2018年10月1日月曜日

第28回学習会の報告

第28回学習会報告

 2018年10月19日に連合会館で、「日本の難民問題・入管問題」というテーマで学習会を行った。講師は、SYI(収容者友人有志一同)の柏崎正憲さんと織田朝日さんのお二人。SYIは日本の排外的な入国管理政策、特に入管収容に反対する団体で、2009年から活動し、主に収容者との面会や、非正規滞在の外国人の支援、デモ、集会などの活動をしているということだった。大変深刻な人権問題であるためか、会場いっぱいの参加者で、準備した資料が不足するほどの盛況だった。

 まず、柏崎さんから入管施設で、退去命令が出された外国人が無期限に収容されている問題、人権侵害の温床であるという問題が話された。医療へのアクセスも保障されずに、病人が放置されたり、死亡に至ったりする外国人もいるなどの悲惨な例が話された。2007年以降入管施設で合計13人が死亡したそうだ。収容理由や経緯も基準が明確でなく、難民審査が終わっていなくても収容したり、空港で難民申請をしたのに即時に収容されたり、犯していない罪を認めろという国選弁護士の勧めに従ったら実刑がついてビザがなくなり収容された人もいる。無期限の収容に耐えかねて、多くの収容者が自費で出国を余儀なくされている。2016年で強制退去を命じられた7,014人のうち6,575人(93.7%)の人が自費送還されている。2016年ごろから仮放免者の再収容の増加、収容の長期化が進んでいるそうだが、それが「もうすぐオリンピックだから」という理由に、愕然とした(2016年4月7日法務省入国管理局長通知を参照)。

 他方で、日本の難民認定基準も大変厳格で、許可が取れずに結果的に「不法残留」の状態に追い込まれるそうだ。2017年の難民申請者が19,629人いたが、そのうち難民認定が20人、人道配慮による在留許可が45人だった。合計してもわずか全体の0.6%という少なさに、日本の人権尊重主義の欠如、狭量さや、排外性を感じた。技能実習生や留学生が、多額の借金をして日本に来て、労働条件の劣悪さ、賃金の低さの中で、搾取労働の温床になり、そのような劣悪な境遇から逃れようとする人が入管取締のターゲットになっているという状況も話された。

 織田さんからは、東京入管での収容者への面会の実情が話された。いつ収容所から出られるかわからない状況、食事がひどい、時には腐ったものも出されることもある劣悪な状況、持病の薬も日本製でないという理由で差し入れを禁止されるほどの管理体制の厳しさ、医療ネグレクトの実情、トイレしかない部屋で24時間のカメラ監視の下に置かれる「隔離」(事実上の懲罰)措置などの、非人間的な処遇が話された。職員のいじめや馬鹿にする態度、人としての尊重が全くない状態に、収容された人が屈辱を耐えている状態も報告された。仮放免申請を出しても許可が下りずに、何年も収容が続き失望感を持つそうだ。

 質問もたくさん出て、さらに内容が掘り下げられた。また会場からの意見で補充された面もたくさんあった。

 最後に柏崎さんが、日本の入管はなぜ、こんなにも排外的で非人間的なのかという点を補足された。戦前から、植民地の朝鮮から「内地」への渡航者を警察が厳しく取り締まり、戦後は日本にいた朝鮮人を排除するために渡航取り締まりを強化した。在日朝鮮人を全員強制送還すべきだという吉田茂のマッカサーへの具申などもあったが、朝鮮戦争の勃発を受け、米国に後押しされつつ、1950年に入国管理局(当初は入国管理庁)ができた。当初は、「取り締まり」対象は韓国人だったが、バブル景気を経験した1980年代なかば以降には、収容対象者の出身国も多様化していった。そういう歴史を考えると排外主義が幅を利かせている状況が理解でき、改めて人権の問題として社会的に訴えていく必要性を感じた。