2013年12月29日日曜日

集会ご参加の御礼

集会ご参加の御礼

 12月14日(土)に行われました「国連・人権勧告の実現を!」集会には、250名を超える多くの方々にご参加をいただき、盛況のうちに終えることができました。ご参加をいただきました方々には御礼を申し上げます。どうもありがとうございました!



 来年の1月にはデモも予定しておりますので、引き続きまして、大きなご支援をいただけましたらありがたいです。何とぞよろしくお願いいたします◎













 なお、集会の内容につきましては、IWJ(Independet Web Journal)のサイトからもご覧いただけます。
 
 また、荒巻重人さんと伊藤和子さんの発言については、本ページにてご紹介しています。


・国連人権勧告と日本
荒牧重人(山梨学院大学 教授)

私たちは、国連から様々に、また、何度も出されている人権勧告というものを実現させるということで結集し、広げていこうという取り組みを始めました。私からは「国連人権勧告と日本」というテーマで、全体的な報告をさせてもらいます。

様々な重要な意義のある国連人権勧告が何度も出されているのに、どうして日本政府は実現をしないのだろう、と何度も感じておられていると思います。そもそも人権条約は憲法よりは下位であるけれども、通常の国会で制定した法律より上位にあるわけです。ですから、人権条約に反する法律をつくることはできないわけです。にもかかわらず、特定秘密保護法はできてしまいました。ただし、できた法律でも、行政は、憲法や人権条約に即して運用しなければならないという枠がはめられるわけです。裁判所においても、相続における婚外子差別に関する大法廷決定(2013年9月4日)において、人権条約機関の勧告に言及せざるを得ない状況になってきています。

今日は、主要な人権条約に基づく人権条約機関の総括所見と、国連人権理事会が行う普遍的定期審査というものから出される勧告についてお話ししますが、主要には前者について述べたいと思います。

人権条約は、最も基本的な実施の仕組みとして、報告制度というものを持っています。政府は報告書を作る。それに基づいて公開の場で審査をする。そしてその結果、総括所見という懸念と勧告を出す。そして、それを国内で実現し、その実現状況をまた国連に報告する。このサイクルを繰り返すわけですね。

ところが、どの国の政府も、これは日本だけではありませんが、「自分の国の人権政策がこんなないひどい」と報告することはありません。ですので、NGOが非常に重要な役割を果たすわけです。わずか1日ぐらいの審査で、日本の人権状況が、国連の人権条約機関の専門家でもわかるはずがないわけです。しかし、非常に意義のある勧告が出されているのは、NGOが的確な情報と提言を国連に出しているからです。報告書を出す段階から、審査、フォローアップのすべてのプロセスにおいて、政府はNGOをパートナーにすることが期待されているのですが、残念ながら日本政府はNGOをそのようには位置づけてはいない。それどころか、こういう勧告は法的な拘束力がないので、従う義務はないということを言い放っているわけですね。ところが、判決のような法的な拘束力はないわけですが、報告制度が条約上義務づけられているので、この審査に基づいた勧告を誠実に履行しない限り、この報告制度は成り立たないわけです。その意味で、判決のような法的拘束力は仮になくても、勧告を誠実に履行する義務を負っていると言っていいわけです。

このことを世論にしていく必要があります。今はまだまだ世論になっていない。ここが非常に重要になっていくと思います。この間、主要な人権条約からすると、自由権規約、女性差別撤廃条約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約、拷問禁止条約、社会権規約などから、毎年のように勧告が出されている。しかも、とても内容のある勧告が出ています。それが十分に実現されていない。どうにかこのような状況を変えていきたい、というのが私たちの活動の趣旨であります。

この間、同じような勧告が何度も出されています。前回の勧告をちゃんと履行していないのではないか。これは実に恥ずかしいことなのですが、そのような勧告が必ずある。人権条約を実現するために、国内に独立した専門の人権機関をつくりなさいという勧告も出ている。個人通報制度という、国内で様々な取り組みをして、それでも十分に人権が保障されない場合に国際機関に申し立てをして、今の状況が人権条約に適合しているかを決定してもらい、もし人権規約に違反していることになったら、日本政府にそれを履行させる制度ですが、こをちゃんと批准しなさいという勧告が出されています。先ほど申し上げたこの主要な人権条約はすべてこの制度を持っています。

