2022年12月18日日曜日

第10回 国連・人権勧告の実現を!  ドキュメンタリー上映&トーク「ワタシタチハニンゲンダ!」 監督が語る日本の外国人差別の実態

 ドキュメンタリー上映 & トーク「ワタシタチハニンゲンダ!」

監督が語る日本の外国人差別の実態

 第10回 国連・人権勧告の実現を!




 毎年「世界人権デー」の前後に行われる今年の集会は、多くの国会議員の参加と共闘を願い、2日後に閉会を控えた参議院議員会館で行った。

 集会開会の挨拶に続き、30分に短縮した上映は、植民地時代に強制連行した在日朝鮮人への差別が、現在のニューカマーの外国人へ引き継がれていることを如実に伝えた。


【基調講演「日本の外国人差別の実態」】 

高賛侑さん(「ワタシタチハニンゲンダ」監督)

日本は、国家自らが差別をしている

 この映画の制作期間は2年弱と短いが、それまでには長い年月がある。在日朝鮮人2世でひどい差別を受けたみじめな少年時代だったが、高校3年生のとき朝鮮大学校を知り、そこで学び、アイデンティティをもつことが出来た。

 日本ではこんなに差別があるが他の国はどうだろうと思い、1988年に中国へ行った。共産国だが、朝鮮族の学校があり朝鮮語を話していて、びっくりした。

では資本主義国はどうだろうと、1991年にアメリカ、ロサンゼルスの世界最大のコリアタウンへ行った。50~60年代の黒人の運動で、1964年に公民権法が成立しており、そこはソウルとほとんど変わらない状況だった。

 次に行ったのが、旧ソ連のカザフスタンだった。1937年のスターリン時代に沿海州から16万人が強制連行されたが、1986年にゴルバチョフのペロストロイカがあり、1989年にソ連最高会議で、強制移住は非合法だったと謝罪がされた。

 この3つの国を尋ねて発見したのは、日本では、外国人差別をしているのが国家自らで、それはきわだって異常だということだった。

民族教育差別は、最も大きい

 次に、日本に住む外国人について調べた。朝鮮人だけでなく、他の外国人へも同じだ。労働など多くの差別は「日本人と同じようにしろ」という要求である。特に問題なのは「民族教育」で、朝鮮人としてのアイデンティティを求めるものである。2010年高校無償化制度が始まったが、朝鮮高校のみが対象外とされ、自治体も補助金を停止した。各地で裁判を起したが、大阪以外はすべて敗訴。裁判所も差別政策を追認した。

 こんな中でつくったのが、2019年のドキュメンター映画「アイたちの学校」である。これはキネマ旬報文化映画ベスト・テンとなり、日本映画復興奨励賞等を受け、アメリカ、ドイツ、オーストラリア等でも上映された。

日本の外国人全体の問題だ

 一昨年から、外国人全体の問題をやらねばと考えたが、日本人は外国人に関心がないので観る人がいないのではないかと思った。スリランカのウィシュマさんの入管での死亡事件をきっかけに、世論は高まり入管法改定案は廃案になった。画期的な変化が起き、本格的な取材を始めた。技能実習生、難民の取材、未公開映像の入手も出来た。

 この映画では、韓国併合からの100年の歴史、現在の日本にいる外国人問題を扱った。収容所で39日のハンストをした人。壁に頭をぶつけて10回の自殺未遂をしたが壁がコンクリでなく板だったので死ねなかった人…。インタビューを思い出し、監督は声を詰まらせた。一つの差別をする人は、あらゆる差別をする。逆に一つの差別をしない人は、あらゆる差別をしない人だ。多くのテーマを扱って構成が大変だったが、記録に残すことは大切。

 技能実習制度の実態は、奴隷労働。多額の借金をして国を出ている。デートしたら解雇、妊娠したら解雇と言われても、国には、帰るに帰れない。難民認定は1%以下、無期限の入管収容、仮放免、就職禁止、住民登録不可、再収容の恐怖、多発する死亡、踏みにじられる難民の人権。

 見ていてつらい実態が映し出されるドキュメンタリーは、4月完成、5月公開。各地で、自主上映が増えているのは嬉しい。弁護士会でも上映活動がすすめられている。有志等の協力でアメリカ、ドイツ、韓国でも上映企画が進められている。

 国は次期国会に、「入管法改定案」を提案するかもしれない。共に闘っていきたい。


【特別報告(1)入管法改悪を許さない】

小堀百花さん(外国人労働者・難民と共に歩む会)

 大学生が多いが、高校生、市民たちで、入管へ面会に行く活動をしているグループです。名古屋入管に申し入れ、収容しないで仮放免を要求をしたら、牛久の入管に移されただけというのが、入管の現状。

 2月16日に院内集会を行い、ウィシュマさんのビデオの全面公開を要求した。5時間にまとめて公開するというが、医療問題にのみ矮小化している。

 未成年の仮放免者は300人いる。日本で生まれた収容者もいて、帰るところはなく日本にしかいられない。強制送還では解決しない。すみやかにビザを出すべきだ。入管行政、在留資格の抜本的改正が必要。


【特別報告(2)クーデター後のミャンマー人への人権侵害をめぐって】

渡邊さゆりさん(マイノリティ宣教センター)

 ミャンマーで軍事クーデターがあった2021年2月1日以降、大使館で働いていた1等書記官ほか数名の大使館職員がCDM(市民不服従運動)を表明し、無職になった。書記官はさりげなく大使館を出て、仲間に保護された。ミャンマー代表サッカー選手は、マスコミなどで報道されCDM表明後、難民認定が早急になされた。一方、名前の出せない2名の女性職員は身を隠した。日本政府が交渉しているのは、ミャンマー軍評議会。

 在日ミャンマー人の難民認定申請中の人は2944人。2021年はコロナの影響で、全体で申請者は40%減っているが、50ケ国の612人の申請者中25%がミャンマー人。全体で前年の27人増の74人が難民認定を受け、そのうち32人がミャンマー人。

 日本政府は暴力で支配する国軍を支えないで欲しい。根本的な外国人差別意識が政策を下支えしている。人道的支援、人権擁護が必要。


【特別報告(3)なぜここまで朝鮮学校の子どもたちを差別するのか】

 宋 恵淑(ソン ヘスク)さん(在日本朝鮮人人権協会)

 北朝鮮のミサイル発射に対して、北区十条の朝鮮学校の男子生徒に対して、50代の男が、「日本にミサイルを飛ばすような国が、高校無償化なんて、言ってんじゃねーよ」と足を踏みつけ言った。日本政府は「拉致問題があったから、高校無償化からはずす」と言った。政府自らが、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムをするから、市民も同じことをする。

 10月に人権規約委員会勧告が出た。高校無償化問題では6度にわたる勧告だ。委員会に何度も足を運んでいるが、委員から「まだ差別が続いているのか!」と驚かれた。


【集会アピール 行動提起】

 行動提起は、朴金優綺(パクキム ウギ)さん。

国連の勧告は発展しているが、日本は「勧告に従う必要なし」の閣議決定で、全然進まない。日本国憲法98条2項には「日本が締結した条約は、…これを誠実に遵守する」とある。これを守ればいい。過去から現在に繋がる差別を、私たち市民が国連人権勧告をツールにして、差別を止めさせ、人権を確立しよう、と力強く提起した。

集会の参加者は120人だった。

(まとめ 高木)