別禁止法をつくろう〜海外の動向も踏まえて〜

 【開催報告】

国連・人権勧告の実現を! 〜すべての人に尊厳と人権を〜

第11回 包括的差別禁止法をつくろう〜海外の動向も踏まえて〜


12月10日の「世界人権デー」前後に毎年行う、「国連人権勧告の実現を!実行委員会」主催の集会は、今回が11回目となった。集会タイトルは、まさに国連からずっと勧告を受けている「包括的差別禁止法をつろう!」である。

国会開会中の12月7日、衆議院第1議員会館で行われ、20名の国会議員からアピールが届き、当日参加の7名の議員からは力強い連帯の挨拶があった。主催団体、参加者、国会議員、皆が「包括的差別禁止法をつくろう!」との思い・決意を新たにした集会だった。


<基調講演>

「包括的差別禁止法を作ろう!-海外の動向もふまえて-」

 講演は、前田朗さん(朝鮮大学校法律家講師)

初めて「差別されない権利」が認められた判決

最大のポイントは「差別されない権利」です、と話は始まった。2013年に「ヘイト・スピーチ」が流行語に。2016年に「ヘイト・スピーチ解消法」が成立した。しかし、差別を禁止していない。2019年3月成立の川崎市「ヘイト禁止条例」には処罰が導入されたが、まず勧告、次に命令、3番目に命令に反し差別を繰り返すと50万円の刑事罰となる。

世界193ケ国中、150ケ国に「ヘイト・スピーチ禁止法」がある。当然、最初から犯罪となる。

「差別されない権利」について、裁判判例からその経過をみる。2021年9月27日の「全国部落調査復刻版差止訴訟第一審判決」では、「原告らの権利の内実は不明確であって…権利が侵害されているのか、判然としない。」と権利性を認めなかった。2023年6月28日の東京高裁の控訴審判決で「憲法13条の個人の尊重、14条の法の下の平等から、人は誰も不当な差別を受けてはならない」と、日本の裁判史上初めて「差別をされない権利」が、認められた。それは憲法学者というより、248名の原告と弁護団の努力の積み重ねによるものであった。


条約締約国の義務と日本政府の姿勢

国連は「人種差別撤廃条約」を1965年に採択。日本は30年後の1995年に批准した。

条約締約国には、差別撤廃を実現するために、①尊重する義務、②保護する義務、③実現する義務がある。①は、国家が差別的な政策をしない、差別をもたらす法規制などは、修正または無効にする義務。②は、差別から保護するため、特別法や政策をつくる義務。③は具体的な措置を講じ、それには、歴史的に不利益を被ってきた人々への積極的是正措置の義務も含まれる。

NGOでは、「人種差別撤廃NGOネットワーク」の連絡組織をつくり、共同でレポートを作成し国連に提出し、日本政府報告審査時には、国連に赴きロビー活動を行ってきた。

国連の人種差別委員会は、日本審査後の2001年、2010年、2014年、2018年の4回、日本政府に対し、「差別禁止法の制定と国内人権機関の設置」を勧告した。しかし日本政府は、いずれも拒否。2016年に「ヘイト・スピーチ解消法」を作ったせいか、2018年には、「我が国にも人種差別はあるが、そのための法律が必要なほどではない」と言った。

「ヘイト・スピーチ解消法」には、処罰や救済がない。人種差別撤廃条約第7条には、「締約国は、人種差別につながる偏見と戦い…」とある。中立では駄目。戦って、教育、文化、情報などの分野で効果的な措置をしなければいけない。また、条約第6条には「自国の裁判所及び他の国家機関を通じて…」と、国際機関も射程に入れている。しかし日本政府は、国際救済機関への「個人通報制度」を、一つも受け入れていない。

差別禁止法、国内人権機関の設置、個人通報制度の要件を備えた包括的差別禁止法を、ぜひつくって行きたい。


今年は関東大震災の大虐殺から100年。「ジェノサイド条約」は、国連で1948年に採択されたが、日本は批准をしていない。ジェノサイドは重大犯罪で、実行行為者のみならず、上官の責任も問われる。1923年の大虐殺のみでなく、植民地支配からの文化ジェノサイドも含め140年続いている、との補足もあった。