あと最近出ているのが、包括的な差別禁止法を作りなさいという勧告です。差別の禁止というのは人権保障の大前提です。さらに、子どもの権利条約や社会権規約条約等では、社会的資源や予算を、もっと人権のところに配分しなさいというところまで、勧告が出ています。さらに差別の禁止については、どの機関からも、子ども、女性、障害のある人、被差別部落の人々、朝鮮民族、アイヌ、琉球の人々、さらに難民、移住労働者、性的マイノリティ、こういった様々な分野における差別を禁止するよう勧告が出ています。「慰安婦」問題についても、いろいろな機関がこの問題は人権問題であると指摘しています。女性、子ども、障害のある人等々への暴力の禁止・防止、そして人身売買の禁止・防止、さらに、死刑の廃止等を含めた人身の自由、刑事手続きに対する権利など、こうしたことについても、ずっと、何度も、多様な機関から、普遍的に人権を侵害している行為なので、是正するよう求められています。

さらに共通しているのは、こうした人権勧告の普及を含めて、裁判官、政府の関係者、行政の関係者、公務員等に普及することを含めて、人権の啓発、研修、教育をしていきなさいという点です。みなさんは自分の関心のある分野の人権の勧告はご存知だと思いますが、他の分野についてはご存知ですか。外務省のホームページを見ないとわからない。いろいろな場面で知っていくことができるようにしないといけない。そうしたことも改善しないといけないということがずっと言われ続けています。
子どもの権利条約においては、学校のカリキュラムに、人権教育や子どもの権利条約に関する教育をしていきなさいと言われている。また必ず入るのが、市民社会やNGOと対話、協力していきなさいということです。このような勧告に対して、政府は軽視、不誠実な対応をしている。敵対的とも言えますが、ここではその言葉は控えておきます。そのような対応をしてきている。

国連に出されるのは締約国報告書です。外務省が中心となって関係省庁を寄せ集め、国内のその条約の人権状況を検証し、数年に1回、報告することが求められているのですが、実際にはそのようにやっていない。前回の勧告をどのように実施したかということも十分な報告をしていない。みなさんが知らない分野を知るときにはなかなかいいですよ。表面的な法制度がちゃんと書いてあるので。しかしながら実態がない。最も報告書で求められている内容がないわけです。そのとき、NGOとちゃんと協議することが必要なのですが、それもしない。以前は関係するNGOと外務省が日程を協議していた時代もありました。今は、一方的にホームページでやりますと言うだけで、しかも出て来る政府の担当者も、非常に経験の浅い若い人が出て来るということで、NGOとの対話も形式化しております。

さらに、審査にいたってはもっと問題で、建設的な対話とは程遠い内容です。用意した想定問答集に基づいてしゃべる、あらかじめ用意してあった報告書を繰り返す、さらにははぐらかす等々で、ジュネーブで傍聴していても、イライラしてくる。私たちが答弁した方が、日本の国際社会における名誉ある地位を、もっとあげるような答弁をできるくらいのことであるにもかかわらず、そのような答弁しかしないという現実があります。

そして、フォローアップの体制も実際に不十分。そして繰り返しますが、このことを私たちは乗り越えなくてはならない。政府は「勧告は法的拘束力を持つものではなく、従う義務はない。義務づけられていない」と言っています。政府のこの認識と実際を変えていく必要があります。

私は1980年代の終わりから、この報告制度に関わっています。最初はNGOがレポートを出して、委員が質問してくれたことを喜んでいました。その次は、私たちが提案したことが勧告に取り上げてもらって喜んでいました。でも実際に現実は変わらない。いかにこのあとが大切か、いかに勧告を実現させることが必要かということを知りました。

その意味では、NGOが国連に提供する情報の質、方法やレベルも上がっています。格段に進歩していると言っていいと思います。さらに、それぞれの分野の主要なNGOがネットワークを組むということもずいぶん広がってきている。このNGOの方向性というものを今後も引き続き伸ばしていくことが最も重要なことではないか。この現状を変えていくため、それぞれのNGOが、結集する場面と拡散していく場面を、より作っていかないといけないと思います。そうしたNGOの取り組みを伸ばしていくことが最も重要なことだと思っています。

NGOはそれぞれの分野で一生懸命やっている。それぞれの質は進展している。にもかかわらず、現実を変えることができない。だからこそ、この取り組みを一層進めていく必要があるのだろうと思います。

子どもの権利条約の場合、2014年が批准20周年となります。今年、来年、ポストという3年間で、このような取り組み、子どもの権利条約というのを冠にして機関紙の特集を組んだり、学習会を持ったりしていこうと思っています。そして地域別のフォーラムとかテーマごとのフォーラムを開いていこう、そして、子どもの権利宣言を改めてしていこうということを呼びかけています。また、地域レベルでは、子どもの権利条約をベースにした条例作りというのが、少しずつ進んでいます。そういう地域レベルでの取り組みも進めていきたいと思っております。

