国連・人権勧告の実現を! —すべての人に尊厳と人権を—
集会・デモ ご報告
2014年9月28日(日)に行われました「国連・人権勧告の実現を!」デモ・集会には、400名を超える多くの方々にご参加をいただくことができました。おかげさまで大変盛況となりました。
ご参加をいただきました方々には御礼を申し上げます。どうもありがとうございました!
実行委員会では今後も様々な企画を実施してまいりますので、ぜひともこれからもご支援をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
本ページでは、集会の発言の一部をご紹介いたします。(動画の内容を文字化しています。)
●自由権規約委員会勧告の概要報告
海渡雄一(日弁連・自由権規約ワーキンググループ座長)
今日はこんなに晴れていいお天気なんですが、火山が爆発したり、日本国憲法とともにあった土井たか子さんが亡くなったという悲しい知らせもあったりして、ちょっと心が沈んでおります。しかしがんばってやっていきましょう。
私は今、本当に日本の人権、民主主義、そして平和、そういうものが非常に揺らいでいると、大変な危機感を覚えています。そういう状況の中で、そういう動きに何とか歯止めをかけていく、そのために今年7月に自由権規約委員会の審査に行ってきて、そこで、結果として素晴らしい勧告がとれたのではないかと思っています。しかし、その勧告を活かすも殺すもここにいるみなさんがこれを実現のためにがんばるかどうか、それにかかっているんじゃないかと思うんですね。今日のチラシの中に、勧告の中身等は詳しく書かれています。たくさんの勧告が出ていて、ここに来られているひとりひとりにとって、ひとつひとつが重要で一つでも落とすのはまずいのかなと思ったりしますが、書面に全部載っていると思いますので、いくつかに触れてみたいと思います。
僕はずっと代用監獄問題を、弁護士になってからやってきたんですけど、日本における冤罪の極致とも言うべき袴田事件の無罪、再審開始に向けて釈放という事態を受けて、日本政府はなぜもっと前向きなことができないんだろうと、取り調べの可視化についても不十分ではないかという勧告が出されました。そして死刑制度についても、死刑制度の廃止に向かって日本政府の前向きな姿勢が全く見えないじゃないか、そういうことも指摘されました。
そして今回は新しいテーマとして取り上げようとしたのが、秘密保護法とヘイトスピーチの問題でした。
秘密保護法の問題については、秘密の指定が全く恣意的にされても、それを防ぐ手段がないではないか、そして、一般市民やジャーナリストが処罰されることになっても、全くそれを防ぐことができないではないか、と私たちが法律反対、廃止運動の中で言ってきたことと同じことが指摘されました。
ヘイトスピーチについても日本政府は、今の制度、表現の自由を守るためには、禁止という規制はできないと説明しましたけれど、それに対してちゃんとした刑事法的規制をするべきだということが勧告されました。これに基づいて日本の国内で、法制度を作っていくことはなかなか大変な作業だとは思います。今の安倍政権のもとでそういう作業をすると、我々が政府に反対する普通のデモンストレーションにまで、悪影響が及ぶ、そうなりかねないんじゃないかということを心配される人もいるんですけど、でも、僕はやはり今のヘイトスピーチの実情は放置しておけない、これをきちんと取り締まるような法制度を構想していくときが来ているのではないかと思います。この点については日弁連も、遅きに失していますが、ようやく重い腰を上げて、これから検討を始めようとしているということをご報告しておきたいと思います。
また、一番最後のセッションで、ナイジェル・ロドリーさんという、イギリスで選出された議長をされた方ですが、この人が最後に従軍慰安婦の問題とヘイトスピーチの問題を取り上げたんですけど、「日本政府の対応というものは、国際社会に抵抗しているように見える、国際社会に従って何か改めていこうとするのではなくて、国際社会に対して何か抵抗しようとしているように見える。」とはっきり言われました。これはなかなかこうした外交の場、国際的な場で、非常に丁寧な言い方ではありましたけど、日本政府に対して最も厳しい批判だったのではないかと思います。日本政府のかたくなな態度を変えさせていくことができるのかどうか、これが今の我々に問われている。ほんとに安倍政権を相手にどういう風に闘ったらいいのか、こういう政府に、国連などの場で、建設的な対話をしなさいと、NGOは常に言われるんですが、果たしてこの政権との間で、建設的な対話が成り立ちうるんだろうか、ということをみなさんも思われると思いますが、それを追求していかなければいけない。そしてこの政府の対応を変えていかなければいけない。そして日本の国の中ですべての人たちが差別されることなく、共存して生きていけるような社会、表現の自由を中心とした人権、民主主義を守らなくてはいけない。そして日本が戦争への道に踏み出してはいけない。これを自由権規約委員会ははっきりと求めていたのではないかと思います。