 

<特別報告>

1、「関東大震災100年の年に」   田中宏さん(外国人・人権法連絡会共同代表)


 100年前の東京帝国大学新聞(1923.11.29)には、朝鮮人留学生尹泰東の「…朝鮮人を殺すことを以て日本国家に対する大いなる功績と思って居たように見える。…」とある。

当時すでに在職し、戦後初代総長になる南原繁は、「外地異種族の離れ去った純粋日本に立ち返った今、天皇制も失うなら日本民族の歴史的個性と精神の独立は消滅する…」と演述(1945.4.29.)。2代目総長の矢内原忠雄は、「日本はもう植民地はなくなったから、植民政策論を国際経済論に変えた」との認識を示した(1958.2)。

2008年の中央防災会議の報告書には、「武器をもった多数者が、非武装の少数者に暴行を加えた挙句殺害するという、虐殺という表現が妥当する例が多かった。…過去の反省と民族差別の解消の努力が必要」とある。

 2021年、バイデン米大統領は、100年前の黒人虐殺事件の地を訪れ「暗闇は多くのものを隠すことは出来るが、何も消すことは出来ない」と発言。

2023年大虐殺から100年の今年、岸田首相、小池都知事からはこのような発言を聞くことはなかった。民間では、「関東大震災被害者虐殺者の追悼と責任者追及」等の大きな集会が各地で開催された。国会での野党議員からの質問に対し、政府統一見解として、「政府内に事実関係を把握できる記録が見当たらない…」というのみ。政府が何もしないということは、とても大きな問題であると話しをまとめた。


2、「入管難民法の問題とこれから」   織田朝日さん(SYI=収容者友人有志一同)

 東京オリンピック開催が決定した2013年から、在留資格のない外国人を追い出す政策が強化された。難民申請者であれ、どんな事情があろうと、容赦なく強制収容され、時には送還もされた。2018年、法務省入管局が各地方入管に、「送還の見込みが立たなくても収容に耐えがたい傷病者でない限り、送還が可能となるまで収容を継続し、送還に努める」と通告が出され、拘束の長期化、職員による暴力なども増えた。2019年、長崎県大村入管で3年7ケ月収容の末、ナイジェリア男性が餓死という事件が起きた。

2021年には世論の反発で廃案になった「改正」入管法が、今年6月には成立した。その内容は、これまで何度も出来た難民申請が3度までになり、送還を拒否した場合は、刑事罰に課せられる。犯歴がつけば、難民と認められることはほぼ不可能となる。管理人制度も導入された。入管が決めた管理人(例えば支援者や弁護士)が、逐一仮放免者の動向を報告し、怠れば罰則がある。これは当事者と支援者の間に分断をつくる。

交流しているクルドの子どもたちは、皆、日本に残って頑張りたいと言う。8月に入管は、日本で生まれ、学校に通う18才未満の子どもたち140人と親に、特別在留資格を与えると言ったが、まだビザは出ない。さらに、幼少期に来日した子どもや親が、対象にならないのは大きな問題だ。府立施行の6月まで、あと半年。子どもたちがこれ以上苦しめられないよう、私たち日本の大人が頑張らなければいけない。協力をお願いします、と呼びかけ話を終えた。


3、「朝鮮学校差別の今」   朴金優綺さん(在日朝鮮人人権協会事務局)

 朴金さんは最初に、毎年この問題で同じ報告をしなければならないのが大きな問題、と話し始めた。正面の画面に、分かり易く図式化した「在日朝鮮人に対するヘイトのピラミッド」を映し、底辺の広がりから三角の頂上まで、5段階の差別のピラミッド構造を説明していった。

底辺の①は、「先入観に基づく態度」。ネット上のデマを信じるなど、無意識の差別や偏見。②は、「偏見に基づく行為」。「チョン」などの差別用語を言う、からかい・いじめなど。③は、「差別行為」。高校無償化制度、幼保無償化制度、自治体の補助金からの朝鮮学校除外、ヘイト・スピーチなど。④は、「暴力行為」。朝鮮学校生徒へのチマチョゴリ切り裂き事件。暴行事件などのヘイト・クライム。⑤が、ピラミッドの頂上の「ジェノサイド」。軍隊、警察、民衆による関東大震災時の朝鮮人虐殺。