最後に、NGOは自分たちの取り組みを社会に発信することがずいぶん上手になってきました。しかし今、社会的に発信するメディアは私たちが考えている以上にさらに進んできている。そうしたことも含めながら、一層の工夫と、諦めずに粘り強く進めることによって、人権状況が少しずつ変えていくことができると思います。人権条約の勧告を実現させるこの取り組みは、日本国憲法と国際社会、人権条約をつなぎ、人権を基盤とする社会づくりの鍵となると確信しています。みなさんとともにこの取り組みをさらに進展させていきたいと思っています。

・福島原発事故後の「健康の権利」と被災者支援を問い直す
伊藤和子(特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長)

今日は人権が大変危機的な状況の中で、これだけのたくさんの方がお集まりいただいて本当にお疲れ様です。私も励まされました。私からは、今日お話された中では、非常に新しい人権問題でありながら、早くも忘れ去られようとしている、かつ、深刻な人権問題である、福島原発事故後の人権問題についてお話をさせていただきたいと思います。

ご承知のとおり、原発が非常に危ない危ないと言われながらも、私たちの多くの無関心の中で事故を起こしてしまった。そして、福島原発事故で濃縮された放射性物質は、当初の発表ですら広島型原爆の168倍以上と言われるような深刻な放射線汚染です。それが今も汚染水問題ということで拡大をし続けております。周辺の住民の方々の健康、そして生きる権利を深刻に侵害しているというのが現状ではないかと思います。ところが、これに対する日本政府の対応は、非常に深刻、そして不十分なまま、今日を迎えております。被害者切り捨てとしか言いようがないやり方ではないかと思っております。

みなさんも、覚えていらっしゃると思いますけれども、これまで日本は、年間1ミリシーベルトという、放射線から人々の健康を守るというこの基準をずっと遵守してまいりました。ところがこの事故直後に、基準を20倍である20ミリシーベルトに上げたわけです。当時、内閣府の参与をしていた小佐古さんという方が、「このような基準を子どもにまで強要するというのは、私のヒューマニズムに反します。」と言って涙の辞任をされたことを、覚えていらっしゃる方もいると思います。当時もみなさんは怒って署名をされたり、声をあげられたりしたと思います。ところがこの20ミリシーベルト基準というのは、そのまま生きております。そして、20ミリ基準を超えた人々は避難ができますけれども、それ以下の人たちは、どれだけ危険があると思っても、避難の支援が受けられないということです。そして健康支援についても非常に不十分なものしかない。学校の校庭で、子どもたちが何の放射線防護の方策もないまま、活動を強いられているというような状況にあります。

そして今、来年から始まろうとしていることは、この20ミリシーベルトを下回ったと判断された場合、今避難している方々が順次、避難指定を解除されて戻ってこなければならない。戻らなくてもいいんですけど、賠償金が打ち切られてしまいますから、兵糧攻めにあって、いかに危険を感じても戻ってこざるを得ないという、避難・帰還の強制ということが進みつつあります。

こうした中、私たちの団体と、他の環境団体とともに、国連に対して働きかけを行いました。この人権条約機関というシステムですが、国連報告特別者という方がいまして、その方が日本に事実調査に入るということを通じて、この人権状況を変えるための改善を勧告してほしいということを、2011年の7月に求めました。これに応じて国連の健康に関する特別報告者、アナンド・グローバーさんという方が、2012年の11月に、2週間ほど日本に来まして、調査ミッションを行いました。福島市内、それから郡山市の様々なところに行かれて、それから自主避難している方々の声も聞いて、その上で今年の5月に、非常に大きな報告書、そして、勧告を出していただきました。私たちもこの勧告に対して、特に福島の方々で、なかなか声をあげられてこなかった方々が非常に感激して、ぜひこれを実施してほしいという声をあげていらっしゃいます。

その勧告の内容というのは、まずは、先ほど言った1ミリシーベルトという基準について、低線量被曝の影響が否定できないということを前提として、避難の基準、それから帰還の基準については、1ミリシーベルトにするべきである。そして年間被曝線量が1ミリシーベルト以下にならない限り、住民は帰還を強要されるべきではない。そしてその間にも、選択ができるように、財政的な補助・支援などをするべきだということを求めています。

それから、健康管理が非常に問題で、甲状腺検査の結果、たくさんがんの疑いがある子どもさんたちがいらっしゃいます。ところが検査は2年に1回しか行われない。そしてちょっとした異常なしこりがあっても、県の判断で大したことないと判断されれば追加検査も行ってもらえないという状況があります。こういうやり方についても抜本的に改めること、そして甲状腺検査だけではなく、チェルノブイリでは10種類くらいの包括的な検査が、毎年1回きちんと、子どもだけではなく大人に対しても行われて、それによって健康を守るというような措置がとられています。それと同じことを、日本でもせめて尿・血液検査などについてはきちんと行うように、と求めました。