これを実現するのはもちろん政府の責任ですけれども、今日ここの場に集まっているNGOのみなさん、私たちも含めてですけれども、私たちの大きな責務でもあると思います。日弁連もともにがんばりたいと思いますし、私もNGOの一員としてもみなさんとともにがんばりたいと思っています。
●人種差別撤廃委員会勧告の概要報告
師岡康子(弁護士・人種差別撤廃NGOネットワーク)
人種差別撤廃委員会の日本審査は今回が3回目です。最初は2001年、次が2010年、そして今回となります。最初に審査の印象をお話しして、それから報告の大まかな内容と、最後に提案を行いたいと思います。
まず審査の様子ですが、私が前回2010年に行って、今回も行って、前回も今回も日本政府の態度というのは基本的にはあまり変わらなくて、勧告をちゃんとやっていない、ということでは変わらないのですが、前回、民主党政権が成立した直後だったということもあり、委員の人たちは、2001年から2010年の9年間、ほとんど変わっていないということに基本的にあきれていました。
今回は、あきれているのではなくて明らかに苛立って怒っていました。前回に委員の何人かから「日本は、車とかテレビとか、技術や経済は進んでいるけれど、人権状況は全然進んでいませんね」というようなことを、皮肉交じりに言われたのを覚えています。それも非常に恥ずかしかったですが、今回はもっと明確に、委員の態度というのは、日本政府は明らかに意図的に勧告を無視しているんだと、確信犯なんだというのがわかったと思うのですが、怒りをあらわにしていました。
具体的には、最初にまず、審査の担当が毎回レポーターとして決まるわけですが、今回はケマルさんというパキスタンの委員の方がレポーターでした。その方のレポートの一番最初で言ったのは「日本政府は2010年の勧告を無視している」ということでした。それから、政府が本来、報告書でやるべき、前回の勧告ひとつひとつに対して、政府がどこまで、締約国がどこまでやったのかということを、報告書に本来入れなければいけないのが、全く入っていなかったので、ケマルさん自身がひとつひとつやって、それで、ほとんど何もやっていないという結論に至りました。
それ自体恥ずかしいことですが、それに続く審査でも、日本政府が2013年1月に出した報告書の中では、「2001年に政府が出した報告書参照」というところが何回も出てくるんですね。参照と書いてあるだけで何も中身はないわけです。それは非常におかしいと、これでは報告書になってないということも、委員から口々に言われました。それ自体、2001年から何もやっていないことを自ら告白しているようなものですし、その中身を書いていないこと自体が非常に失礼な、侮辱的な態度だと思います。それは、委員から指摘されました。
それから、委員から出た意見の中で極めつけなのは、ヘイトスピーチに関して、ルーマニアの委員から言われたことです。政府が今回も2001年の時から変わらず、「表現の自由の問題があるので、慎重に検討しています」と言ったんですね。それに対してルーマニアの委員が言ったのは、「日本は1995年に、この条約に入っているわけです。だから今年でもう19年たっているわけですけれども、19年たって慎重に検討しているっていうのは、それは一体なんだ。やる気がないのといっしょでしょ。やる気がないんだったらなんで条約に入ったんですか。」そこまで言われたわけですね。
最後に、審査は、ケマル委員がまとめるわけですが、そこでもダメ押しの一言で、「日本は民主主義国家なんですよね。それだったら条約守ってください」と、そこまで言われました。非常に恥ずかしいことで、今、その国連の安全保障理事会で常任理事国になろうとしているようですが、あり得ません。国連の勧告をここまで真っ向から無視していて、そんなことは国際社会が認めません。これが審査の様子です。
次に勧告の内容についてですが、今回、ヘイトスピーチ関係で、いくつか勧告の内容を紹介されていますが、この勧告というのは全体を見るのが重要なことです。ヘイトスピーチだけに限って言っても、ヘイトスピーチは暴言ではなく差別、人種差別が本質で、マイノリティに対する、差別に基づく言論による攻撃です。これが一番大事なところです。表現規制だけやればいいという話ではありません。