 日本政府は、③の差別行為を自ら行っており、差別禁止法が出来れば、差別を行っている日本政府が、まず問われる。そのため、政府は差別禁止法を作らないのではないか、とするどく日本政府の態度を指摘した。

今年1月に行われた国連人権理事会のUPR(普遍的定期的審査)第4回日本審査にて、朝鮮民主主義人民共和国が日本政府に対して、朝鮮学校に対して「授業料無償化措置」「就学支援金制度」およびその他の補助金支給を差別なく適用し、平等な扱いを確保するための措置を講じることを勧告した。それなのに、日本政府はこの勧告を「受け入れない」と回答した。包括的差別禁止法の制定についても3カ国が勧告したが「留意する」と回答、現行法で対応できるとの見解を示した。

 日本政府は国際社会に対しては人権を尊重すると表明しながら、国内では「高校無償化」除外問題などの人権侵害の主体となっており、ダブルスタンダードである。これを批判し、早急に勧告を履行するよう求める声を上げていく必要がある。

  朝鮮学校は、在日朝鮮人に対する先入観や偏見を正す機能を持つ、ヘイトのピラミッドを打ち崩す場としても存在する。朝鮮学校に対する差別・暴力を止め、あらゆる差別や暴力のない社会をつくっていきましょう、と力強く呼びかけた。


4、「緊急アピール」   多原良子さん(先住民族アイヌの声実現!委員会 代表)

 多原さんの緊急アピールは、ビデオメッセージで行われた。学校では虐められ、職場では差別され、結婚してもちゃんと名前を呼ばれなかったと、話し始めた。アイヌ女性だけで集まって話し合う場を持った時、 民族差別、家父長制、マイノリティーの複合差別の話がたくさん出た。アイヌ協会に入って活動した。 2019年に、「アイヌ新法成立」。

2003年、2009年、2019年に国連の会議に参加し、先住民族の権利を 訴えた。

自民党の杉田水脈衆議院議員は、ブログなどでアイヌ事業関係者を「公金チューチュー」」などと揶揄。多原さんは、札幌法務局に多くの証拠と共に、人権救済を申立てた。札幌法務局は、「人権侵犯」と認定。また内閣官房アイヌ総合政策室は、「助成事業の不正経理はない」と言った。それにもかかわらず、差別発言を繰り返している。来年2月には、院内集会を行うと告知した。 


 会場参加の、谷口滋さん(同委員会事務局)から補足があった。

人権侵犯を訴えるのは、本当に大変。杉田議員は守られているので、多原さんへのヘイトを繰り返し、増幅している。今後ともしっかり取り組んで行きたい。「アイヌ施策見直しに関する請願」の署名活動を行っているので、協力をお願いしたいと話した。


 予定時間をオーバーし、最後に司会の池田さんが決議文を読み上げ、90名ほどの参加者一同の拍手で賛同し、集会を終えた。

<会場参加でご挨拶頂いた国会議員 7名> 

左から高良鉄美さん(参・沖縄の風)、古賀千景さん(参・立憲)、鎌田さゆりさん(衆・立憲)、大椿ゆうこさん(参・社民)、福島みずほさん(参・社民)、打越さく良さん(参・立憲)、山添拓さん(参・共産) 


<当日配布冊子にメッセージをお寄せ頂いた国会議員20名>

阿部とも子さん(衆・立憲)、逢 坂 誠 二さん(衆・立憲)、岡本あき子さん(衆・立憲)、      小川淳也さん(衆・立憲)、鎌田 さゆりさん(衆・立憲)、菅直人さん(衆・立憲)、         くしぶち万理さん(衆・れいわ新選)、近藤昭一さん(衆・立憲)、もとむら 伸子さん(衆・共産)、柚木道義さん(衆・立憲)、石垣のりこさん(参・立憲)、石川大我さん(参・立憲)、大椿ゆうこさん(衆・立憲)、紙智子さん(参・共産)、吉良よし子さん(参・共産)、田島麻衣子さん(参・立憲)、福島みずほさん(参・社民)、舩後靖彦さん(参・れいわ新選)、水岡俊一さん(参・立憲)、山添拓さん(参・共産)


