2015年7月18日土曜日

第12回学習会の報告

第12回学習会の報告

第12回学習会の概要は次の通り。

・「世界最大の収容所大国」−最初にして、唯一の手段としての強制入院

 日本における精神障害者に対する処遇は、強制入院措置による病院収容が中心で、1960年代からずっとこの方針は変わっていない。自由権規約委員会による1979年の勧告でもすでに指摘されている。

 これは「法律によって人を監禁できる」という状況で、精神医療保健法という法律が根拠。同種の法律は各国にあるものの、医療保護の場合も措置入院の場合も、日本においては期限が定められておらず、これを「不定期拘禁」と呼んでいる。日本の精神病床の平均在院日数は300日を超え、OECDでも突出した水準になっている。

 医学的には隔離入院の効果はないとされており、医療の名のもとに、人権侵害が隠ぺいされ、正当化されているのが実際のところ。先進国では1960年代から方針転換を進めており、地域での支援が中心になっている。

 「侵襲」ということばがあり、侵入して介入するという意味だが、本人同意もなく、医療の名のもとに「侵襲」してしまうのはどういうことなのか。英語では「integrity」を侵すと言う。障害者に対する拷問であり虐待であると言える。

 2013年の拷問等禁止条約の審査では、初めて精神病者集団として、意見を提出・ロビイングをした。勧告を得ることはできたものの、適正手続きを取ることを条件として、強制入院が許容されてしまっている。精神障害者に対する一切の強制入院の廃止を求めている、障害者権利条約とは異なる状況・水準にある。

 とはいえ、そもそも日本の状況が異常であり、勧告には不満だが、それに日本政府は勧告を守ることはできないだろう。

・病院内での暴力・虐待事件

 ほぼ毎年、病院内での暴力・虐待事件が起きている。新聞沙汰になったものだけ、ピックアップしたものを資料にまとめている。障害者虐待防止法は制定されたが、学校と病院は通報義務の対象外となっている。病院の経営者団体が圧力をかけて対象外にさせたからだと言われている。

 また、都内であった病院内での事件については、加害者の看護師に対して、警察は動いておらず、また、処分も停職15日にとどまっている。被害者が障害者で、場所が病院だから、このような軽微な処分にとどまったのではないかと考えている。

 なお、虐待防止法は今年見直しの予定で、通報義務の対象として、学校と病院を含めること、また、独立した監視機関を作ることを障害者団体は求めている。

・精神科病院をめぐる構造的問題

 そもそも、日本では1960年代から精神病院は民間に任せる方針がとられてきた。1960年に設立された医療金融公庫が大きな役割を果たしていた。国が措置指定病院として指定し、お客さんとしての患者を割り当てる方針がとられていた。

 精神科病院においては、死亡による退院が年間2万人あるが、病床数自体は減っていない。退院した分、新しい人を入院させており、むしろ入院数は増えている。また、病床数は1万人あたり27床で、世界の病床数の2割が日本にあるという状況。医療観察法にしても、予定病床数を超えて作られていることも問題であろう。

 さらに、入院患者は3カ月ごとに病院を転院させられている例がある。これは最初の3カ月は診療報酬が高いことが理由。病院としては、1人の患者で400〜500万円の収入になり、医療観察法に基づいていれば、2000万円の収入になる。

 精神障害者の入院だけは聖域扱いされている。本人の利益ではなく、治安が優先されている。また、デイケア、ナイトケアと称した治療は、患者の囲い込みに使われている。地方では精神科病院が何でも引き受けており、従業員数も多い。また、特に生活保護を受給している精神科の患者は、本人の自己負担がないため、貧困ビジネス化している。

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参加者は28名。講演終了後も活発な質疑が行われた。

なお、さらに詳しく知りたい方は、全国「精神病者」集団のサイトもご覧ください。
http://www.jngmdp.org