今回の勧告でもまず最初に言っているのは、「日本において、マイノリティがどういう人たちで、どういう状況にあって、どのように差別されているのかということを調査しなさい」ということです。これは3回目の勧告で、3回とも一番最初に言われていることです。で、いずれも全くやっていない。
その次に出てきているのが、「そういう調査を踏まえて、条約の求める人種差別の被害者について、ちゃんと定義をして、その上で、包括的な人種差別禁止法を作りなさい」ということです。そして、「その差別禁止法の実施を保障するものとしての国内人権機構を作りなさい」。3回の勧告がいずれもほとんど同じ流れで、同じ内容です。だけれども日本はやってこないので、また今回も言われて、とりわけ、差別禁止法をつくれということを強調して言われました。
そのあとに続けて、ヘイトスピーチやヘイトクライムの問題、そして今回様々言われています外国籍者の年金問題とか「慰安婦」問題とか難民問題とか朝鮮学校問題など、触れられていますが、いずれも、まず出発点になるのは、「日本政府は差別を違法としていない」ということなんですね。差別がこの国では違法じゃないわけです。不法行為を流用すれば、一部は違法とできるけれども、差別自体は違法じゃない。「差別禁止法」という最も条約で求められている基本的な枠組みがないということが問題なので、ケマル委員も、レポートの最初と最後に、「まず、包括的な差別禁止法を作りなさい」と言われました。勧告でもそこが強調されているところです。そこが最も重要だということが全体としては言いたいところです。
今回、このようないい勧告が出たわけですが、それに対して私たちはどうすべきかということですね。勧告内容自体は、2010年の時と重なっていますが、今回はやはり、受け止める日本社会の方が変わってきているし、変わるべきだと思います。それは、いろんな人たちの努力の結果、ヘイトスピーチ問題というのが初めて去年、社会問題化したわけです。それを契機として、今回の勧告が、報道でもマスコミでも大きく取り上げられたということがあります。そして、勧告を実現しようとして、今日の集会が持たれて、今日の集会だけではなく、いろんな人たちがいろんなところで、今声をあげているところです。
具体的には、いくつか報道されましたけれども、例えば国立市の市議会が、今回の勧告を受けて、ヘイトスピーチを含むマイノリティに対する差別に対して、差別を禁止する法律を作るように国会に意見書を出しました。それは、非常に大きな意味があることです。というのは、国会の中で今、条約を具体化する「人種差別撤廃基本法」を作ろうという議連が4月にできまして、明日から臨時国会が始まりますが、そこで具体的な動きが始まるわけです。それに対して、やはり、地方から、「人種差別撤廃基本法」もしくは、「人種差別禁止法」というのを、条約の今回の勧告に基づいて作ってくれと言う声をあげることが、非常に大きな後押しになります。
ですので、今日来ていらっしゃる方に私が提案したいのは、各地域で、各地元で、意見書や宣言とか決議とか、いろんな形があると思いますけれども、それをあげていってほしいということです。それが、今右翼から攻撃を受けている国立市を守ることでもあります。ぜひ、よろしくお願いします。
●テーマ別発言
(1)「慰安婦」・・・・・渡辺美奈(女たちの戦争と平和資料館WAM)
今、朝日新聞の報道をきっかけに、日本軍「慰安婦」制度そのものがなかったかのような、まさに歴史の捏造が横行しています。そしてこのような世論をさらに進めるように、菅官房長官は「国連など国際社会に日本政府の立場を説明していく」と言っています。しかし、日本政府の主張は到底国際社会では認められません。今年7月の自由権規約委員会で、「意志に反した募集はあったが強制連行はなかった」との日本政府の主張に対して、議長は「十分に賢くなくて理解できない」と皮肉を言いました。
そして、昨年5月の拷問禁止委員会でも、委員はこう言いました。「橋本大阪市長は性奴隷や性搾取が必要だった。さらには強制の証拠は示されていない、と発言しているが、これは典型的な否定論者の説明であって、他の国の状況・場面でも散々聞かされてきたことであり、委員会としてはこのような主張は説明としては認められない」と言われています。旧ユーゴの国際法廷でも、性奴隷犯罪で裁かれた加害者は、「強制ではなかった、合意の上だった」と言っているが、日本はそれを国家レベルでやっている、と言えるのでないでしょうか。