( まとめ:高木澄子  写真:石川美紀子)

2023年11月8日水曜日

国連・人権勧告の実現を! 〜すべての人に尊厳と人権を〜 第11回 包括的差別禁止法をつくろう〜海外の動向も踏まえて〜

国連・人権勧告の実現を!
〜すべての人に尊厳と人権を〜

第11回 包括的差別禁止法をつくろう〜海外の動向も踏まえて〜


  日本には未だに人種差別や性差別を禁止する法律がありません。政府から独立した国内人権機関も なければ、国連の人権条約機関への個人通報制度もありません。

 国連の各種人権条約機関は、日本政府に対して、差別禁止法・国内人権機関・個人通報制度を備えること を繰り返し勧告してきました。しかし、日本政府はそれらの勧告を無視し続け、差別による被害を放置し続けて います。様々な差別が野放しにされた状態であり、差別を受けた人々は、多大な労力をかけて現行法制度の 枠内で闘うか、あるいは泣き寝入りすることを強いられています。

 私たち「国連・人権勧告の実現を!-すべての人に尊厳と人権を-実行委員会」は、このような日本社会を 変えるべく、様々な人権問題に取り組む個人や団体が連帯して活動しています。毎年、12 月 10 日の「世界 人権デー」前後に、すべての人の人権を尊重する社会づくりを考えるための集会を開催しています。

 今年は、東京・永田町の議員会館にて、包括的差別禁止法について学び、考える時間を持ちたいと思い ます。また、日本の人権課題についての特別報告もあります。ぜひ奮ってご参加ください。


●日時 2023年 12月7日(木) 午後5時〜7時30分

(通行証配布・受付開始 午後4時30分より)


●会場 衆議院 第一議員会館 1階 多目的室


●講師 前田 朗さん

朝鮮大学校法律学科講師、1955 年札幌生まれ。主著に『ヘイト・スピーチ法研究原論』『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『憲法 9 条 再入門』(以上三一書房) 『500 冊の死刑』(インパクト出版会) 『旅する平和学』(彩流社)。最新の編著は『ジャーナリストたち』 (三一書房)。

 写真は「バーミヤン遺跡で」(23 年 3 月)

●特別報告  ①朝鮮学校差別の今

      ②入管難民法の問題とこれから

      ③関東大震災100年の年に


●発言 ご出席の国会議員から

 

●資料代  500円(学生無料)

(今回は、賛同金を募集しませんので、資料代をお願いします)

  

●主催 「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会


●連絡先   090-9804-4196(長谷川)

[E メール] jinkenkankokujitsugen@gmail.com 

[ブログ] https://jinkenkankokujitsugen.blogspot.com/

2023年7月13日木曜日

報告 とんでもない閣議決定から 10 年 国連人権勧告を実現させよう

 とんでもない閣議決定から 10 年 

国連人権勧告を実現させよう

集会の報告

  国会閉会を翌日に控えた 6 月 20 日、参議院議員会館 講堂で集会を行った。主催団体として森本孝子さんは、 「今国会は、殺人法と言われる入管難民法、差別促進の LGBTQ 法、軍拡法など、とんでもない法律が 次々と成立した最低の国会。日本の人権状況を、 良くしていきたい」と、開会の挨拶をした。


<特別報告>

I、入管法改悪と今後の闘い 

鳥井一平さん:移住連代表理事

   「入管法改悪反対!国会前シットイン」に取り組んで、と鳥井さんは話し始めた。「Open the Gate for All」の黄色の T シャツを着て、2 ケ月の間、何度 も議員会館前に座り込んだ。参加した人たちみんなが表現する場所・広場で、あらたな出会いが あった。その場から、国会議事堂の会議場にむけてあげたシュプレヒコールは、議員から確かに届 いたと言われた。