もう一つの重要な勧告は、市民の参加です。今、様々な法律もできて、どんどんいろんなことが審議会などで決まっています。基幹の政策を決めるといったことが進んでいるわけですが、そこに市民の参加、特に被害を受けた被害者の参加というのが全然実現していないんですね。「子ども・被災者支援法」という原発事故の被害者の方々のための法律ですが、これが去年の6月にできて、1年たってもまだ全然施行されていない。住民の方は非常に怒っていらっしゃるわけですが、この住民の方が復興庁などに行って交渉しても、住民の方々のことを「左翼のクソ」という言い方をして、罵倒するといったことを政府はしてきて、住民の意見を本当に取り入れないということが続いてきました。

こういうやり方に対して、国連特別報告者のグローバーさんは、「すべての政策に対して住民がきちんと関与できるような仕組みをつくるべきだ」ということをおっしゃいましたし、またこの「子ども・被災者支援法」という法律の支援対象地域についても、「20ミリではなく1ミリシーベルトを基準にするべきである」と明確な勧告を出されました。これは非常に重要な勧告で、住民の方々からも、ぜひこれを実現していってほしいというような声があがっております。

ところが日本政府は5月にこの勧告が出された直後に、すぐに大量の文書を出して、そして徹底的に、この勧告には従わないという声をあげました。非常に異常なことだと思います。例えば1ミリシーベルトを基準とする健康診断、それから1ミリシーベルトを基準として被災者支援策を行うということは、「非科学的である」という言い方なんですね。今、世界的には、低線量被曝と言って、100ミリ以下でも、11ミリ以下でも、5ミリ以下でも非常に低線量でも、健康被害が生じるということは、かなり多くのところで知見として示されています。ですから原発事故を起こした、これだけの事故を起こした政府の担当者の態度としては、間違っても健康被害を起こさないように、まさかの可能性があれば、そういった被害でも防ぐように最大限の対策をとるべきなんです。ところが1ミリであっても、本当にこれで大丈夫か、というくらいですが、これで健康診断をするというのは「非科学的」だから、そんなことはやる必要はないと言って、一切そういった政策をとらないと言っているわけです。

特に「子ども・被災者支援法」について、1ミリシーベルトを基準にして施策をすべきだという勧告に対しては、予断に基づく勧告であるので文章を削除してくれということを事前に言っている。国連が出す文書に対して事前に削除せよというのは、判決を聞く前にその判決が気に入らないからその判決を削除してほしいと言うのに等しい、非常に問題のある態度ではないかと思います。

このような態度は、低線量被曝の影響を軽視することを通じて、福島だけでなく広範に広がっている地域で、汚染されて、そして苦しんでいらっしゃる子育て真っ最中のお母さんたち、そしてお子さんたち、こういった人たちの、ひとりひとりの健康に生きたい、生きていきたいという願いを踏みにじる、そして被害者を切り捨てる態度だと思います。私はどうしてもこういう態度を許すことができません。しかも国連特別報告者の勧告には、また同じですけれども「拘束力がないので従わなくていい」という他の論理と同じことを、ここでも繰り返しているわけです。

私たちも3月に、国連特別報告者を招聘して、もう1回きちんと、どのように、この勧告が実施されたか、ということを検証していきたいなと思っています。

福島原発事故は、日本全国の人たちから見れば、影響を受けている人たちは確かに少ない。そして1年2年とたてばたつほど、忘れ去られていくんですね。しかし、他のすべてのマイノリティのイシューと同じですけれども、なかなかみなさんが関心を持たないもとで、少数者の人の人権が切り捨てられていく。他のマイノリティのイシューでも福島の問題でも、原発事故から本当に風化をしてきていると言えるかもしれませんけれども、そういうことを許さない、人権の視点から福島の問題にもぜひ関心を持っていただいて、勧告の完全実施のためにみなさんのお力をいただきたいと思います。

そして先週、特定秘密保護法などが通ってしまって、みなさんがっかりしているところだと思うんですね。これについても、来年は自由権規約の審査もありまして、そこで正面からこの問題も問うていかなければならないと思います。ひとつひとつの問題は、やはりなかなかうまく実現しない。特定秘密保護法もあんな形で強行採決をされてしまうと、ショック・ドクトリンというのか、みんなショックを受けて、私たち無力なんじゃないかと思ったり、それか石破さんみたいに「デモはテロ」と言われたりすると、「あぁ、怖いな」と思って、みんな動けなくなってしまうというようなことにならないように、私たちがそういったことを乗り越えて、ひとつひとつの違う課題ですけれども、いっしょにぜひ力をあわせて取り組んでいければと思いますので、今後ともぜひよろしくお願いします。どうもありがとうございました。