このような説明は日本国内では受け入れられても、国際社会では全く受け入れられません。そして私は、国際社会の反応は、このような嘘をつく者への嫌悪という極めて人間的な反応だと感じています。そして、過去の加害も認めないということは、将来にも同じ過ちを犯すという歴史的経験からも、脅威を感じているのだと思います。
「朝日新聞は世界に向かってしっかり取り消す努力が求められている」。こう安倍総理は言ったそうですけれど、しっかり取り消す努力が求められているのは安倍総理の認識です。そしてこれ以上日本は歴史の事実さえ認めない国だという、悪い評判はつくらないでいただきたいと思います。
国連勧告には「慰安婦」問題について「日韓和解のために」といった言葉はありません。「慰安婦」問題はひとりひとりの人権の問題です。取り返しのつかない性暴力を受けた女性たちに対して、加害国はその被害回復をする義務があり、被害者はその権利があるということです。安倍政権がいかに女性の活用を、国内外で進めたとしても、過去の重大な人権侵害をなかったことにはできません。「慰安婦」問題に関しては、もう被害者が高齢で時間がありません。一人でも多くご存命のうちに、この問題を解決すべく、みなさんと共に闘っていきたいと思います。
(2)原発事故被害当事者より・・・・・坂本健(Hsink避難・支援ネット神奈川)
避難・支援ネット神奈川という団体を、福島から非難してきている者として、立ち上げています。何とか避難者のネットワークを神奈川県内で作ろうと、関東圏とも連絡をとりながら、進めているところです。
避難者の人たちの生活というのは今、応急仮設住宅で、公営住宅とかUR賃貸とかに入居していて、一般の方たちからは、目に見えない状況になっています。そういう方たち、そして自主避難の方たちというのは、賠償も微々たるものしかありません。そういった方たちの住宅の無償負担の延長の署名に取り組んでおります。どうぞご協力いただけたらと思います。よろしくお願いします。
私たち避難者の状況は、避難してきたときの世帯構成から、子どもたちの成長、私であれば父母など高齢者、病気になっている人たちなど、余生が一日一日、今奪われているという状況の中にあります。私も知っている方の中でも、何人もお亡くなりになった方が出ています。一方で福島の方では、南相馬市あたりでは、特定避難勧奨地点の区域指定を解除して、住民が戻れるようにし、賠償も早々に打ち切るということが打ち出されました。
ですが、放射能の問題というのは、決して福島だけに限った話ではなくて、本当に広範囲に、関東圏までも及んでいることはみなさんもご存知のことと思います。そうした放射能の被曝、健康被害を国は強要しているという状況にあります。福島県で生活している方たちは、日常的に被曝を強いられているという状況です。
今回私は住宅に関する署名に取り組んでいますが、大きな問題として、「子ども・被災者支援法」があります。被災者は誰なのか、被害を受けている地域はどこなのか、明らかにされていません。そのために様々な、ひとつひとつの問題が非常に進みにくいということが作り出されています。意図的にそういう状況が作られています。これに対して、避難者とともに何とか声をあげられる状況を作りたいと思って活動しています。みなさんとともに、子どもたちの未来が明るいものになるように、そういった国を引き継げるように、がんばりたいと思います。
(3)移住労働者・・・・・大曲由起子(移住労働者と連帯する全国ネットワーク)
「我々の権利は誰が保護してくれるのでしょうか。」
これは6月に行われた緊急集会、「オリンピックのために使ってはならない、技能実習制度」の中で、参加した多くの技能実習生の一人が参加者に対して呼びかけた言葉です。技能実習制度は、制度が開始されて以降、そして、2010年に制度が改正されて以降も、3年間だまって働き続けることを担保する保証金の徴収、受け入れ企業間の名義貸し、残業代・賃金の未払い、強制貯金、通帳の取り上げ、そして強制的な帰国、セクシュアル・ハラスメントも相変わらず報告されています。
それにもかかわらず、労災が多く、危険が伴う現場である、建設分野や造船分野で実習生を2年もしくは3年、滞在を延長させるという決定を政府は行いました。それと時期を全く同じくして、こうした問題が大きい技能実習制度を、適正化を行う前に、さらに拡充させる道筋を政府は決めました。