署名は、廃案に追い込んだ 2 年の前回より、2 倍以上の 22 万以上集まった。

日本の移民政策の変遷は、高度成長期の人手不足の時はオーバースティーを容認し、さらに日 系ビザの導入(かつて南米等に移住した日系人の 2 世、3 世の受け入れ)、そして技能実習生制 度、その拡大、特定技能制度など、日本経済の状況に応じて変遷させてきている。

新型コロナウィルスは、問題を露わにした。農業は人手不足で技能実習生に頼ってきたが、コロ ナの中でそのローテイションがうまく行かず、多くの農産物が腐ってしまったのだ。

入管難民法改正(案)は、その国会審議の過程で、一人の難民審査参与委員に審査が集中して いた問題や、常勤医師の不祥事が発覚し、「改正」の根拠が崩壊しているにも関わらず、成立して しまった。鳥井さんは、「出入国管理庁の権威を示したいための“改定”でしかない」と言う。

今後移住連は、11 年後の改悪法施行に対して、対案を提出した野党との連携、2在留特別許 可の実現、3仮放免者・難民支援者の生活等の支援、4難民・収容に関するネットワーク再構築 に取り組んでいく、と力強く話した。

II、子ども基本法と朝鮮学校差別

 (1)金載成(きむ・ちぇそん)さん:朝鮮大学校政治経済学部法律学科3年

「私は、日本で生まれ育った20歳の青年です。日本人の20歳の青年と同じ 様に、日本の地で、日本のテレビを見て、日本の歌を聞き、日本社会で育ちま した。ですから一見、日本人の青年との差はなく、日本人として見られることも 少なくありません。

しかし私は紛れもない朝鮮人です。自身のことを何ひとつ躊躇せず、朝鮮人だと胸を張って言 います(拍手が湧く)。私は、自身の祖国、民族に対する強い誇りを持ち。朝鮮人としてのアイデン ティティーを持っています。日本の青年と変わらない環境で育った私が、どうして祖国を知り、自身 の民族的出自を知り、朝鮮人としての自分を愛することが出来るのでしょうか。

それは、まさしく民族教育があったからです。民族教育が私自身のアイデンティティーを確立させ、自身の人格を確立させたのです。民族教育があったからこそ、差別され、権利が侵害される日本 という国で朝鮮人として生きることをやめず、胸を張って生きてこれました。

私にとって民族教育とは、単なる教育権ではなく、自身のアイデンティティーを確立し、自身の人 格を形成する権利なのです。

民族教育権は、国際人権条約、子どもの権利条約、国際法、国内法で保障されている当たり前 の権利であり、人類史的に価値のある普遍的な権利です。

私はもうこれ以上、日本政府が、法と世界各国からの勧告的意見を無視し、マイノリティーの人 格権を侵害することがないように、こども基本法、東京都こども基本条例がその役目を果たすこと を信じています。子どもたちのために闘い続けていきます。共に、頑張っていきましょう!」

(2)李俏娜(り・そな)さん:朝鮮大学校政治経済学部法律学科 4 年 

「子ども基本法が制定、施行されたことをとてもうれしく思っています。民族教育 とは、単なる教育権にとどまらず植民地支配によって奪われた民族性を回復する 過程、在日朝鮮人としての自らの人格を形成する過程であり、それによって私たち は在日朝鮮人、朝鮮民族の一員としての誇らしき生を全うすることができるのです。 しかし日本社会で生きるためには、あらゆる差別や偏見、悪意や暴力と闘わねばなりません。

“北朝鮮のスパイどもを叩き出せ”“ゴキブリ朝鮮人”...。拡声器をもった大人たちが幼い生徒の通 う学校の目の前まで襲ってくるのを目にするのです。

なぜこのような差別や偏見、人権侵害がゆるされるのか。それはまさに、国家によって差別が助 長され、国家政策により国民感情が煽られているからに他なりません。

私は高校の 3 年間を差別との闘い、高校無償化適用を求める闘いに費やしました。ビラを配り、 マイクを握り、道行く人に訴えかけ、日本政府を裁判に訴えましたが、不当判決でした。

悔しく、やるせなく、在日朝鮮人として生きることの過酷さを知ると同時に、大きな確信を得まし た。それは、民族教育を守り、在日朝鮮人として生きる道にこそ正義があるということです。

このような正義があるからこそ、多くの日本の人々が賛同、連帯し、差別を許さず、闘いぬく社会 へ変わりつつあると思います。そしてこの度の子ども基本法の制定は大きく、決定的意義を持つも のであると思います。国籍条項を問わず、すべての子どもの権利を尊び、保障する、子どもの権利 条約の精神を日本社会で具現化されることを願っています。私自身も、よりよい社会を共に築い ていくため、闘い続けて行こうと思います。」

III 放送法と表現の自由

池田恵理子さん: 元 NHK ディレクター、元 wam 館長

国際 NGO「国境なき記者団」は、2023 年の「放送の自由度ランキン グ」を発表。日本は 180 カ国中 68 位で、G7 の中では相変わらずの 最下位。政治的圧力やジェンダー不平等などで、「ジャーナリストは、政 府に説明責任を負わせる役割を十分に発揮していない」と批判されている。

1950 年に制定された放送法は、戦前から政府の管理下にあったラジオが戦争協力のプロパガ ンダを続けたことを反省してつくられた法律。第 4 条(番組準則)では番組編集に、「政治的に公 平であること」を求めている。安保法制が議論されていた 2014 年、首相補佐官が、「TBS のサン デーモーニンングは、コメンテーターが全員同じ主張をしており、4 条に反する」と主張し、見直しを 迫った。2015 年、高市早苗総務相が、同様の見解を示した。

2016 年、国連人権委員会「表現の自由」担当の特別報告者のデビット・ケイ氏が訪日調査をして、20頁にわたる報告を出し、「政府は、メディア規制から手を引くべきだ」等と勧告をした。2019 年にもケイ氏は、「日本政府は勧告をほとんど履行していない」と批判している。

安倍政権は、猛烈な勢いで「戦争ができる国づくり」を進めるかたわら、「慰安婦」問題を無きも のにしようとした。2000 年、東京で開催された日本軍「慰安婦」制度を裁く民衆法廷「女性国際 戦犯法廷」には、海外メディア 95 社 200 人の記者が訪れ、トップで報じたが、日本のメディアの 扱いは極めて小さかった。女性法廷を取り上げた NHK の「ETV2001」は、法廷批判がめだつ異 常なものだった。後に、当時の安倍官房副長官らが、放送直前に NHK 上層部を呼びつけて改竄 させたことが明らかになった。NHK は「あべチャンネル」と揶揄されるほど、「政府の広報機関」と 化した。女性法廷の主催者は、真相を求め提訴。東京高裁では政治家の意を忖度して編集したと 認定し、NHK に 200 万円の損害賠償支払いを命じたが、最高裁では原告の請求は棄却された。

政府への忖度や自主規制は今も続いている。「慰安婦」問題ひとつを見ても、今や「慰安婦」の シンボルとなっている「平和の少女像」が、各国で建立される度に日本政府は圧力をかけ、つぶし ていく。それを日本のメディアは報道もしない。ジャーナリズムは政権を監視し批判する役割を担 っているのだが、日本のメディアはその基本を忘れているのではなかろうか。

「どんな小さな声でも伝えていくことを、連帯してやっていきたい」と、池田さんは報告を終えた。

<基調報告>

国連人権は高いハードルではない! ~すべての国が達成すべき共通の基準~ 

前田朗さん:朝鮮大学非常勤講師

人種差別条約を日本政府は 1995 年に批准。これまで 2001 年、2010 年、2014 年そして 2022 年の 4 回審査を受け、その都 度多くの「勧告」を受けてきた。毎回 NGO の一員として参加してきた前田さんの報告 は、多くの問題提起を含む学ぶことの多い報告であった。

★日本政府のダブル・スタンダード

前田さんは、「勧告」には、拘束力があるのか、ないのかという問題設定には あまり意味がない、と話し始めた。国際人権条約を批准した国々は、それを守るために、その担い 手として、協力していきましょう!と約束を重ねてきた。

日本政府は、国連で立候補し、理事国に相応しいと何度もアピールして、47 ケ国から成る国連 人権理事会のメンバーになった。そうなら、守るのが当たり前ではないか!