翌日行われた自由権規約委員会で、これはNGOだけでなく国連も、過去にこの制度の廃止を求める勧告を出したことに触れました。さらに勧告の中では、この制度は2010年の改定以後も問題は引き続き起こっている、そして今度は新たな技能を伸ばすだけの制度を作るべきだ、ということも新たに勧告しました。
そしてさらに、こうした制度のもとで起こっている労働搾取の人身売買に対して効果的な調査をし、加害者に対しては制裁を科し、きちんと罰則を与えなければいけない、ということについても勧告しました。私たちはまさにこの勧告に従い、今こそ技能実習制度を廃止して、人権等、労働者としての権利がきちんと確保されるような新しい制度を作るべきです。
さらに翌月に行われた人種差別撤廃委員会では、移住者に対する雇用や入居の差別に対して、断固として闘い、就業状態を改善するための法律を強化するべきだ、という勧告も出されました。
さらに移住女性の権利に関しても勧告があります。DVの被害を受けて、虐待的な関係のもと、そこから抜け出すために、支援を受けるべく、そうした移住女性たちの権利を、入管法自体が支援を妨げうると審査の中で指摘し、勧告の中では現在の入管法を、きちんと改正すべきだ、見直すべきだと言っています。
外国人の権利に関してはこれだけではなく、非正規滞在者、難民、収容、子ども、人身売買、ムスリムに対する人種的プロファイルなど、様々な問題が取り上げられています。それにもかかわらず、今日本政府は、東京オリンピック・パラリンピック、外国人人材の活用、観光立国などを声高に言っていますが、このような様々な人権問題が指摘されているということは、まさに日本における外国人の人権が全く守られていないということを意味しています。
この国連からの人権勧告は私たちすべてに向けられています。私たちもこの勧告を実施するために、現場で行動します。私たちから選ばれているはずの政府もきちんとこの勧告に向き合ってほしい、そして、すでに始まっている多民族・多文化共生社会を、政策の場で実現すべく努力をしてほしいと思います。そのために、みなさんと声を大にして訴えていきたいと思います。最後に移住連としては、移住労働者たちの家族の権利保護に関する条約の批准を求め、私からのアピールとさせていただきます。
(4)婚外子・・・・・田中須美子(なくそう戸籍と婚外子差別・交流会)
私たちはこの26年間、婚外子差別の撤廃と、女性が結婚しないで子どもを産んでも差別されることのない社会を求めて闘ってきました。昨年、婚外子差別法制度の源である民法相続差別規定が、最高裁の意見決定を受けて廃止されました。この廃止によって出生届の差別記載や戸籍追加の差別記載の廃止の扉が開かれるだろうと期待しました。しかし、扉は開かれず婚外子差別は維持されたままです。
この7月の自由権規約委員会日本審査の中で、日本政府は相続差別規定の廃止を徹底して利用しました。相続差別の廃止を繰り返し持ち出しながら、日本があたかも勧告に従う努力をしている、その証であるかのように宣伝をしていきました。
1993年の自由権規約委員会日本審査の中で、婚外子差別の問題が大きく取り上げられ、初めて婚外子差別撤廃の勧告が出されました。それ以来20年間、自由権規約委員会や子どもの権利委員会から各3回、女性差別撤廃委員会や社会権規約委員会から各2回、計10回にわたる勧告が出されてきました。それにもかかわらず日本政府はこれらを無視し続け、最高裁の違憲決定を受けてようやく法改正に至ったのです。
相続差別以外にも婚外子差別の撤廃については勧告がされてきました。出生届の嫡出子か否かの記載や、戸籍の追加欄の差別記載、嫡出用語や嫡出概念の廃止などです。相続差別の規定の廃止については、婚外子差別法制度のほんの一部の廃止でしかありません。
まだまだ山のようにある婚外子差別について、日本政府はほっかむりをしようとしています。しかし今や、世界のほとんどの国が婚外子差別を廃止しています。このままいけば日本は婚外子を差別する世界でただ一つの国になりかねない状況にあります。婚外子の人権は、国連人権は、日本の国境の手前までということになりかねません。私たちは婚外子差別は人権侵害であることを徹底して訴えながら、政府、法務省に対しさらに迫りながら、婚外子差別撤廃の扉をこじ開けていきたいと思います。勧告実現に向けてともにがんばりましょう。
(5)朝鮮学校無償化・・・・・黄希奈(朝鮮大学校)
高校無償化制度から朝鮮学校だけが除外され、4年半もの月日が流れました。当時高校3年生だった私は、当事者として署名活動やビラ配り、行政活動などを積極的に行いました。