日本政府のダブルスタンダートを示す例として、「強制失踪委員会」の例を話したい。「強制失踪 条約」は、2006 年に採択された。国の機関等が人の自由をはく奪し、所在等を隠蔽し、法の外に 置くことを強制失踪と定義し、犯罪化、処罰を確保するための枠組みを定めている。日本政府は、 「拉致問題」に力を入れるとアピールをし、2018 年に報告書を出し、委員会に臨んだ。

ところが、強制失踪委員会は拉致問題を取り上げず、質問したのは日本軍「慰安婦」問題であっ た。日本政府代表団はパニック状態だったという。委員会からは日本軍「慰安婦」問題の解決を 求める勧告が出された。日本政府は改めて「条約以前の問題を委員会で取り上げるべきではない」 と猛烈な抗議の手紙を委員会に送った。拉致問題も「慰安婦」問題も、条約以前ことで同様であ り、2つともきちんと対応すべきである。

★「人として認められる権利」

なぜ日本は、人権後進国か?

日本国憲法の前文は、「日本国民」はで始まり、第 3 章で「国民の権利」が列記されている。 世界人権宣言、国際人権規約、人権憲章などには「人として認められる権利」が、基本的権利として謳われている。しかし、日本国憲法には、「差別されない」とはあるが、「人として認められる権 利」に対応する条文はない。「人間の尊厳」も、同様である。

このような国で、外国人の人権は守られるのだろうか? 多くのヘイト・スピーチがあるが、「人 間の尊厳」としては語られず、「表現の自由」として語られる。

前田さんは、問題は日本政府に国際人権法を遵守する姿勢が全くないことであるとし、委員会 が総論として指摘したことに、自身の見解を加えまとめとした。

1 憲法と法律が国際自由権規約に合致していない。裁判官、検察官、弁護士、法執行官等に国際人権法の研修を行う必要がある。日本の裁判官は、国際人権法に無知だから。

2 独立した国内人権機関の設置が必要である。多くの諸国には、専門の国内人権委員会があるが、日本にはない。

3 憲法 14 条は一般的な差別禁止を定めるが、差別禁止法がなく、委員会は、包括的な差別禁止法を求めている。これまで数々の国際人権機関が何度も同じ勧告をしてきたが、必要がないから作らないと拒否している。恥ずべき異様な差別大国である。 人権を尊重するのは、政治の意思の問題で、日本政府にはそれがないと明言し、報告を終えた。

残りの時間の会場発言で、田中宏さんは次のように話した。「3 点ほど問題提起したい。1外国 人登録令が、出入国管理法となった。人間に関する法律に“管理”とあるのは、おかしい。野党提 案の法にもある。国会でもそれを追求する人はいない。2住居の移転は 14 日以内に報告する義 務がある。しないと、日本人には5万円の行政罰、外国人には 20 万円の刑罰という差別がある。 3外国人の永住者等の「在留カード」は 7 年が有効期間、日本人のマイナンバーカードの有効期 間は 10 年という差別がある。これらの差別も是正していくべき」と。

最後に決議文が読み上げら れ、90 余名の参加者一同の 拍手で賛同し、集会を終えた。

<ご挨拶頂いた国会議員> 

 高良鉄美議員(沖縄の風・参)、山添拓議員 (共産・参)、水岡俊一議員(立憲・参)

 ※川田龍平議員(立憲・参)はチラシを置き資料を受取りご退室。 

※議員秘書参加:山添議員(上記)の折原さん、田島麻衣子議員(立憲・参)の矢下さん、 大椿ゆうこ議員(社民・参)の野崎さん、吉良議員(共産・参)の秘書の方、高良議員(上記)の 神田さん、水岡議員(上記)の藤野さん、阿部知子(立憲・衆)の小林さん、水野もと子議員 (立憲・参)の西塔さん。

( まとめ:高木澄子 写真:石川美紀子 )


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