が、しかし高校無償化制度が朝鮮学校に適用されることはありませんでした。大学生の今も活動を続けています。私たち朝鮮大学校の学生たちは、高校無償化適用を求める活動が裁判へと移行した今、だまってはいられないと、毎週金曜日を文科省前活動の日と定め、力強く活動を行ってきました。
1年以上続けてきたこの金曜闘争を糧に、私たちは7月の自由権規約委員会、そして8月の人種差別撤廃委員会に当事者として参加し、日本政府の不当性を訴えてきました。その結果、両委員会で朝鮮学校無償化除外問題、並びに無償化除外に端を発した、地方自治体による補助金支給停止問題に関しても、差別是正勧告が出されました。
みなさん、朝鮮学校の学生たちは当事者として、力強く、そして精いっぱいに闘っています。幼い心に、なぜ自分たちだけ適用されないのか、「なぜだ!」と傷を負いながらも、これ以上後輩たちに悔しい思いをさせたくない、先輩たちの意思を受け継いで、自分たちでこの権利を勝ち取ってみせるという決意で、日々闘っているのです。
私たち、朝鮮学校卒業生と在校生はこれからも日本政府に国連勧告を遵守するよう、朝鮮学校の子どもたちの学習権を保障するよう求めて、闘っていきます。みなさんもともに立ち向かいましょう。がんばりましょう。
(6)沖縄・・・・・外間三枝子(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
今から110年ほど前、1903年に大阪の万国博覧会で人類館という催しものがありましたこれはアイヌ、朝鮮、そして琉球の人たちを見世物にして、展示物にして、実に民族的な差別をしたという所行です。約1世紀前のことです。
あれから1世紀たった今でも、まだ琉球差別は続いています。その典型が、沖縄の辺野古で行われている、米軍の新基地建設のための、あのとんでもない暴力と、日本政府の行為です。
日本の政治家たちは、菅官房長官にしても新しい防衛大臣にしても、辺野古の現地に来られません。彼らはヘリコプターで、辺野古の海を視察して、よしよしと自分を納得させて帰っていくようですけど、今、実際に国連の人権委員会がいくらどんな勧告をしようとも、今までのみなさんのアピールを聞いている限り、やっぱりどうやったらこの日本政府を動かせるのだろうと、それで頭がいっぱいです。
今、辺野古では実際に体を張って、命を懸けて、辺野古に新しい基地を作らせない、そこで闘っている人たちがいます。その人たちのことを思ってください。そして時間のある方は、1日でもいいです、ぜひ辺野古に足を運んでください。日本政府が何をこれからしようとしているか、見てください。日本政府の政策のまずさが沖縄に集中していると思います。
(7)障害者・・・・・加藤真規子(こらーる・たいとう)
私たちは墨田区の向島で、私自身はうつ病の回復者ですけれど、統合失調症の方だとか、知的障害者の方たちといっしょに、ピアサポートセンターをやっています。ぜひ時間のある人は食事をしにきてください。
私が今日訴えたいのは精神障害者が使う精神医療のことです。
東京都の周辺、大阪府の周辺にはたくさんの精神科の病院があります。東京の八王子と青梅は世界一の精神科の密集地です。35万床、34万床の精神病床があると言われています。そしてその中の10万人の方たちは退院ができると言われながら、この10年間、ほとんど退院促進が進みませんでした。
予算の96%強が精神医療に使われていて、在宅福祉に使われているのは残りの4%くらいです。その中で本人さんたちはどういう生活をしているかというと、他の国では長くても1か月から2か月の入院になってきたのに、日本は5年以上、入院させられている人が何十万人といます。これはもう、病気のせいではない。
施設病だとか、社会とのつながりが切れてしまった人たち、こうした被害を作ってきたのは、やはり精神医療や精神障害に関する制度の結果だと思います。この100年間、ほとんど制度は変わりませんでした。隔離収容主義を中心に進められました。せっかく地域で生きていても精神病があるということでつけない仕事がいっぱいあります。一番近い例としたら、統合失調症やてんかんの人に課せられている運転免許の問題があります。厳罰化に踏み切っています。
このような国のあり方の中で、やはりみなさんといっしょに取り組んでいきたいのは、精神障害や知的障害など、障害があっても人として人生を全うしていきたいという思いを支援する取り組みです。これをみなさんとともに作ってきたいと思います。
最後に、東京都では知的障害がある方たち、一番被害を被りやすい方たちのために作られていた性教育が禁止されてしまっています。やはりこういう抑圧に対してはみんなで立ち向かっていきたいと思います。